元燕・青木宣親氏が中学生に打撃指導…少年野球にも見られる“現代野球”の課題 スイングスピードから打球角度・速度まで、バッティングに関するあらゆるデータが可視化される時代、大谷翔平投手(ドジャース)に憧れ…
元燕・青木宣親氏が中学生に打撃指導…少年野球にも見られる“現代野球”の課題
スイングスピードから打球角度・速度まで、バッティングに関するあらゆるデータが可視化される時代、大谷翔平投手(ドジャース)に憧れてパワーを追い求めたくなる少年野球の選手たちも多いだろう。しかし、そんな時代にこそ大切にすべき“技術の基本”がある。11月16日、東京都内で開催されたライブリッツ株式会社主催「デジタル野球教室」に特別コーチとして参加した元ヤクルト・青木宣親さんは、昨今のバッターの手首の使い方の中に「現代野球の問題点」があると指摘する。
この日、硬式野球の中学生に“置きティー”で打撃指導を行った青木さんは、選手たちの課題点について細かく丁寧な言葉で伝えた。長打を打つためにもミートポイントはできるだけ前に置く、インサイドアウトのスイングをするためにも肩甲骨を下げる意識を持つ、などの名球会打者の言葉に野球少年たちも熱心に耳を傾けた。
さらに青木さんが、選手たちを見て「現代野球の問題点」と指摘した部分があった。それが、グリップを握る際に下に来る「引き手」(ボトムハンド、投手側の手)の使い方だ。「緩く握っている子が、今はとても多い」という。
「構えた時に、前の手(引き手)がロックされていない。緩~く握って、後ろの手(トップハンド、捕手側の手)でボールを捕らえようとしている。プロに入って来るのも、今はそういう選手がほとんどです」
なぜ引き手への感覚が薄れているのか。「パワー全盛の時代になって、みんな飛ばしたがっている」。後ろの手でボールを押し込もうとする意識が強すぎる分、引き手の使い方が疎かになっていると説明する。
「前の手はコンタクト、後ろの手はパワー。僕らの頃は前の手の使い方をよく(指導で)言われていたので、コンタクトできるタイプが多かった。今は、コンタクトが下手な選手が増えているのが間違いないです。ミートしたいなら、前の手の使い方を覚えてほしい」
スイングの瞬間の“二度引き”は「プロでも多い」
実際に「前の手をロックした(固定した)感じでスイングしてみて」と教えられた中学生は、見違えるほど打球音が変わった。もう1つ、青木さんが飛ばしたい意識の表れとして注意したのが、スイングの瞬間にもう一度バットを引く“二度引き”。「これもプロでも多いです。1つ動作が増えるために、ポイントが近くなって体が開いてしまう」。対処法として、前足をステップするタイミングを「1・2・3」ではなく「2・3」と途中からにしてみる、などとアドバイスした。
ボールとの間合いや、引き手の使い方、肩の位置、ステップの仕方……。体の使い方の細部を意識するだけでもバッティングの質はすぐに変わることを、青木さんの指導で実感した球児たち。この日の野球教室は少年野球におけるデータ活用がテーマだったが、「数字を見てどう自分に“落とし込む”か、考えながら体を動かす習慣をつけてほしい」と金言を授けた。
青木さん自身は中学軟式野球出身。この日集まった硬式の選手たちを「自分の中学時代より、はるかにレベルが高い」と評したが、そこから今季引退まで日米通算2723安打を積み上げる名打者になれたのは、自身の体への理解と不断の努力があったからこそと感じる言葉の数々だった。今後は“名指導者”としても期待がもてそうだ。(高橋幸司 / Koji Takahashi)