11月19日、W杯アジア3次予選で、中国代表と再び激突するサッカー日本代表。前回はホームで7‐0の快勝だったが、今回のアウェイでも「日本の優位は動かない」と断言するのは、サッカージャーナリストの後藤健生だ。その根拠とは? かつてアジア最強…

 11月19日、W杯アジア3次予選で、中国代表と再び激突するサッカー日本代表。前回はホームで7‐0の快勝だったが、今回のアウェイでも「日本の優位は動かない」と断言するのは、サッカージャーナリストの後藤健生だ。その根拠とは? かつてアジア最強国の名をほしいままにした中国と、挑戦者・日本の激闘の日々を振り返りながら、 日本サッカーの今後を占う!

■あらたな「金づる」を見つけたFIFA

 2000年代は、FIFAが中国の強化にかなり期待していた時期があった。その資金力が魅力だったし、市場としても期待できる。今でも、ワールドカップの試合の広告看板には、スポンサーとなった中国企業がズラッと並んでいる。FIFAとしては、いずれ中国にワールドカップも開催させたかったのだろう。

 だが、ここ数年で中国経済は急減速。かつてのように、選手を爆買いすることもなく、ワールドカップ開催の夢を追うこともなくなった。FIFAは、中国の代わりにカタールやサウジアラビアという“金づる”を発見したので、中国に期待する必要もなくなった。カタールやサウジアラビアではワールドカップをはじめ、さまざまなサッカー関連のビッグイベントが開催され、中国は忘れ去られたような存在となっている。

■「圧勝が続いている」最近の日韓戦

 さらに、話を広げよう。

 現在、野球の「プレミア12」という国際大会が開催されている。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)がランキング上位12か国を招待して開かれる国際大会だ。

 この大会に参加している日本代表は、開幕戦でオーストラリア代表を破ると、11月17日のキューバ戦まで4戦全勝でスーパー・ラウンド(決勝リーグ)進出を決めている。4戦目のキューバ戦こそ、最終回までもつれる大接戦となったが、その他の試合は日本の順当勝ちだった。第2戦の韓国戦では韓国に先行されたものの、5回までに逆転して、そのまま逃げ切った。

 韓国とは2023年のワールドベースボールクラシック(WBC)でも対戦したが、このときは13対4という一方的な試合だった。

 2009年のWBCでは、日本と韓国は各ラウンドで何度も対戦し、勝ったり負けたりを繰り返し、決勝戦でも3対3の同点で延長にもつれ込み、最後はイチローのタイムリーで勝利をたぐり寄せるという大接戦を演じている。

 だが、このところ、日韓両国の力の差が開き、日本が優位に立っている。

 あるいは、ラグビーでもかつては日韓両国は激しいバトルを繰り返しており、アジア・ラグビーフットボール大会や1998年のバンコク・アジア大会で日本が敗れたこともあったが、最近の日韓戦では日本が70点、80点を取っての圧勝が続いている。

 どうやら、日本とアジアのライバルの力関係では、多くの球技で日本優位に変わってきているようなのである。

 サッカーでも、中国はJリーグ発足前の1980年代までは日本にとって難敵の一つだったし、ご承知のように韓国は、1980年代までは日本にとって「ライバル」と呼ぶこともはばかられる、大きな「壁」だった。

 1959年のローマオリンピック予選で勝利してから(ただし、1勝1敗で得失点差で敗れた日本はオリンピック出場権を失う)1993年のアメリカ・ワールドカップ予選で勝利するまで、ワールドカップやオリンピック予選で日本は勝利することができなかったのだ。

 当時の日本のサッカー・ファンにとって、日韓戦の勝利こそが最大の喜びであり、「夢」でさえあった。

 そんな時代はもはや過去のもの。最近は韓国相手の試合では、各カテゴリーで3対0といったスコアで日本が勝利することが多くなっている。

■「失われた30年」の間に大躍進

 20世紀末には「世界第2の経済大国」と言われた日本だったが、現在のGDPは世界第4位。いずれ、インドに抜かれて第5位に転落することも間違いない。「失われた30年」と言われるゆえんである。

 だが、スポーツ界ではこの30年間に日本は大躍進を遂げた。

 1995年に野茂英雄がロサンゼルス・ドジャースに入団して活躍したが、当時は「打者では日本人は成功しない」と思われていた。だが、その後イチローや松井秀喜がバッターとしても成功。そして今では、大谷翔平が各種のタイトルを独占。世界一のベースボール・プレーヤーの1人となっている。

 サッカーでも、ブラジル帰りの三浦知良(カズ)がイタリア・セリエAのジェノアに移籍したのが1994年。中田英寿がペルージャで旋風を巻き起こしたのが1998年だった。

 だが、今ではヨーロッパのトップリーグで活躍する日本人選手は数知れず、UEFAチャンピオンズリーグでも何人もの選手がプレーするようになった。

 最近の30年間の日本のスポーツ界は、「失われた30年」どころか、まさに「躍進の30年間」だった。

 バスケットボールでも、今では複数の選手がNBAでプレーしているし、プロ化が成功した競技では日本の躍進ぶりは目を見張る。いわゆるアマチュア・スポーツでも、オリンピックでのメダル数は大会毎に右肩上がりだ。

 こうして、アジア相手の試合では楽しめない時代になってしまったのである。アジア最終予選では、寂しいことに、もはや緊迫感はいっさい味わえないのである。

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