東京ヴェルディの城福浩監督が、30日に味の素スタジアムで行われる明治安田J1リーグ第37節の川崎フロンターレ戦に向けた会見を実施した。 東京Vは前節、ヴィッセル神戸とのホームゲームを1-1のドローで終えた。昨シーズンの王者相手のシーズンダブ…
東京ヴェルディの城福浩監督が、30日に味の素スタジアムで行われる明治安田J1リーグ第37節の川崎フロンターレ戦に向けた会見を実施した。
東京Vは前節、ヴィッセル神戸とのホームゲームを1-1のドローで終えた。昨シーズンの王者相手のシーズンダブル達成はならずも、熾烈な優勝争いの主役を演じる首位チーム相手に堂々たるパフォーマンスをみせ、小さくない手応えを得た。
インターナショナルマッチウィークの中断に加え、先週末は天皇杯決勝の開催に伴い、その前節から約20日と、中17日での開催となった神戸戦に続き長い間隔が空いたなか、今節は13位の川崎Fとのホーム最終戦に臨む。
その中断期間ではサブ組が松本山雅FCとのトレーニングマッチを戦った一方、主力組はトレーニングマッチを行わず、より強度の高いトレーニングとオフを繰り返す形でのコンディション調整となった。
そういった影響もあり、今週行われた紅白戦では残り2試合でのリーグ戦出場を貪欲に狙うサブ組が主力組を圧倒するパフォーマンスを見せたが、それはチームにとっても常日頃からチーム内でのハイレベルの競争を促す指揮官にとっても歓迎すべきものになったという。
「自分たちはちょっとゲームから離れていたので、昨日も紅白戦は本当に久しぶりにやったというか、リーグ戦に出ているメンバーは本当に久しぶりにゲームサイズでプレーをしたので、いろんなものがちょっと見えたというか、しっかりと自分たちが戦える準備という意味ではサブが相当優勢だったので、いい紅白戦の振り返りができました」
16年ぶりのJ1での戦いながら、当初の目標だった残留を早々に成し遂げるなど、終盤戦においてチームとして安定したパフォーマンスを見せた上、負傷による離脱者が極端に少ないこともあり、終盤戦では18人のベンチ入りメンバーも固まりつつある。
通常であれば、控え組のモチベーションやコンディションの維持は難しいが、「日本一のトレーニング」を標榜し、主力組も「このトレーニングをやっていれば成長できる」と口々に語る“エクストラ”と呼ばれる基礎技術の向上や、個々の課題克服を目的としたトレーニングに励む選手たちはブレることなく自身の成長だけに矢印を向け、紅白戦でのパフォーマンスを含めチームに良い刺激を与えている。
その点について指揮官は「今年のチームのストロングのひとつ」と語り、一人のサッカー人としてリスペクトする。
「サッカーというのは、11人しか選手をピッチに送り出せなくて、ベンチには18人しか入れられない。そこに立てない選手が質も量も追い求めて、一生懸命やればやるほど、また入れなかったときの悔しさというのは、僕らが想像できないものがあると思います。もちろんチームには勝ってほしいと思っているし、自分の出番が回ってきてほしいと思っていると思いますけど、いろんなものと戦いながら歯を食いしばってやる。それこそが成長に繋がるというふうに自分で思わないとあれだけできないなと思います」
「もちろんコーチ陣がそこはサポートしながらオーガナイズしていますけど、取り組む姿勢に関しては、このチームのひとつのストロング。彼らを見ていて、先発で試合に出ている選手たちが力を抜けるはずがない。それぐらいの刺激あるいは精神的な緊張感というのをチームにもたらしてくれている存在だと思います」
「できれば、そういう選手たちをピッチに送り込みたいと思いますし、そこはフェアに見てあげたいと思いますけども、少なくともそのチャンスがなかなか巡ってこなくてもやり続けている選手がいるということ。それがあと何節とかに関係なくやり続けられるチームの雰囲気を保てていることというのは、本当に今年のチームのストロングのひとつかなと思います」
そういった日頃からの姿勢、城福監督の就任以降クラブ伝統の巧さ、遊び心のあるプレーに加え、ハードワークや闘う姿勢、泥臭さによって成功を収めているトップチームのスタイルは、下部組織にも影響を及ぼしている印象だ。
とりわけ、先日に行われた『2024Jユースカップ 第30回Jリーグユース選手権大会』で、28年ぶり3度目の優勝を果たした東京ヴェルディユースがサンフレッチェ広島F.Cユース相手の決勝で見せたプレーは、現トップチームの戦いぶりを彷彿とさせるものだった。
城福監督は「自分たちが影響を及ぼしているというような上から目線で言うような立場ではない」としながらも、常にアカデミーの指導者・スタッフに惜しみなくトップチームのノウハウをオープンに公開しているなかで、そういった影響がアカデミー全体にポジティブなものをもたらしているのであれば、一人の指導者としてうれしいことだと、あくまで控えめに語ってくれた。
「自分たちは全部をオープンにしているので、アカデミーのスタッフは練習をいつ見に来てもらってもいいし、ミーティングもいつ出てもらってもいいというふうにしているので、来られるときにはそれこそユースのスタッフやジュニアユースのスタッフもミーティングに参加しています」
「特にフィードバックのときというのは、勝とうが負けようが我々が何を大事にしているかというのはずっと言い続けてきていると。それを聞いてくれているスタッフがいて、(アカデミーの)選手にうまく伝えてくれている部分がひょっとしたらあるのかなと思います」
「我々の戦い方を見て、J2も含めてJ2から上がってきたときの最初の苦戦の仕方とか、そこからアジャストしていくプロセスを見て、アカデミーの選手たちも各々に感じるものがあってくれたらうれしいなと思いますし、彼らが自分で考えて、あるいはスタッフといろんな相談をしながら、個やチームの成長に取り組んでいってくれていると、その部分で我々が刺激のひとつになってくれているということであれば、すごくうれしいことだなと思います」
そういったアカデミーの成功にも刺激を受けつつ、残り2試合では他力本願は承知のことながら「自分たちに矢印を向けてやり続ければ、何かが起こる可能性もあるというのは、みんなわかっている」と、4位フィニッシュで出場権を得られるAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)も視野に入れながら、勝ち点6獲得を目指す。
順位は自分たちより下位ながらも、クラブ規模、スカッドにおいて格上と言える川崎Fとの対戦に向けては、「個のスキルのレベルは本当に高い」と警戒。
「日本人も外国籍の選手も個のスキルと、特徴というのが明確ななかで、特徴が違うということは出る選手によって、見せる表情が違うというか、サッカーの多く出るシーンというのがちょっと変わってくる。それに合わせられる、そういう選手のストロングを周りが出してあげられるスキルがあるので、ここは本当に注意しないと、フロンターレはどういうふうにポジションを取って、こういうふうにボールを回してくるというふうな決め付けができない。それがフロンターレの強みかなと思います」
会見実施時点でホームゴール裏が完売するなど、ファン・サポーターの大きな期待のなかで戦うホーム最終戦では、ある意味で今季の集大成を披露する戦いとなるが、指揮官は「こういうふうなサッカーができたから、どうぞ見てくださいなんて心境ではない」と、前述の紅白戦や控え組に改めて触れながら、見栄えのいいプレーではなく、あくまで泥臭いプレーで愚直に結果を求めたいと語った。
「紅白戦で言えば、試合の先発で出る可能性の高い選手たちよりも、そうではない色のビブスの方が断然いい。これは2つの見方があって、何かを勝ち取ったとか、もう自分はレギュラーだろうとか、J1で通用するようになったとか。そういう思いでピッチに立てば、それはそういう思いではない選手たちにコテンパンにやられる」
「だから我々はそれぐらいギリギリのなかで試合をしてきているということ。格段に個のレベルが上がって、チーム力が格段に上がったかというと、それはいつも言うように牛歩のごとく前には進んでいますけど、何かをきっかけに何かが緩むと、それはもう途端に落ちる。それぐらいギリギリのところで自分たちがやってきているということを思い出させてくれるのが、サブ組なんですよ。個人的にそれはこのチームの財産だと思います」
「実際に試合が始まって、『そうだったな』と痛い目にあって思い出すのではなくて、その準備のプロセスのなかで我々の練習場のなかで思い出せる。本来それも含めてサポーターに見せたいぐらいですけど、実際にはそこから選ばれた11人や18人しか、我々の意思を見せることはできないわけで、選手たちがそういう思いも汲んで、魂の入ったゲームをしてもらうというところだと思います」
「ホーム最終戦が素晴らしい空気感で終われば、これはまた来年にも繋がることだと思うので、勝って終わるのが一番いい終わり方なので、とにかく勝ち点3を目指したいです」