J1昇格プレーオフ展望(2) いよいよJ1昇格へ最後の1枠をめぐる争いがスタートする。 今季のJ1昇格プレーオフに出場するのは、J2で3位のV・ファーレン長崎、4位のモンテディオ山形、5位のファジアーノ岡山、6位のベガルタ仙台の4クラブ。準…

J1昇格プレーオフ展望(2)

 いよいよJ1昇格へ最後の1枠をめぐる争いがスタートする。

 今季のJ1昇格プレーオフに出場するのは、J2で3位のV・ファーレン長崎、4位のモンテディオ山形、5位のファジアーノ岡山、6位のベガルタ仙台の4クラブ。準決勝では長崎と仙台、山形と岡山が対戦し、それぞれの勝者が決勝へとコマを進め、そこで勝ったクラブがJ1昇格となる。

 対戦は、いずれも1試合のみの一発勝負だ。試合はリーグ戦上位のホームスタジアムで行なわれ、90分を戦って引き分けの場合は、上位クラブの勝ち上がりとなる。

 理屈のうえでは、すべての試合を必ずホームで戦えるばかりか、引き分けでも勝ち上がれる長崎が最も有利であり、逆にすべての試合をアウェーで勝利しなければJ1昇格は果たせない仙台が最も不利な状況にあるわけだが、過去の歴史を振り返ると、結果はそれほど単純ではないから面白い。

 2012年から行なわれているJ1昇格プレーオフで、3位クラブがJ1昇格を手にしたのは3回のみ。その一方で、6位クラブのそれも2回ある(2018~2022年はJ1参入プレーオフの名称で行なわれ、J2の3~6位によるトーナメントを勝ち上がったクラブが、J1の16位クラブと対戦。2020、2021年は新型コロナ感染拡大にともなう特別措置により、プレーオフ自体が行なわれなかった)。

 下剋上は当たり前――。それがJ1昇格プレーオフなのである。

 では今季、そんな混迷極まるトーナメントを勝ち上がるのは、どのクラブだろうか。

 筆頭候補となるのは、やはり最上位で進出してきた長崎だろう。

 J1自動昇格まであと一歩(2位の横浜FCと勝ち点1差)に迫った長崎が、今季積み重ねた勝ち点は75。混戦をようやく潜り抜けてきた他の3クラブ(山形66、岡山65、仙台64)と比べて、頭ひとつ抜けた存在と言える。前線にはマテウス・ジェズス、マルコス・ギリェルメら、個人能力が高い助っ人を複数擁しており、"わかりやすい強さ"を備えているチームだ。

 あえて不安点を挙げるとすれば、プレーオフに進出してきたクラブとの直接対決では、岡山と仙台には1敗1分け、山形には1勝1敗と、あまり分がよくないこと。だが、リーグ戦最後は5連勝で締めくくっており、自動昇格こそ逃したものの、むしろ勢いに乗っていると見ていいだろう。

 チームを率いる下平隆宏監督も「新スタジアムでの最終節まで自動昇格の望みをつなげられたことをうれしく思う」と語っており、ネガティブなムードは感じられない。むしろ高いモチーベーションを維持したまま、プレーオフに臨んできそうだ。


モンテディオ山形の躍進の原動力となっている土居聖真

 photo by Masashi Hara/Getty Images

 短期決戦で重要となる勢いという点で言えば、長崎をも凌駕するのは山形である。

 シーズン後半、怒涛の勢いで勝ち点を量産した山形は、リーグ戦を9連勝でフィニッシュ。とりわけ夏の移籍で土居聖真(鹿島アントラーズ→)が加入して以降は、実に12勝1敗1分けと、驚異的な戦績を残している。

 加えてJ1昇格プレーオフ(J1参入プレーオフも含む)には過去4度出場しており、クラブとしてしびれる舞台の経験も豊富。しかも4度のプレーオフ出場で初戦敗退は一度しかなく、2014年には6位からのJ1昇格を達成と、勝負強さが際立っている。

 ただし、過去4度はいずれも5位以下からの進出であり、ホームで戦った経験がない。追うものの強みを発揮したこれまでと異なるプレッシャーも生まれるなかで、どれだけ本来の力を発揮できるか。そのあたりに勝負のカギがありそうだ。

 その山形と準決勝で対戦する岡山にとっては、ここが絶好のリベンジの舞台となる。

 過去に2度、J1昇格プレーオフに進出した経験のある岡山だが、2度目となった2022年は3位での進出とあって、当時はJ1初昇格の期待が大いに高まっていた。

 ところが、結果はホームでの初戦敗退。それも0-3という完敗だったのだが、そのときの相手が山形だったのである。

 2年前のプレーオフでも岡山を率いていた木山隆之監督にしてみれば、この対戦は望むところだろう。舞台を山形に変えて行なわれる2年越しの再戦は、過去の因縁も含めて楽しみな試合となる。

 そして最後に、史上稀に見る混戦を制して6位を死守した仙台だが、過去の例を見ると、追うものの強みを最大限に発揮できるとあって、一番不気味な存在なのかもしれない。

 今回出場の4クラブのなかでは唯一のプレーオフ初出場だが、長崎とは今季リーグ戦での直接対決では1勝1分け。アウェーでは勝ち点3を手にしており、相性はいい。

 また、チームを率いる森山佳郎監督も、Jクラブのトップチームを指揮するのが今季初めてとはいえ、過去にサンフレッチェ広島ユースやU-17日本代表監督として国内外で数々の実績を残している。しびれるような一発勝負の場数では、むしろ他の指揮官を上回ると言ってもいいだろう。

 はたして、J1行きの最後のキップを手にするのはどのクラブか。

 熾烈な椅子取りゲームの準決勝は12月1日、決勝は12月7日に行なわれる。