Bリーグと並行しながらHOME&AWAYで戦う、アジア最高峰の大会・EASL(東アジアスーパーリーグ)に参戦中の広島…
Bリーグと並行しながらHOME&AWAYで戦う、アジア最高峰の大会・EASL(東アジアスーパーリーグ)に参戦中の広島ドラゴンフライズ(日本1位)と琉球ゴールデンキングス(日本2位)のEASLにおける現在地を、今シーズンよりEASL公式アナリストを務める井口基史氏がレポートする。
文=井口基史
警戒されるBリーグ“チャンピオン”広島
昨シーズンのEASLは、千葉ジェッツが「undefeated(無敗)」という、強いインパクトを残した優勝だったことや、Bリーグのアジア特別枠で自国選手がプレー、さらにその報道が増えている影響もあり、日本勢がこれまでよりも注目されています。その注目のなか、Bリーグ“チャンピオン“として出場する広島は、EASL全体から警戒されている存在です。初出場のためか、選手の経歴、特徴を教えてくれと、交流のあるアジアのバスケ関係者から、今オフに一番問い合わせがあったのは、実は広島でした。こうして国際大会に出続けることで、「広島ドラゴンフライズ」の名がアジアに伝わっていくのだと、勝手に実感しています。
チャンピオンたちのオフはタフだった
広島のBリーグでのここまでは、開幕前に思い描いていた状況とは、決して違ったはずです。ケガ人を抱えたチームは開幕から4連敗。しかも4連敗中75得点以上を挙げられたのは1試合だけと、優勝直後のシーズンがいかに難しいのかを、チームもブースターも味わっています。いまだに思わず「朝山選手!」と呼んでしまう、新指揮官の朝山正悟ヘッドコーチは、選手たちのオフの短さについて、開幕前のEASLメディアデーにて言及していました。
ワイルドカード上位からの劇的な優勝は、セレモニーはもちろんのこと、スポンサーや関係各所への報告やお礼など、関係者全員にとって特別な時間があったはず。広島カープやサンフレッチェ広島という、先輩プロ球団があるホームタウンだからこそ、優勝の味を地域と味わう、という過程は大事だったと想像できます。
しかし、2019年を最後に新型コロナウィルス感染拡大の影響で開催がなかったFIBA主催「バスケットボール チャンピオンズリーグ アジア(以下BCL ASIA)」(アラブ首長国連邦・ドバイ)に出場するため、その味を存分に味わう時間の余裕はあまりなかったでしょう。広島はこの大会でグループBを2勝1敗で勝ち抜き、Al Riyadi Beirut(レバノン)に89−121で敗れたものの、3位決定戦ではグループフェーズで敗戦したShahrdary Gorgan(イラン)に対し81−76でリベンジを果たし、通算戦績3勝2敗として初の国際大会を終えました。広島はこの大会で計5試合を戦い抜きましたので、どこよりも長く公式戦を戦っていたことになります。
【広島Bリーグ優勝後のスケジュール】
・2024年5月28日 Bリーグファイナル・第3戦(横浜アリーナ)
↓
・2024年6月9日 BCL ASIA初戦(アラブ首長国連邦・ドバイ)
・2024年6月17日 BCL ASIA3位決定戦
このスケジュールは日本だけの問題ではないため、Bリーグにもクラブにもコントロールはできないと容易に想像できますが、Bリーグファイナルを3試合を戦い抜き、優勝の余韻がホームタウンに少ないまま国際大会を戦い、その間にストーブリーグも始まり、他チームより約1カ月オフが短くなる影響への対策が、すでにとられていることを、広島の序盤戦を見て願うばかりです。
EASLが広島復調のビタミンに
Bリーグで開幕連敗スタートの重苦しい雰囲気が、EASL勝利により変化を感じた方はいるでしょう。若い才能が多い広島には、負けて課題を探すより、勝ちながら課題を克服することも必要だったはず。実際に10月16日EASL・香港イースタン戦で今シーズン初勝利すると、その後に10月20日サンロッカーズ渋谷戦と10月23日茨城戦ロボッツに連勝しています。
それでもバイウィークまでリーグ戦は3勝11敗と、新チームの勝ち方をモノにした戦績とは言い切れないだけに、このブレイクが一番欲しかったのは広島だったかもしれません。
【ここまでの広島のEASL戦績】11月14日時点
・10月16日@エフピコアリーナふくやま
〇広島78−68●香港イースタン
・10月30日@サザンスタジアム(香港)
〇広島88−75●香港イースタン
EASLが日本代表定着に役立つ可能性
「FIBAアジアカップ2025予選」Window2には、山崎稜選手と中村拓人選手が選出されました。彼らがつかんだ日本代表での経験と自信をチームに持ち帰ってくれることは、チームメートだけでなく何かきっかけが欲しいコーチングスタッフにとっても、心強いはずです。「バイウィーク明けの広島カムバックの中心になってほしい!」と伝えるためにも、日本代表から帰ってきた2人を大きな拍手でホームに迎え入れましょう!
そして12月4日にEASL3戦目、アウェーで水原KTソニックブーム戦(韓国2位)がすぐに来ます。個人的には広島・琉球ともに韓国勢との対戦になるこの3戦目が、EASLファイナル4進出への大きなポイントになると思っています。日本勢との戦いになると特別な力が出るのが韓国勢。つい先日まで山崎稜と中村拓人が日本代表に入っていたことは彼らも当然分かっているはずで、激しいマークが予想されます。そのスカウティングがされたうえでも、両選手がファイヤーするようなことがあれば、トム・ホーバス男子日本代表HCに「もっと2人を使ってくれ」というアピールにもなるでしょう。また、厳しいマークに苦しんだとしても、他にステップアップしてくるチームメートが出てくれば、これまたEASLが広島にとってのビタミンになるでしょう。
賞金金額は無視できない!
広島ブースターのみなさんは優勝したばかりですので、お金の心配をされている方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、念のためにもう一度EASLの賞金を記しておきますので、気になる方だけご覧ください…気になる方だけですよ…。
【EASL 2024−25シーズンの賞金配分】
1位 100万ドル(約1億5400万円)
2位 50万ドル(約7700万円)
3位 25万ドル(約3850万円)
(為替レート1125時点参照)
プロ野球・Jリーグ・Bリーグの3つホームタウン広島
広島ドラゴンフライズの練習拠点・ドラフラベースからの帰り道。バスケメディアの皆さんと「きっとサンフレッチェ広島クラスのチームは、AFCチャンピオンズリーグで優勝したことがあるだろうから、広島はアジアでの戦いに詳しいホームタウンのはず!」なんて話していました。調べてみると、さすがサンフレッチェ! AFCチャンピオンズリーグエリートに6度も出場していましたが、どうやらまだ優勝はない模様です(井口調べ)。同じホームタウンのチームでアジア制覇の良い意味での競争ができる街なんて、羨ましすぎるよ。広島のみなさんBリーグと同じ熱量でEASLも後押ししましょう!
【バイウィーク明けのEASL日本勢の試合】
●グループA
12月4日(水)19時10分〜(日本時間)
広島ドラゴンフライズ vs 水原KTソニックブーム(@水原KTソニックブームアリーナ)
●グループB
12月4日(水)19時40分〜
琉球ゴールデンキングス vs 釜山KCCイージス(@沖縄アリーナ)
※U-NEXTにて全試合を独占ライブ配信
●EASL 2024-25シーズン ゲームスケジュール→ https://www.easl.basketball/schedule