2024-25シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)には12人の日本人選手に出場の可能性があると言われていた。しかし、伊藤洋輝(バイエルン)、冨安健洋(アーセナル)、川村拓磨(ザルツブルク)の3人はケガのためいまのところ出番なし。上田綺世…
2024-25シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)には12人の日本人選手に出場の可能性があると言われていた。しかし、伊藤洋輝(バイエルン)、冨安健洋(アーセナル)、川村拓磨(ザルツブルク)の3人はケガのためいまのところ出番なし。上田綺世(フェイエノールト)もケガで第4節からベンチ外となった。昨季、特進をはたし脚光を浴びた遠藤航(リバプール)は今季これまで、アディショナルタイムに1試合出場したのみだ。
コンスタントに出場している選手はセルティックの3人(旗手怜央、前田大然、古橋亨梧)とチェイス・アンリ(シュツットガルト)、荻原拓也(ディナモ・ザグレブ)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)の7人で、森保ジャパンのスタメンクラスでは南野と守田のふたりに限られる。
このふたりが所属する両クラブはCLのグループフェーズで好調な滑り出しを見せており、第4節を終えた段階で全36チーム中、2位(スポルティング)と3位(モナコ)につける。
11月26日(現地時間)、スポルティングが第5節の戦いに臨んだ。相手のアーセナルは、ブックメーカー各社の優勝チーム予想で、マンチェスター・シティ、レアル・マドリード、バルセロナ、リバプールに次いで5番人気につけるものの、4節を終えて14位とやや出遅れている。プレミアリーグでも首位リバプールと9ポイント差の4位と、こちらも出遅れ気味だ。ホームのスポルティングにチャンスはあるのか。
アーセナル戦に先発、後半33分までプレーした守田英正(スポルティング) Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
スポルティングは、前週まで監督を務めていたルベン・アモリムがマンチェスター・ユナイテッドの監督に"栄転"。新監督に元ポルトガル代表のジョアン・ペレイラを迎えていた。注目された布陣は前監督と同様の3-4-3。守田はその中央で、デンマーク代表のモルテン・ヒュルマンドと並んで構えた。
守田はW杯アジア3次予選を戦う森保ジャパンにおいて、先のインドネシア戦でもチームを大勝に導く2点目のゴールを挙げるなど、最も存在感を発揮するチームの柱だ。
【スポルティングの5バックが崩壊】
その余勢を駆り、どれほどこのアーセナル戦で活躍できるか。CLにおける強豪との対戦は自己アピールの場でもある。名門クラブに移籍した前監督に続きたいと願うのは守田に限った話ではない。スポルティングの善戦健闘が期待された。
ところが待ち受けていたのはシビアな現実だった。
開始7分。アーセナルは右サイドに人数をかけてパスを回す。マルティン・ウーデゴール(ノルウェー代表)、トーマス・パーティ(ガーナ代表)、デクラン・ライス(イングランド代表)のパス交換から、大外で開いて構える右SBユリエン・ティンバー(オランダ代表)にパスが出ると、対峙するスポルティングの左サイドは崩壊状態に陥った。ティンバーがゴール前に差し込むように折り返すと、ゴール前には左ウイングのガブリエル・マルティネッリ(ブラジル代表)が逆サイドから詰めていた。先制ゴールが決まった瞬間である。
5バックで守りを固めるチーム(スポルティング)をどう崩すかという設問に対する、教科書どおりの解答だった。狙い目は両サイド。相手のウイングバックの裏を外側から、薄紙を剥ぐように丹念に突く――。
この場合、スポルティングの左ウイングバック、マクシミリアーノ・アラウホ(ウルグアイ代表)の裏になるが、アーセナルはここに狙いをつけ、その周辺に5対4の数的優位の関係を築きながら深い位置を突いた。ティンバーがマイナス気味に折り返せば、中央は2対2に。3人のCBのうち左のゴンサロ・イナシオ(ポルトガル代表)は、左サイドにおびき出されてしまい、逆サイドのウイングバック、ジョバンニ・クエンダ(ポルトガル代表)も、ゴール前をカバーしきれなかった。
最終ラインにDFを5人も配しながら、スポルティングはあっけなく崩された。守田もバリバリの当事者だった。アーセナルの右サイドのパスワークに対峙したものの、手をこまねいているうちに決定的な折り返しをティンバーに許してしまった。技で負けた、力で負けたと言うより、理屈で負けた。落胆は大きいに違いない。
【実力差以上の大敗に】
前半22分に許した追加点も同様なパターンだった。右サイドでライス→ブカヨ・サカ(イングランド代表)→ティンバーと回ってきたボールを受けたパーティが、スポルティングのウイングバック、アラウホの背後に縦パスを送った。
これを外側から走ったサカが折り返すと、ゴール前に詰めたカイ・ハバーツ(ドイツ代表)が難なくプッシュ。2-0としたわけだが、アラウホがトーマスのパスに屈した時点で、5バックは後方を固めるという本来の意味を失っていた。守田はこのシーンでもボールの近くでプレーに絡んだが、またもや決定的なパスを見送るばかりだった。
スポルティングの3バックは、3FWが開き気味に構えるため、森保式3バックより構造的には5バックになりにくい。多少、攻撃的と言えるが、後方を固めることに主眼を置く3バックであることに変わりはない。
結果は1-5。スポルティングがミケル・アルテタ監督率いるアーセナルに実力差以上にやられる姿を、代表ウィーク明けすぐに見せられると、「森保ジャパンはこう崩せ」と言われているような気にさせられる。
守田の個人的な出来は可も不可もなし、だった。後半2分、自らのパスでチャンスを作り、自らシュートに持ち込んだプレー(相手GKにセーブされる)を最大限に評価すれば、採点は10満点の6.5となるが、プレミアリーグ関係者たちの目を惹くプレーができたかと言えば、難しいと言わざるを得ない。結果的によくないサッカーを強いられたチームのなかに埋没した印象だ。
この結果、スポルティングは暫定順位ながら2位から8位に後退。アーセナルは14位から7位に浮上した。