約4万人を収容する台北ドームのほぼすべてがチャイニーズタイペイのファンで埋め尽くされたなか、侍ジャパンは3対1で勝利して3連勝。第3回プレミア12のグループBの"全勝対決"を制し、東京でのスーパーラウンド進出に向けて大きく前進した。 先発…
約4万人を収容する台北ドームのほぼすべてがチャイニーズタイペイのファンで埋め尽くされたなか、侍ジャパンは3対1で勝利して3連勝。第3回プレミア12のグループBの"全勝対決"を制し、東京でのスーパーラウンド進出に向けて大きく前進した。
先発の才木浩人(阪神)が「チャイニーズタイペイの応援がすごく、最初は少し力んでしまいました」と振り返ったように、試合は異様なムードのなかで行なわれた。
チャイニーズタイペイの打者が四球を選んだり、大きなファウルを放ったりするたびにスタンドの360度から大歓声が上がり、ヒットを放てば割れんばかりの拍手が起こる。2階のスタンドにある記者席が揺れるほどの爆音だった。
完全アウェーのなか、台湾を下し3連勝を飾った侍ジャパン
photo by Sankei Visual
【ノーヒットで先制点】
まさに"完全アウェー"。そのなかで侍ジャパンを快勝に導いた立役者は、先発の才木だ。150キロ台でスピンの効いた速球と落差の大きなフォークを中心に6回途中まで被安打3、無失点、5奪三振と圧巻のピッチングを披露した一方、後押ししたのは日本らしい攻撃だった。今大会で初先発した源田壮亮(西武)が振り返る。
「『スキのない野球をして、逆に相手のスキを突こう』というのはコーチ陣からずっと言われていることです。今日も向こうの初回の守備のミスから先制できました。そういうところで点を取っていけたのでよかったかなと思います」
1回表、桑原将志(DeNA)のサードゴロに相手がうまくバウンドを合わせられずにエラーで出塁。つづく小園海斗(広島)がフルカウントから四球を選ぶと、3番・辰己涼介(楽天)のファーストゴロでランナー一、三塁となった。
打席に向かうのは、好調を維持する4番・森下翔太(阪神)。
「才木さんが簡単に点を取られることはないと思っていたので、なおさら先制点が大切なんだと思いました」
1ボール2ストライクに追い込まれたあとの3球目、外角のストレートを「コースに逆らわず」にライトへ犠牲フライを放ち、貴重な先制点をもたらせた。
「打点にはすごくこだわってプレーしてきましたし、自分がここ(日本代表)に呼ばれたのはそういうところの役割がしっかりできてこそだと思うので。ヒットが出ない時でもこうやって先制点が取れたことは、次につながるかなと思います」
ノーヒットでの得点は、「スキのない野球」を掲げる侍ジャパンにとってまさに格好の形だった。
3回には二死三塁から3番・辰己が左中間にタイムリー二塁打を放ち、1点を加える。「自分のスイングができたと思います」。辰己はオーストラリアとの初戦でも初回にレフトへの犠牲フライを放ったが、またしても逆方向への打撃で得点につなげた。
2点リードの4回には一死から7番・源田がライトに本塁打。侍ジャパンでの記念すべき1号となった。
「本当にたまたまです。展開的にも(追加点が欲しい)というところで、1本出たのでよかったと思います」
そう振り返った源田だが、1打席目の反省を生かしての一打だった。
「(1打席目は)真っすぐでどんどん押してきている感じを受けたので、次の打席はそこを仕留めたいな、打ち損じたくないなっていうのはありながら打席に行きました」
そうして2球目、真ん中に甘く入った142キロのストレートを確実に仕留めたのは見事だったが、じつはその前の初球でも源田らしいアプローチが見られた。セーフティーバントを仕掛けようとしたのだ。
「コースによってはしようかなと思いましたけど、ちょっとバントが難しいところに来たのでやめました」
外角寄りのストレートが来たので見逃し、次の球をスタンドに運んだわけだ。チーム最年長の源田は自分の役割を認識しつつ、甘い球を見逃さなかったのはさすがだった。
【最大の武器は投手力】
4回までに3点を奪った侍ジャパンは完全アウェーのなかで終始優位に試合を進め、追加点こそ挙げられなかったものの、相手の反撃はソロ本塁打による1点のみに抑えて逃げ切り。危なげない試合運びだった。
これで開幕から3連勝となったが、日本の強さはどこにあるのか。3試合を終えて打率.556と絶好調の4番・森下はこう話した。
「やっぱり投手力の高さですね。相手に攻略されない投手陣だと思うので。そこで野手がなんとか先制点だったり、中押し点だったりが取れれば、日本の有利な条件に持っていけるかなと思う。自分としては先制点と、ピッチャーがあまり大量失点しないところが日本の強さかなと思います」
大会前から言われていたように、日本の最大の武器は投手力だ。ハイレベルの先発陣が試合をつくり、速球派揃いの中継ぎ陣がつないで、最後は大勢(巨人)が締める。早くも勝利への形が固まりつつある。
さらに攻撃陣は、ここまで3試合のうち2試合で初回に先制。足を絡めてチャンスメイクし、タイムリーが出なくても得点を奪う。個々が試合の流れや展開を読み、自らの役割に徹していけることがチームとしての強みだ。
台湾ラウンドの残り2試合は17日にキューバ、18日のドミニカ共和国と対戦。「スキのない野球」を掲げる侍ジャパンは、大会連覇に向かっていい形を整えている。