井上の強打を前に沈んだフルトン。(C)産経新聞社 たった一敗、されど一敗。ボクシングの前WBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)にとって、現同級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)に喫したキャリア初の黒星…
井上の強打を前に沈んだフルトン。(C)産経新聞社
たった一敗、されど一敗。ボクシングの前WBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)にとって、現同級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)に喫したキャリア初の黒星は、忘れがたき記憶となっているようだ。
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現地時間11月21日に米ポッドキャスト番組『Cigar Talk』にゲスト出演したフルトンは、昨年7月に東京・有明アリーナで行われた井上との一戦を回顧。リング上での自分が「思うような自分ではなかった」と告白した。
まさに防戦一方で、井上の“圧勝”と言える試合内容だった。終始主導権を握られたフルトンは疲労の色が濃くなっていた8回に右ストレートと左フックを被弾。怒涛のラッシュに力なくリングに沈み、ふたたび立ち上がることができなかった。
試合前に「難攻不落」と言われた王座から陥落する悔しい敗戦。この井上戦について番組内で切り込んだフルトンは「戦う中で何が特に苦労した?」と番組MCに問われ、「何かに苦労したっていうよりも自分の思うように動けなかったって感じだ」と告白。さらに「別に言い訳をしたいわけじゃない。分かってくれる? 思ったことを言わせてほしい」と自身の想いを赤裸々に続けた。
「それなりに戦えてはいたと思うんだけど、いつもの自分じゃなかったんだ。落とせるからって、あの時に、あの体重でやるべきじゃなかったのかもしれない。それが俺の本音さ。毎日のようにサウナスーツを着て、サウナに入って、そして練習をして……」
階級制のスポーツが持つ難しさを説く元世界王者は「つまり落とせる体重と戦える体重は違うってことかな。あの階級に長く留まり過ぎたんだ」とも吐露。井上戦以前から「全然ダメだった。実は2回ぐらいでフラフラになっていたこともあった」と続け、21年12月に行われ、12回判定勝ちを収めたブランドン・フィゲロア(米国)との試合も「気持ちだけで勝った感じだった」と振り返った。
無論、井上の才覚を軽んじる気はない。フルトンは「イノウエも俺がベストなコンディションじゃないことは分かっていたはずだ」としながらも、リングで拳を交わした者だからこそ分かるモンスターの凄みを語った。
「イノウエの技術は本当に高かった。スキルが高い者同士だからこそ分かるんだ。お互いに強い者だからこそ分かる強さってあるんだよ。見えるパンチに関しては何とかなるレベルではあった。距離を取らなくてもブロックで対応はできた。ただ、俺が倒されたパンチはハッキリ言って見えなかった。それがイノウエの強さなんだ。PFP1位に納得かって? 当たり前だ。俺を倒しているんだぞ。1位か、そうでなくても2位には入る。世界最高の選手だ」
井上に敗れてから「俺にとっては減量が一苦労だった」と言うスーパーバンタムからフェザーに転級したフルトン。来年2月にはフィゲロアとの世界戦も決まり、再起に向けた道のりも順調だ。
井上も将来的なフェザー転級を明言している。果たして、フルトンがふたたびモンスターと拳を交わす日は訪れるか。元世界王者の今後を興味深く見守りたい。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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