ヴィッセル神戸にタイトルをもたらす殊勲弾を決めたものの、喜びよりも“次”を見据えていた宮代大聖。 この試合では4-3-3の左ウイングで先発。大迫勇也、武藤嘉紀との強力な3トップを形成して、ガンバ大阪から得点を奪おう…
ヴィッセル神戸にタイトルをもたらす殊勲弾を決めたものの、喜びよりも“次”を見据えていた宮代大聖。
この試合では4-3-3の左ウイングで先発。大迫勇也、武藤嘉紀との強力な3トップを形成して、ガンバ大阪から得点を奪おうとした。そして、途中からインサイドハーフへとポジション移動。昨年までの川崎では経験してこなかった中盤中央前目でのポジションで、後半19分に結果を残した。
大迫勇也という昨年のリーグMVPがいる神戸では、この位置で多くの時間を過ごしており、結果も出している。新たなチームと新たなポジションでの適応を模索する中で得たファイナルでの決勝弾だけに、重みがあるはず。その気持ちを聞けば、「継続は裏切らない」と力強く話したが、すぐに、「まだ終わってないんで」と続ける。
そして、「嬉しい気持ちもありますけど、Jリーグを取らないといけないので、切り替えて頑張りたいなと思います」と、改めてリーグタイトルへ気を引き締めていた。
Jリーグタイトルへの思い――。それは、川崎フロンターレで迎えた最後のリーグ戦でも話していた。
■「リーグ奪還という目標の中でそれが叶わなかった」
2023年12月3日、宮代は駅前不動産スタジアムで先発メンバーに名を連ねていた。対戦相手は古巣・サガン鳥栖。小林悠にセンターFWを譲ってのウイングポジションでの出場だった。
フル出場して1-0での完封勝利に貢献したものの、「今年はリーグ奪還という目標の中でそれが叶わなかった」と試合後のウォーミングアップエリアで吐露。その失意から1年後の今、ユニフォームの色こそ違うが、宮代はその願いを目前にまで手繰り寄せている。
ちなみに23年での成長について聞けば、こう答えている。
「いろんなポジションをやった中で、そういう目線でプレーできたりだとか、試合の中で得るものは大きかったですし、もう1回フロンターレに戻ってきて質の高い選手が多い中で、改めて質の大事さを見直せた。どれっていうのは難しいですけど、すべてにおいて、学ぶことは大きかった」
24年11月の天皇杯決勝後にも同じ質問をすれば、次のように言葉を並べる。
「チームを移籍してまた違ったいろんな刺激が自分の中に入りましたし、何がって言われたら難しいかもしれないんですけど、結果がついてきてくれてるっていうのは、しっかり理由があると思いますし、それを自分でしっかりと分析して、良いときに何ができるかっていうのを今年はずっと心掛けてやってたので、そこはこれからもやっていきたい」
2年分の「成長」をこうして並べると、一か所に絞らずにあらゆる部分を伸ばそうとした2年だということが分かる。そして、それを自身の中で分析しながら、さらなる成長につなげようとしていることも。
■狙うさらなる成長の姿とは
では、今後どのような成長を狙っているのか。改めて問い直せば、「こういう大舞台とか、優勝がかかってる試合とか、大事な試合で自分が点取れる、チームを勝たせるかっていうのは、フォワードとしては非常に大事なことかなと思いますし、そこで自分の価値も上がってくる」と目を鋭くして語る。
この天皇杯決勝のように、チームに勝利をもたらす結果を大きな舞台で変わらず出し続けるようにと、そう意気込むのだ。
そのFWとしては、先述したように大迫勇也という最高にして高い壁となる存在が身近にいる。そのポジションへの意識について尋ねると、こう力強く話してくれた。
「与えられたポジションでしっかり自分も結果を出さないといけないっていうのは、どこのポジションでも変わらない。自分は点を取ることで、チームに貢献できると思ってるので、そこは別にフォワードという括りだけじゃなく、それが自分の良さでもありますし、そこは別にフォワードという枠で括って、ここで絶対やりたいっていうのは別にないですし、どこのポジションでもしっかり結果を出せるようにし準備をしています」
ヴィッセル神戸の残り2試合は、11月30日のアウェイでの柏レイソル戦と、12月8日のホームでの湘南ベルマーレ戦だ。昨年果たせなかった目標を、今季は果たせるか。ヴィッセル神戸サポーターだけでなく、川崎フロンターレのサポーターと関係者も、その笑顔を楽しみに待つ。
(取材・文/中地拓也)