昇格プレーオフ準決勝のもうひと試合、リーグ戦4位のモンテディオ山形と5位のファジアーノ岡山による対戦は山形の渡邉晋監督…

 昇格プレーオフ準決勝のもうひと試合、リーグ戦4位のモンテディオ山形と5位のファジアーノ岡山による対戦は山形の渡邉晋監督と岡山の木山隆之監督による頭脳戦の様相を呈するかもしれない。

 4ー2ー1ー3の山形と3ー4ー2ー1の岡山。システム的にはマッチアップが生じやすいポジション、ミスマッチになりやすいポジションがある中で、守備でハメるところ、攻撃でズラすところ、あえて1対1を作り出すところを両指揮官が練りに練って、試合に臨んでくるはずだ。
 リーグ戦では岡山ホームの一巡目、山形ホームの二巡目ともに引き分けだったこともあり、勝敗の行方は非常に読みにくい。そうなると山形はホーム開催であること以上に、リーグ戦の順位が上の側が90分引き分けでも勝ち上がれるという、昇格プレーオフ特有のレギュレーションがアドバンテージになるのは確かだろう。
 岡山の木山監督は手堅い守備をベースに、チームの基盤となるビルドアップなどは継続的に構築しながらも、相手のストロングを消して、ウィークを突く設計を試合ごとに加えるタイプだ。

■山形のホットライン

 山形のストロングといえば10番ポジションの土居聖真とFWディサロ燦シルヴァーノのホットライン、そしてウイングとサイドバックが縦関係を生かし、立ち位置を自在に入れ替えながら連動してくるサイドアタックだ。
 そこで相手のディフェンスをうまく破ることができれば、エースストライカーのディサロに加えて逆側のウイングや土居がフィニッシュに絡んでくる。岡山としてはここをいかに止めながら、ボールの奪いどころを見極めていくか。
 そのためには土居やウイングに直接通す縦パスを遮断していく必要があるだろう。岡山としては山形の強みを出させないために、ウイングバックの本山遥と末吉塁をある程度、サイドバック気味に構えさせる必要があるだろう。
 ただし、5バックが固定化してしまうと、山形が前線のタレントに加えて、ボランチやサイドバックの攻撃参加を許してしまい、雪崩のように守備が崩されてしまう危険も増大する。そこをせき止めるためにも、山形との古巣対戦になるボランチの藤田息吹や田部井涼、あるいは竹内涼の役割が大きくなりそうだ。

■岡山のキーマンは

 岡山の強みは1トップに張るFW一美和成のポストプレーを起点とした速攻だ。夏にJ1の京都から加入した一美はここまで1得点1アシストと目に見える結果はなかなか残せていないが、相手のディフェンスを背負いながらタメを作り、13得点を記録しているシャドーの岩渕弘人などを前向きにさせる仕事をハイレベルにこなしている。
 一発勝負でもあるので、自陣でボールを奪ったところからロングボールを一美がフリックして、岩渕が仕留めるといったシンプルな形で1点奪ってしまえれば、アウェーの岡山も残り時間を有利に進められる。
 岡山はリーグ戦で前半17得点、後半31得点という数字が示す通り、後半勝負型の傾向がある。もちろんスコアレスのまま時間が進むほど、引き分けでも勝ち進めるアドバンテージのある山形がゲームコントロールしてくることも予想される状況で、岡山としては多少リスクを負った攻撃も必要になってくる。
 そこでキーマンになってくるのが191cmのサイズを誇り、スピードもあるFWルカオだ。スタメンでも13試合に出ているが、終盤戦は主に勝負をかけるジョーカーとして木山監督に重用されている。さらにJ2有数のテクニシャンである神谷優太も攻撃の変化を付けられるタレントで、セットプレーのキッカーとしても違いを作れる。
 これまでの対戦を考えても、一瞬の判断や1つのプレーが勝敗を分ける、色々な意味で際どい勝負になってきそうだが、普段は手堅い岡山が、そのままのスタンスで少ないチャンスを決め切って、試合を有利にしていくのか、それとも山形が持ち前の支配力をうまく生かしながら、岡山に隙を与えず同点、あるいは先に得点を奪って相手を追い込むのか。両監督の選手交代も含めて注目していきたい。
(取材・文/河治良幸)

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