「これって、超ピンチかも」そんな風に私が眉をひそめていたのは月曜日、お昼過ぎにビニシウス負傷離脱の報が入ってきた時のことでした。いやあ、前日夜はブタルケを4年ぶりにオレンジ色のユニを着たレアル・マドリーが訪問。5年前、自ら手で2部に突き落と…

「これって、超ピンチかも」そんな風に私が眉をひそめていたのは月曜日、お昼過ぎにビニシウス負傷離脱の報が入ってきた時のことでした。いやあ、前日夜はブタルケを4年ぶりにオレンジ色のユニを着たレアル・マドリーが訪問。5年前、自ら手で2部に突き落とした弟分のレガネスに兄弟分ダービーの華やぎを味合わせてあげたのも前半途中までと、容赦なく、実力の差を思い知らせることになった試合を観戦してきたばかりだったんですけどね。それがまさか、ブラジル代表の2試合に皆勤後、木曜にマドリッドに着いた彼をアンチェロッティ監督がフル出場させてしまったツケが、こんな形で現れるとは!

ええ、実際、ビニシウス自身もレガネス戦が終わるまで、痛みには気づかず、ゴールこそ挙げなかったものの、いや、むしろゴールを挙げたいばかりに、まだ交代枠はありながら、最後までピッチに残ることを希望したんですけどね。おかげで全治3週間の左太もものケガとなり、復帰目標は12月18日のインターコンチネンタルカップ決勝に。リーガこそ、土曜のセルタ戦で引分けた首位バルサに消化試合数1少ない状態で勝ち点差4と迫ったとはいえ、彼らにとって、リーグフェーズの天王山と言っても大袈裟ではない、今週水曜のCLリバプール戦にビニシウスが出られないとは計算外もいいとこじゃないですか。

というのもCLでここ、リールとミランに2連敗しているマドリーは18位と、目標の決勝トーナメント16強対決直接進出となる8位以上まで、かなり上が詰まっているからで、そんな時に限って、36チーム参加の改変版CLリーグフェーズで唯一、4連勝で首位に君臨。更にプレミアリーグでも2位のマンチェスター・シティに勝ち点8差をつけて、首位を独走しているアルネ・スロット監督のチームと当たるだけでもハードなのに、かてて加えて、チームの大黒柱が当てにできないですよお。

おまけにかろうじてルーカス・バスケスは回復したものの、ロドリゴとチュアメニはまだリハビリ中。要はまた、CBにカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアセンシオを起用しないとならないんですが、サラー率いるリバプールの前線はレガネスのように優しくないとなれば…水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からの大一番はやっぱりGKクルトワと、晴れて得意の左サイドを独占できるエムバペにすがるしかないんでしょうか。

まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢がどうだったか、お話ししていくことにすると。各国代表戦入り直前同様、またしても私が3日連続出動となったリーガ14節は金曜夜のコリセウムでスタート。弟分のヘタフェがバジャドリーを迎えたんですが、とにかく前半は退屈でねえ。枠内に行ったシュートが31分、ルイス・ミジャがエリア外から撃ったのが初めてだったというくらい、どちらもパッとしなかったんですが、対照的に熱かったのはベンチの方。

ええ、終盤にジェネがエリア内で倒されたプレーがペナルティとならなかったことから、両監督が揉め、ハーフタイムにロッカールームに引き揚げる途中、ペッツェラーノ監督にレッドカードが出されたことが、後半開始後、バジャドリーの指揮を執っているのが第2監督だったことから発覚。大体がして、損をしたのはボルダラス監督のチームだったというのに、イエローカードで留まった彼に対して、何でそうなるのかは永遠の謎でしたが、相変わらず、ゴールが遠いヘタフェはアレックス・ソラをイグレシアスに代えて、右SBをしていたニヨムを前に出し、更にベルトゥをアルバロ・ロドリゲスに交代と早めに手を打ったところ…。

やってくれたんですよ、RMカスティージャからレンタル修行に来た20才の大型FWが!25分、アルデレテのロングパスをニヨムがエリア内左奥で受けると、アルバロにパス。大勢の敵に囲まれながら、体を回して撃った彼のシュートがGKカール・ハインを破ってくれたから、ビックリしたの何のって。更にその2分後にもCKからの始まったプレーで、昨季まで2年間、ヘタフェで修行していたラタサがエリア内のボールをクリアできず。ちゃっかりニヨムが2点目を奪ってくれたとなれば、まあ、相手は最下位のチームですしね。

そのまま2-0で、9月28日のアラベス戦以来となる、「Todos la necesitábamos para coger aire/トードス・ラ・ネセシタバモス・パラ・コヘール・アイレ(息ができるように必要だった)」(ボルダラス監督)今季2勝目をヘタフェはゲット。おかげで降格圏との差も勝ち点3に拡大し、今週末は日曜にサンティアゴ・ベルナベウでの兄弟分ダービーとなるせいもあって、有難かったんですが、貧乏暇なしとはまさにこのことかと。というのもヘタフェはこのミッドウィークの火曜、10月28日のバレンシア州洪水災害のため、延期となっていたコパ・デル・レイ1回戦をプレーしないといけないから。

いやまあ、相手は地方リーグ(実質6部)のマニセスですし、ボルダラス監督もトップチームメンバー8人以上がピッチにいないといけないという規定を最低限満たして、あとはカンテラーノ(下部組織のチーム)で賄うつもりのようですけどね。順延を余儀なくされた複数の1回戦の中でもこの試合は同日開催のパルラ・エスクエラvsバレンシア戦と共に最後に残った2つで、もう水曜には12月4~6日に行われる2回戦の組み合わせ抽選が実施。今のところ、敗退した1部チームはいないため、ヘタフェにもソツなく勝ってもらいたいところですが、代表戦明け早々の今の時期なら、きっとまだ選手も体力ありますって。

そして翌土曜はメトロポリターノに出向いた私だったんですが、早くも前半8分、アトレティコはカルロス・ビセンテのクロスを防ごうとジャンプしたハビ・ガランが天高く上げた腕にボールが当たり、しかも間が悪くもエリア内。疑問の余地ないハンドでアラベスにPKを与え、グデリに先制点を決められてしまうという、呆れるようなスタートを切ったんですけどね。各国代表のお勤めに出ていたのはGKオブラクとバリオスの2人だけという、休養十分なスタメンだったにも関わらず、前半のうちはせいぜい、サムエル・リノのシュートがGKシベラに逸らされてゴールバーに当たったぐらいしか、チャンスらしきものない有り様だったところ…。

0-1のまま始まった後半、まずは頭から、ジョレンテ、ガランをジュリアーノ、セルロートに代え、順次、フリアン・アルバレス、デ・パウル、リケルメと25分までに交代枠を使い切ったシメオネ監督のチームだったんですが、うーん、このところ、お隣さんばりにremontada(レモンターダ/逆転劇)で勝っているのを見ているせいでしょうかね。きっとそのうち、ゴールは入るわよと妙に楽観的な自分がいたんですが、実際、その通りになるんですから、最近のアトティコはいよいよツキが回ってきた?

それが起こったのは31分、デ・パウルの入れたクロスに合わせようとしたセルロートと一緒にジャンプしたアブカルの後ろ手にボールが落ち、主審がハンドによるペナルティを宣告。アラベスのルイス・ガルシア監督によると、「Son cosas que no se pueden pitar. Es un jugador que salta y se desequilibra/ソン・コーサス・ケ・ノー・セ・プエデン・ピタール。エン・ウン・フガドール・ケ・サルタ・イ・セ・デセキリブラ(ペナルティには取れないことだ。ジャンプした選手がバランスを失ったんだから)」そうなんですが、この時はVAR注進もなかったよう。あっさりグリーズマンがPKを決めて、同点に追いついたアトレティコだったんですが、まさかその10分後、この試合最高のプレーを見られることになるとは!

そう、まだアルゼンチン代表モードだったデ・パウルが送ったスルーパスに抜け出したセルロートが、これまたノルウェイ代表で1ゴール1アシストの余韻もあったか、エリア内右側から、いかにもザ・ストライカーというゴールを決めてくれたんですよ。もちろん、それにはシメオネ監督の功績もあって、試合前日合宿のホテルでセルロートと1時間余り向かい合い、「プレー時間が5分だろうが、20分だろうが、90分だろうが、チームに貢献できることについて、habíamos tenido una charla muy linda/アビアモス・テニードー・ウナ・チャルラ・ムイ・リンダ(とてもいい話し合いをした)」のだとか。

おかげでモラタ(現ミラン)の後継を務める気満々でビジャレルから移籍しながら、不動のスタメンに定着できないでいるセルロートも何か吹っ切れたか、チームに2-1の逆転勝利をもたらすゴールを挙げて、シメオネ監督のアトレティコ在任700試合のお祝いに花を添えることができたんですが、いやあ。一応、これで首位のバルサにも勝ち点5と盛り返した彼らだったんですが、土曜のバジャドリー戦はアウェイだということを除けば、何とかなりそうな気はしても、果たして火曜午後6時45分(日本時間翌午前2時45分)からのCLスパルタ・プラハ戦はどうなることやら。

ええ、こちらもお隣さん同様、2勝2敗の23位で、かなりヤバいことになっていますからね。もう月曜にはプラハ入りしたチームですが、先週からラグビー用のヘッドギアを着けて合流したル・ノルマン、アルゼンチン代表1戦目でケガして早退してきたモリーナ、リハビリプロセスから一向に抜けられないレマルはまだおらず。ここ5連勝で、CLでは強敵PSGに奇跡のレモンターダでアウェイ勝利した勢いに乗って、気温零度のチェコの地でも白星を掴めるといいのですが、さて。そうそう、今季のCLは9位~24位の16強対決出場プレーオフ圏に入らず、25位以下で敗退したら、EL転戦のカードはないんですってよ。

一方、日曜の部はというと、弟分のラージョがサンチェス・ピスファンで前半26分、ソウに決められた1点を、ウナイ・ロペスがイサークの背中を殴り、一発レッド退場したせいもあって、最後まで返せず。1-0でセビージャに負けてしまった後、スタンドがファンの掲げるモザイクで覆われたブタルケでマドリー戦がキックオフに。ちなみにこの日のアンチェロッティ監督のチームには新機軸があって、いえまあ、バルベルデが右SBだったのは、カルバハルとルーカス・バスケスの負傷で、他に本職がいないための窮余の一策だったんですけどね。ここ4試合、ノーゴールが続いているエムバペとビニシウスのポジションをスイッチし、フランス代表に招集されなかった前者を左サイドに配置。その効果があったか、早くも開始10分にはエムバペがゴールを決めたんですが、残念ながら、これはオフサイドで認められないことに。

いえ、兄貴分を前に攻撃ではまったく冴えたところのなかったレガネスも守備は懸命に頑張って、久々に先発に入り、張り切っていたギュレルも抑えていたんですけどね。43分、アルティが自陣エリア前でボールをベリンガムに奪われたのが運の尽き。それをビニシウスが繋いで、ゴール右前から平行のパスを出すと、タイミング良く突っ込んできたエムバペに先制ゴールを挙げられてしまっていてはねえ。

ええ、ボルハ・ヒメネス監督も後半早々にはラバやチッコを入れて、反撃しようとしたんですが、やっぱりいくら負傷者続出で戦力減退しているとはいえ、マドリーとは選手の次元が違いますからね。21分にはエリア左前からのFKをセバージョスが短く出すと、ギュレルがボールを止め、それをキャプテンの大役を初めて担ったバルベルデが弾丸シュートで撃ち込んで、2点目を取られている始末。40分にもCKのクリアに失敗し、ブライムのシュートがボールバーに当たって跳ねたボールを、イングランド代表の試合で調子を取り戻したベリンガムにヘッドで決められてしまっては、もうどうしようもありませんって。

そのまま0-3でレガネスは完敗し、弟分ダービーではヘタフェともラージョともアウェイで1-1と引分けて互角なところを見せたものの、兄貴分に対してはまだまだというところが露見してしまったんですが、大丈夫。そう、彼らのリーガは優勝を争うマドリーやアトレティコとは違い、1部残留が唯一の目標ですからね。折しも14節の結果で弟分3チームは13位ラージョ、14位レガネス、15位ヘタフェと勝ち点3差の中で集合。とりあえず、ミッドウィークが暇なラージョは日曜のホームゲーム、アスレティック戦で、レガネスは土曜のアウェイゲーム、アラベス戦で降格圏との差を広げる闘いを継続していくことになりますが…難点はどこもゴール付いているFWがいないことでしょうか。