東京ドームの三塁側上段にある記者席、そして地下のプレスルームには日本人記者より人数が多いのではというくらい、台湾人プレスが決戦の地に大挙して押し寄せた。 11月23日、第3回プレミア12決勝の前哨戦となった、スーパーラウンド最終節の日本対…
東京ドームの三塁側上段にある記者席、そして地下のプレスルームには日本人記者より人数が多いのではというくらい、台湾人プレスが決戦の地に大挙して押し寄せた。
11月23日、第3回プレミア12決勝の前哨戦となった、スーパーラウンド最終節の日本対チャイニーズ・タイペイ。侍ジャパンは9対6で勝利したが、先発マスクをかぶった古賀悠斗(西武)がミックスゾーンでまず口にしたのは反省の弁だった。
円陣を組み選手たちに指示を送る侍ジャパン・井端弘和監督(写真中央)
photo by Sankei Visual
【決勝を見据えた攻防戦】
「僕がスタメンと聞いた時に、今日の試合もそうですけど、明日(24日の決勝)のことをイメージしながらリードしないとなっていうなかで、ちょっとてこずったというか、うまくリードしてあげられなくてこういう展開になりました。チャイニーズ・タイペイを勢いづかせず明日に臨みたかったという思いがあったので、そのへんの悔しさはあります」
スーパーラウンド最終節の第1試合でアメリカがベネズエラを下し、夜の第2試合を待たずして日本とチャイニーズ・タイペイの決勝進出が決定。プレミア12初優勝に燃える相手は、なりふり構わぬ手を打ってきた。23日の日本戦で予告先発として発表していた左腕リン・イーリンから、チェン・ボーチンへの変更を突如申し出たのだ。
「いい状態の投手を温存したいと思いました。明日に向けて状態を直して、明日の試合を迎えたい」
試合後、ツェン・ハオジュ監督はそう説明した。
対して、日本は前日から3番・辰己涼介(楽天)、4番・森下翔太(阪神)、5番に上がった佐野恵太(DeNA)を除くスタメン6人を入れ替え、主力の多くを休ませた。すると初回、1番に抜擢された村林一輝(楽天)の先頭打者本塁打や4番・森下のタイムリー二塁打などで4点を先行する。
だが、チャイニーズ・タイペイは3回に1点を返すと、5回には制球を乱した日本の先発・早川隆久(楽天)から2点を追加した。
日本は翌日に備えて先発投手をなるべく引っ張りたいところだったが、早川がちょうど100球に到達したところで無死満塁のピンチを招き2番手・清水達也(中日)にスイッチ。ホームゲッツーなどで追加点を与えずに凌いだが、5回裏に7番・清宮幸太郎(日本ハム)の2点タイムリー三塁打などで3点を挙げた直後の6回、3番手の北山亘基(日本ハム)が2点を返された。
北山は7、8回を無失点に抑え、結局日本が9対6で勝利したものの、翌日の決勝を考えると決して理想的な展開ではなかった。
今大会、ここまで8連勝を飾ってきた侍ジャパンの最大の武器は投手力だ。11月16日、完全アウェーで行なわれたオープニングラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦でも1失点と危なげなく抑えている。
【井端ジャパン6失点の理由】
それが一転、スーパーラウンド最終戦ではなぜ、6失点も喫したのだろうか。その理由は大きく3つある。
1つ目は、先発マスクをかぶった古賀の意図どおりにいかなかったことだ。
「コーチの方から『今日の試合を頑張ってもらえば大丈夫』と言われたんですけど、僕のなかでは相手に対して配球でインパクトを残そうと思いました。普通なら、ここは変化球で空振りを取りにいくというところで、あえて真っすぐでいったりとか。(決勝では)キャッチャーもピッチャーも変わるけど、キーになるバッターに対して(体を)開かせようとかも考えていました」
5回には2番リン・リー、3番ツォン・ソンエン、4番ジリジラオ・ゴングァンと3人の右打者に対し、早川はインコースを攻めるも思うように決まらず、この回に2点を失い無死満塁で降板した。古賀が振り返る。
「制球がちょっと定まらなかったですね。早川さんもやっぱり緊張もあっただろうし。僕も普段組んでいないなか、早川さんのいいところを全面に引き出してあげられなかったです」
早川は3回、相手打者が構えていない状況でピッチクロックバイオレーションを取られたこともあり、思うように制球できなかった。これが6失点につながる2つ目の理由だ。
そして3つ目は、チャイニーズタイペイの勝利への執念だ。再び古賀が語る。
「テレビでWBCを見ていた時の韓国みたいに、『絶対日本に勝つ』というのにプラス、『優勝しよう』という気持ちが伝わってきました」
チャイニーズ・タイペイ打線には1番から大柄な打者が並び、強いスイングを仕掛けてきた。「得点のシーンでは、一気にガンガン来るような勢いを感じました」と古賀は振り返る。上記の3つの要素が重なり、スーパーラウンド最終戦では相手を勢いづかせる形になってしまった。
だが、1失点に封じ込めたオープニングラウンドだけで終わらず、スーパーラウンドで再び肌を合わせたことで得られたデータや印象もある。古賀が続ける。
「2ストライク後のアプローチでも、簡単に三振しないなという感じもありました。低めの球はなかなか振らない場面もありましたし。バッターカウントの時にしっかり振ってくるなっていう感じと、甘い球はしっかり長打にしているなっていう印象です」
スーパーラウンド2戦目のベネズエラ打線もしぶとく、甘い球は長打にしてきたが、この日のチャイニーズ・タイペイも同様だった。そのなかで早川や清水、北山が打ちとった場面を振り返ると、低めの変化球をうまく振らせていた。ウイニングショットを生かす配球をできれば、相手打線を封じ込めるはずだと古賀も感じた。
「相手も各リーグのトップ選手が集まっているので頭に入っていると思うんですけど、そこをどう振らせにいくかだと思います」
低めの変化球を振らせるために、どうカウントを整えていくのか。それができれば、高めのストレートも生きてくる。
侍ジャパンにとって連覇のかかるプレミア12決勝で先発する戸郷翔征(巨人)は、まさにそうしたピッチングが持ち味だ。
大会初優勝を目指して意気込むチャイニーズタイペイに対し、決勝を逆算して調整してきた戸郷がどう封じるのか。侍ジャパン打線は4試合連続2ケタ安打と好調を維持するだけに、最大の武器である投手力が連覇へのポイントになる。