『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(18)クインシーズ刈谷 佐藤彩乃(連載17:広島サンダーズの川口柊人は音駒のクロの教えも参考に「積極的に」プレーする>>)(c)古舘春一/集英社 その情景を、今も彼女は覚えている。 小学3年の時、バ…

『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(18)

クインシーズ刈谷 佐藤彩乃

(連載17:広島サンダーズの川口柊人は音駒のクロの教えも参考に「積極的に」プレーする>>)




(c)古舘春一/集英社

 その情景を、今も彼女は覚えている。

 小学3年の時、バレーボールの体験会に行った。そこで、楽しさに痺れた。小学1年の頃から、母親と一緒にテレビでバレーを観て、"やりたい"という気持ちが募っていたこともあっただろう。

「初めてバレーをやった時ですか? ボールをアンダー、オーバーでパスした、といった記憶はないんですよ」

 佐藤彩乃はそう言って愛らしく笑い、空気を華やかにした。

「みんなと一緒になって、同じことをするのが楽しかったんです! 体を動かすのは好きで、それは鬼ごっこをするのが好きだった延長線かもしれませんが。バレーは"みんなでボールを落とさないようにする"というのが楽しくてハマりました。"チーム"という意識があって面白かったというか」

 共同作業に楽しさを感じた。バレーに没頭する日々の始まりだった。2歳下の妹と、母の送迎で練習場に通ったという。

 ポジションがセッターに固まったのは、中学2年の時だ。

「他の子よりも、オーバー(ハンドパス)は上手だったかもしれません。それに身長が大きくなかったし、アタッカーよりもいいかなって」

 そう語る佐藤は、セッターとしてひとつひとつのプレーの感覚をつかみ、高校、大学でも少しずつ精度を上げてきた。しかし、「まだ自分のスタイルを確立しきれていない」と謙虚に言う。彼女が見つけるべき道筋があるのだろう。

 昨シーズンは、所属していたKUROBEアクアフェアリーズで、入団2年目ながらキャプテンに就任した。周りをまとめる。それができる資質は生来的なものなのだろう。

 あるいは、「姉」であることも関係しているかもしれない。妹の佐藤淑乃はNECレッドロケッツ川崎に所属しており、日本代表のアウトサイドヒッターだ。

「妹とはけっこう話をします。話を聞くことが多いですね。そこは"お姉ちゃん"をしています」

 佐藤はそう言って笑い、膝の上に手を乗せた。

「『負けたくない』とかはなく、妹には頑張ってほしい。(KUROBEアクアフェアリーズで)キャプテンをやった時も、自分よりも年齢が下の選手たちのことを、『子供だな』と見ているわけではなくて、『可愛がりたい』と思うタイプです。

 そういう(周りと関わる)ところが、『セッター気質の人柄』と言われることも多くて、素直にうれしいです。自分に合ったポジションなんだと思うし、自分のよさを生かせるんじゃないか、と思うので」

 彼女は姉で、キャプテンもやり、セッター。すべての資質が少しずつ重なっている。

「セッターとしては、アタッカーがいい顔をして(スパイクを)打ってほしいですね。そういうチームのセッターでいたい。加えて、相手のブロッカーが困った顔をしていると楽しくなります(笑)。自分がいいトスを上げられたら、アタッカーが決めてくれることが多いので、決めて喜んでいる姿をたくさん見たいです」

 クインシーズ刈谷に移籍して1年目、佐藤は資質を輝かせる。

【佐藤が語る『ハイキュー!!』の魅力】

――『ハイキュー!!』、作品の魅力とは?

「バレーボールをするモチベーションにつながりますね。バレーの基本的なところから、戦術までしっかりと描かれているので」

――共感、学んだことは?

「実際にプレーしている側からも、"そうだよな"って共感できることが多いです!」

――印象に残った名言は?

「日向(翔陽)が、県内の1年生選抜合宿に押しかけてボール拾いをやるんですけど、百沢(雄大)という大きい子が2対2でうまくいかない時、日向が『楽してこうぜ』って声をかけるシーンが好きです。ここで言う『楽する』は、サボることではなくて、自分がよりいいプレーをするため、合理的にどうしたらいいかを踏まえた『楽』。理論的に体を動かす、ってところまで描かれていて面白いです」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位は北(信介)さん。『ちゃんとやんねん』という感じが好きです! 自分はあそこまでちゃんとできないですけど、そういう選手ってチームのみんなから尊敬されるだろうと思うので。

 2位は日向で、3位は青葉城西の及川(徹)さん。及川さんは、天才セッターとして注目されているし、自分自身もそういう振る舞いをしていると思うんですけど、過去はそうじゃなくて。いろんな思いがあって"今の及川さんがいる"ってことも踏まえて好きです」

――ベストゲームは?

「稲荷崎vs烏野です。試合の最後に、日向が"味方に呼吸させるファーストタッチ"で、『楽してこうぜ』とパスを出すってシーンはやばいです。あのシーンがあるだけでベストですね(笑)。日向はいつも上を目指してやっていて、いろんなことでマイナスの要因ものしかかってくるんですが、プラスに変えるためにやり続ける。そういう人は、"その一本"を勝利につなげられるんだなって思いました」

(連載19:クインシーズ刈谷の髙佐風梨が、影山飛雄の言葉に思う「セッターにしかわからない」感覚>>)

【プロフィール】

佐藤彩乃(さとう・あやの)

所属:クインシーズ刈谷

1999年11月4日生まれ、千葉県出身。165cm・セッター。 NECレッドロケッツ川崎の佐藤淑乃は妹。敬愛学園高校でインターハイに出場。青山学院大学では、東日本インカレ優勝、全日本インカレ準優勝などを経験。2022年にKUROBEアクアフェアリーズ富山に入団し、翌年はキャプテンを務めた。2024年にクインシーズ刈谷に入団した。