ラスベガスの華やかさからわずか4日、F1サーカスは地球の裏側にあるカタールのドーハで次の週末を迎えている。 アメリカ西海岸から16時間近い長距離フライトでの移動に加え、11時間という時差の大きさにも適応しなければならない。それに加えて、ラ…
ラスベガスの華やかさからわずか4日、F1サーカスは地球の裏側にあるカタールのドーハで次の週末を迎えている。
アメリカ西海岸から16時間近い長距離フライトでの移動に加え、11時間という時差の大きさにも適応しなければならない。それに加えて、ラスベガスでもカタールでも、現地の時間とは大きくズレた時間でのナイトレースだ。
角田裕毅がレッドブルに昇格する可能性は?
photo by BOOZY
レッドブルパワートレインズ(RBPT)にパワーユニットを供給するホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーも、そのスケジュールの厳しさを語る。
「ラスベガスGPの仕事が終わったのが日曜日の朝方で、日曜夕方の飛行機に乗ってカタールに着いたのは月曜の夜中でした。メカニックは火曜日からサーキットに来てメンテナンス作業をして、エンジニアはホテルでデータの整理をして、水曜からレース週末が始まるという......」
チーム側の首脳陣や上級スタッフたちは一度ヨーロッパに戻り、1日か2日か自宅で過ごしてカタールへ向かうというケースも少なくない。しかしホンダのスタッフたちは、直接移動しながらラスト3連戦と最終戦後のテストまでをカバーする。
「移動距離が長いのと、もともとラスベガスで働いているのが夜中のおかしい時間帯で、そこからさらに大きな時差のあるところに移動してきているので、みんなふだんより時差ボケがキツそうです。
私も寝られる日と寝られない日があって調整に苦労していますし、RBPT側のスタッフで体調を崩し気味だという人もいますし、シーズン終盤のこの厳しい日程でそういう人がチラホラ出てきていますね」
角田裕毅(RB)はラスベガスGPを終えて1日だけミラノの新居に戻り、またすぐにドーハへとやってきた。
時差ボケ対策はやはり、もうあきらめていると笑う。
「時差ボケもクソもないですね、メキシコあたりからいろんなところに飛びすぎていて、時差ボケにアジャストする時間もないんで。レースする時間もその国と関係ない時間で走ったりしていますし、何もわからないですね(笑)」
【アップデート効果を確かめる絶好の機会】
昨年は高温多湿で、ドライバーたちが意識をもうろうとさせるくらいに疲労困憊したカタールGPだった。だが、今年は開催時期が10月8日決勝から12月1日決勝へと約2カ月シフトしたことで、気温は20度前後と極端なコンディションではなくなった。
それでも、夜の砂漠は湿度が80%にも上り、さらには木曜から強い風が吹きつけていた。
「寒くはないですが、風が強いですね。去年と比べて暑くないのも、今のところは、という感じです。去年も日曜日になって急に温度と湿度が高くなったので、あまり油断はしないようにしています。さすがに去年ほどタフなレースにはならないと思いますし、そうならないように願っていますけどね」
カタールは200km/hを超える高速コーナーが連続し、RBにとっては昨年も大きく苦戦を強いられたサーキットのひとつだった。
しかし、苦手意識の強かったラスベガスで予選7位・決勝9位の好走を見せられたことで、チームの意識も変わってきていると角田は明かす。
「過去のレースを見ても相性のいいサーキットではないと思うんですけど、今年はラスベガスでかなり厳しいレースになると思っていたにもかかわらず入賞できました。よくないイメージを払拭できたレースだったので、去年とはマシン特性も違うし、モチベーション高く臨むことができます。ラスベガスでああいうレースができたということが自信になっています」
ラスベガスではレッドブルRB20のリアサスペンションを投入し、それに合わせたサイドポッド後方の最適化も進めた。
ストレート主体で高速コーナーがなく、あまりの寒さにタイヤを機能させられるかが主眼となったラスベガスではアップデート効果を確かめることはできなかった。だが、このカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットでのレースは絶好の機会になりそうだ。
0.1秒も変わるようなものではないと言うものの、今の超僅差の中団グループにおいては、0.01秒でもポジションアップにつながる貴重なゲインであることもまた事実だ。
コンストラクターズランキング6位を争うハースやアルピーヌのほうが純粋なマシンパフォーマンスで上であることは間違いなく、カタールのように空力性能が問われるサーキットではより一層、その傾向が顕著になるはずだ。
【ハースやアルピーヌに勝つためには...】
それでも、角田はあきらめてはいない。
ラスベガスの週末がそうであったように、あらゆるディテールまでセットアップを突き詰め、ドライバーの腕で差を生み出せる予選では、自分が1000分の1秒まで削り取り、ひとつでも前のグリッドを獲得する。そうすることで、レースでマシンの実力以上の結果を掴み獲るべく、戦うチャンスを生み出す。
角田はチームを牽引するエースドライバーとして、その重責を担っている。
「ハースはどのサーキットでも常にいいパフォーマンスを発揮していますし、アルピーヌもオースティン(第19戦アメリカGP)以降は安定して速くなってきている。彼らを逆転するのはかなり厳しいとわかっていますが、自分たちのパフォーマンスを最大限に引き出し、少なくとも予選では彼らの前に行って、そこからどんなレースができるかだと思っています」
過去2戦の好走で、パドックでは「角田裕毅をレッドブルに乗せるべきだ。なぜ乗せないんだ」という声も日増しに強くなりつつある。
レッドブルレーシング、そしてレッドブル本社内でどんな政治力学が働いていようと、レースは速さがすべて。強さが正義だ。政治力を上回る速さと強さを、角田裕毅が今週も見せてくれることを期待したい。