武内夏暉が記録した“圧倒的数値”の数々 西武の武内夏暉投手が26日、2024年のパ・リーグ新人王に選出された。武内はプロ1年目から安定感抜群の投球を披露し、見事にシーズン2桁勝利を達成。即戦力左腕として申し分のない結果を残したことが認められ…
武内夏暉が記録した“圧倒的数値”の数々
西武の武内夏暉投手が26日、2024年のパ・リーグ新人王に選出された。武内はプロ1年目から安定感抜群の投球を披露し、見事にシーズン2桁勝利を達成。即戦力左腕として申し分のない結果を残したことが認められ、栄えある新人王のタイトルを手にした。
今回は、武内が2024年に残した投手成績に加えて、セイバーメトリクスに基づく各種の指標や、月別の成績について確認。新人離れした投球を見せた若き左腕の特徴と強み、今後のさらなる伸びしろといった要素について、実際のデータをもとに考えていきたい。
武内は国学院大時代から大型左腕として注目を浴びており、2023年のドラフトにおける目玉の1人と考えられていた。ドラフト当日には西武、ソフトバンク、ヤクルトの3球団が1位指名で競合し、交渉権を獲得した西武に入団する運びとなった。
武内はオープン戦で2試合に登板して防御率2.00と、即戦力としての期待に違わぬ好投を見せ、開幕ローテーションの座を勝ち取る。そして、プロ初登板となった4月3日の試合では7回を無失点に抑える快投を見せ、見事にプロ初登板初勝利を記録した。
その後も高い前評判に違わぬ好投を続け、左のエースとして堂々たるピッチングを展開。5月には4試合に登板して3勝負けなし、防御率0.63という圧倒的な投球を披露し、新人としては2015年の高橋光成投手以来となる、月間MVPの座に輝く快挙を達成した。
疲労による抹消や新型コロナウイルス感染による離脱も経験したものの、それ以外の期間はほぼ年間を通して先発ローテーションの座を維持。シーズン最終登板となった9月30日の試合で規定投球回に到達し、シーズン2桁勝利に到達。防御率2.17と新人ながら素晴らしい数字を残し、最下位に沈んだチームにおける一筋の希望の光となった。
武内が残した成績の中でもとりわけ目を引く部分の1つが、与四球率1.36という非常に優れた数字だ。プロの好打者たちに対して臆することなくゾーン内で勝負を挑み、そして打ち取ってきたことを表すこの数値は、武内投手が抜群の制球力を持つことに加えて、プロ入りの時点ですでに一線級の投球技術を備えていたことの証でもある。
パ・新人王はWHIP「0.98」
その一方で、奪三振率に関しては6.63と、やや控えめな水準にとどまっていた。この数字からは、多くの三振を奪って相手打線を力でねじ伏せるタイプではなく、持ち前の制球力を活かして丁寧に打たせて取る投球を展開していたことがうかがえる。
次に、奪三振を与四球で割って求める、制球力や投手としての能力を示す「K/BB」に目を向けたい。K/BBは一般的に3.50を上回れば優秀とされているが、武内投手のK/BBはリーグ2位の4.86という非常に優れた水準に達している。奪三振率が高い投手の方が有利な指標においてもハイレベルな値を記録している点も、制球力の卓越ぶりを示す要素だ。
また、本塁打を除くインプレーになった打球が安打になった割合を示す「被BABIP」に関しても、基準値の.300を大きく下回る.265という数字を記録。被BABIPは一般的に運に左右される部分が大きいとされているものの、被打率も.226と優秀な数字を記録しており、被安打を許す機会が少なかったという点は注目すべきポイントといえよう。
与四球と被安打がともに少ないという特徴もあって、1イニングごとに許した走者数の平均を示す「WHIP」も0.98と非常に優秀だ。1イニングで出した走者を1人未満に抑えていたことを示すこの数字は、武内の投球内容が極めて優れていたことを示すものでもある。
さらに、先発した試合でクオリティスタートを達成した割合を示す「クオリティスタート率(QS率)」に関しても、76.2%と優秀な水準に達していた。4試合に先発した場合、そのうち3試合以上の割合でゲームを作ってみせた武内投手の安定感は、プロ1年目から2桁勝利を挙げることを可能にした大きな要因にもなっている。
7回を無失点に抑えた4月3日のプロ初登板を皮切りに、4月は3試合の登板で月間防御率2.14と見事な投球を披露。さらに、5月には4試合で3勝、月間防御率0.63と圧倒的な数字を記録し、シーズン序盤からその実力がプロの舞台でも通用することを存分に証明した。
プロ2年目も、安定した投球に注目が集まる
6月は新型コロナウイルスに感染した影響で1試合の登板にとどまったものの、7月には4試合で28.2イニングを投じ、与四球はわずかに2つと圧倒的な制球力を発揮。防御率2.51、K/BB11.50と抜群の数字を残し、体調不良の影響を感じさせない投球を続けていた。
しかし、8月には2試合連続で6失点を喫するなど疲労の色が見え、月間防御率は年間ワーストとなる4.88と苦戦を強いられた。それでも、シーズン最終盤の9月に入ってからは月間防御率1.53と調子を取り戻し、9月16日の試合ではプロ初完封を記録。5試合で3勝とハイペースで白星を積み上げ、9月30日に8回無失点の快投を披露してシーズンを締めくくった。
プロ1年目ということもあってか気候の厳しい夏場に調子を落としたものの、それ以外の5か月はいずれも月間防御率2点台以下と、まさに安定感抜群の数字を残した。今季の経験を活かし、来季以降は夏場を調子を崩すことなく乗り切ることができるようになれば、さらなる好成績が期待できる可能性も大いにありそうだ。
抜群の制球力と被打率の低さによって、そもそも走者を背負う頻度自体が少ないという点が、武内投手の大きな特徴となっている。試合を作る能力の高さは優れたQS率にも示されており、所属チームが下位に低迷する中でも、援護点を高い割合で勝ち星に結び付けて2桁勝利を達成したという事実が、投手としての能力の高さを証明している。
夏場に調子を落とした2024年の反省を踏まえて、これから年間を通してコンディションを維持する方法を確立できれば、今季以上の好成績も期待できるはずだ。現時点で先発として非常に高い完成度を誇りながら、さらなる伸びしろも備えている大器。長身左腕が繰り出す切れ味抜群のボールに、今後もぜひ注目してみてほしいところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)