今年のGIジャパンカップ(11月24日/東京・芝2400m)には、オーギュストロダン(牡4歳)、ゴリアット(せん4歳)、ファンタスティックムーン(牡4歳)といった実力も実績もある外国馬が参戦。手強い海外勢がこぞって来日したかつてのジャパン…

 今年のGIジャパンカップ(11月24日/東京・芝2400m)には、オーギュストロダン(牡4歳)、ゴリアット(せん4歳)、ファンタスティックムーン(牡4歳)といった実力も実績もある外国馬が参戦。手強い海外勢がこぞって来日したかつてのジャパンカップを想起させ、近年とはひと味違う盛り上がりを見せている。

 迎え撃つ日本勢は、GI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)を快勝したドウデュース(牡5歳)が大将格と言えるが、それに劣らず、熱い注目と期待を集めているのが、二冠牝馬のチェルヴィニア(牝3歳)だ。


ジャパンカップに挑むチェルヴィニア

 photo by Eiichi Yamane/AFLO

 GI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)こそ、一頓挫あったうえでの長期休養明けの一戦とあって13着と惨敗を喫したが、立て直したGIオークス(5月19日/東京・芝2400m)では桜花賞馬のステレンボッシュを振りきって戴冠。牝馬三冠最終戦のGI秋華賞(10月13日/京都・芝2000m)では、ライバルたちに1馬身以上の差をつける完勝劇を披露した。

 そもそもの能力に加え、夏を越して著しく成長。この世代の牝馬相手では、能力が一枚抜けていることをはっきりと示した。

 そして今回、ジャパンカップに挑戦する。

 ただ、チェルヴィニアはここまでのデビュー6戦で、牡馬混合の未勝利戦を除けば、同世代の牝馬としか戦ったことがない。つまり、歴戦の古馬トップクラスをはじめ、世界レベルのGI馬との対戦は初めてのことだ。

 3歳牝馬は人間で言うと、中・高校生の女子。はたして、チェルヴィニアは体格や体力差のある大のオトナたち、いわゆる一線級の古馬を相手に勝ち負けを演じることができるのだろうか。

 過去の結果を振り返ってみると、2010年以降のジャパンカップにおいて、3歳牝馬は11頭が参戦(※外国招待馬は除く)。2勝、2着3回、3着1回、着外5回と、かなりの好成績である。要するに、競馬では"中・高校生の女子"でも"オトナ"相手に通用する、ということだ。

 その点について、関西の競馬専門紙記者はこう語る。

「3歳牝馬の斤量は54kg(※2022年までは53kg)。対して、4歳以上の牡馬は斤量58kg(※牝馬は56kg。2022年までは牡馬が57kg、牝馬が55kg)と、4kgも差がありますからね。これが、3歳牝馬には"有利に働く"と以前から言われています。

 そういう意味では、ジャパンカップで3歳牝馬が(古馬相手に)通用する、というよりは、斤量面で恵まれている分、(3歳牝馬は)有利な状況にあると見ていいんじゃないでしょうか。それでも、このレースを勝つには当然、相当に高いレベルが必要になります」

 同記者が言う「相当に高いレベル」とは何か。

 2010年以降でジャパンカップを制している3歳牝馬は、2012年のジェンティルドンナと2018年のアーモンドアイ。どちらも、三冠牝馬である。ジャパンカップを3歳で勝ったあとも、牡馬相手のGIを複数回制覇。海外GIでも勝利を挙げていて、名牝のなかでもひとつ格上の、レジェンド級の名牝だ。

 チェルヴィニアは、それだけの器なのか。先の専門紙記者が言う。

「現状では、そこまでの強さは感じません。実績的にも、冠がひとつ足りません。

 ただ、これまでのレースぶりを見ていると、GIを使うごとに確実に強くなっている印象があります。ですから、前走の秋華賞のときより、さらにパワーアップしている、ということも考えられます。そこに、期待でしょうね」

 専門紙記者は続けて、今回の出走メンバーを見渡しながら「チェルヴィニアに有利に働きそうな面もある」と言う。

「今年は、これといった逃げ馬がいません。加えて、有力視されているのはドウデュースをはじめ、道中後方で運ぶ馬ばかり。それも、無理に前へ行ってしまうと競馬にならないような面々です。

 ここに、チェルヴィニアにつけ入る隙が生まれます。オークスこそ、後方一気の競馬で勝利しましたが、秋華賞は中団待機から抜け出して快勝。この馬は本来、好位につけて、中団より前で競馬ができる馬です。

 さすがに逃げることはないと思いますが、先手を奪った馬のあと、3~4番手でうまく運ぶことができれば、その位置取りをアドバンテージにして、後方から来る有力馬たちの追撃を封じることも可能かと思います」

 ジャパンカップは日本のGIのなかでも、賞金額、ステータスにおいても、トップに君臨するビッグレースだ。斤量面、メンバー構成からしても恵まれているとはいえ、3歳牝馬がそう簡単に勝てるレースではない。

 また、チェルヴィニアの鞍上を務めるクリストフ・ルメール騎手はここ2戦のGIにおいて、いずれも1番人気に支持された馬の手綱を取りながら、苦杯をなめている。現状の流れは、決していいとは言えない。

 だが、ルメール騎手にとっては、チェルヴィニアで臨むジャパンカップこそ、その嫌な流れを断ちきるチャンスでもある。これまで何度も見せてきた"ルメール・マジック"が再び輝きを取り戻すことができれば、チェルヴィニアが頂点に立ち、レジェンド級の名牝への第一歩を刻むことになるかもしれない。