長谷川健太監督(現名古屋)が指揮している2015年の天皇杯以来、10年ぶりのクラブタイトルまであと一歩と迫りながら、ヴィッセル神戸に敗れたガンバ大阪。絶対的エース・宇佐美貴史が右ハムストリング苦離れで欠場し、彼への依存度の高さが改めて浮き…
長谷川健太監督(現名古屋)が指揮している2015年の天皇杯以来、10年ぶりのクラブタイトルまであと一歩と迫りながら、ヴィッセル神戸に敗れたガンバ大阪。絶対的エース・宇佐美貴史が右ハムストリング苦離れで欠場し、彼への依存度の高さが改めて浮き彫りにはなったが、今季はチームとして前進した部分も少なくなかった。
その筆頭が21歳の点取屋・坂本一彩だろう。今季J1で8ゴールをマークしている彼は、天皇杯でも準決勝の横浜F・マリノス戦で延長後半ロスタイムに決勝弾を叩き出し、チームをファイナルへと導く大仕事をしてみせた。
「ずっと課題にしていたのは、足を振るっていうこと。それがここ最近、できていたから得点も増えてきましたし、天皇杯決勝でも意識していました。
いい調子で来ていたから、この流れで決めたいと思っていたけど、そこまで簡単な話ではなかったですね。やっぱりこういう大舞台でしっかり結果を残して、頼れる選手になっていかないといけない。チームを引っ張っていけるようなFWになりたいと強く思いました」とシュートゼロに終わった若武者は力不足を潔く認めたうえで、さらなる飛躍を誓っていた。
■坂本が明かした悔しさ
今のガンバの陣容を見ると、30代の倉田秋や宇佐美貴史、一森純が依然として重要な役割を果たしていて、次世代のスターがまだまだ育っていない印象も少なからずある。今季セレッソ大阪から加入した鈴木徳真や山下諒也、山田康太ら移籍組は非常に献身的な仕事ぶりを見せ、チームを支えたが、やはり若い世代の台頭は急務のテーマだ。
今季序盤は唐山翔自(熊本)らも戦力となっていたが、シーズン途中にレンタルに出され、最終的には21歳の坂本と22歳の半田陸、美藤倫くらいしかメンバー入りしていなかった。やはりフレッシュな面々がどこまでブレイクできるかが、今後のチームの命運を大きく左右しそうだ。
「初めて決勝の舞台に来て、他の試合よりも、この決勝の舞台で負けるっていうのはすごい悔しくて、またここに戻っていきたいと思った。次は絶対、タイトル取りたいなっていう気持ちが負けてすぐに出てきたので、その悔しさを残りのリーグと来年に生かしたいと思います」
坂本は語気を強めたが、それはチーム全員が感じたことに違いない。この日、ラスト数分の出場にとどまった岸本武流、美藤、出番のなかった福田湧矢らを含め、彼らの底上げ、選手層の拡大があって初めて、2025年は本当の意味でJリーグタイトル、天皇杯やYBCルヴァンカップ制覇を本気で狙える集団になるはずだ。
■鈴木徳間が話す“どう生かすか”
「まずはしっかりと試合を振り返ることが重要。自分たちが準備してきたやり方やメンタル的な部分、ここまでの流れを踏まえ、結果を受け止めて、そこからどんなふうに改善していくかはチームとして足並みを揃えなきゃいけないところ。それはみんなで話し合うべきだと思います。『負けました』『悔しいです』って終わらせるんじゃなくて、これを、残りのリーグや来年にどうつなげていくかが大事かなと考えてます」
ボランチの主軸・鈴木徳真は冷静に先を見据えていたが、そういった積み重ねがあってこそ、チームとして成長できる。王者の座をさらった神戸も2019年天皇杯で初タイトルを獲得した時点では、山口蛍や酒井高徳といった一部のトップ選手に依存しがちな集団だったが、5年が経過した今は佐々木大樹、宮代大聖、山川哲史らが成長。幅広い戦力が揃うようになっている。
ガンバもそこは見習うべき点。隣のライバルのことは見たくもないかもしれないが、どんなことにも目を向け、貪欲に吸収する姿勢が重要だ。いずれにしても、この負けを絶対にムダにしてはいけない。まずはまだ可能性のあるACL出場権獲得に全力を尽くすこと。残り2試合も彼らにとっては貴重な成長の場に他ならない。
(取材・文/元川悦子)