サッカー日本代表が快勝した。インドネシア代表とW杯アジア3次予選を戦い、アウェイで4-0で勝利したのだ。その内容と結果…

 サッカー日本代表が快勝した。インドネシア代表とW杯アジア3次予選を戦い、アウェイで4-0で勝利したのだ。その内容と結果は、どのような意味を持ち、そして、代表チームの血肉になったのか。今後、待ち受ける中国戦の展望も含めて、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が語り合った。

■「危なかった」2つの場面

――欧州育ちの選手が多く、試合前から要注意といわれていたインドネシアとの試合でしたが、終わってみれば快勝でした。

大住「開始10分くらいに危ない場面があったけど、GKの鈴木彩艶が本当に落ち着いて処理をした。成長を感じたね。もし、あれが入っていたら、相手も勢いに乗って、もっと試合は難しくなっていたよね。インドネシアの前線の選手はスペースにガンガン走って、そこに長いボールが入ると、観客がワーッと盛り上がるから、見ている以上にピンチなのかなと思わせられる面もあったけど、開始10分以外にも、序盤、2つくらい危ない場面があったよね」

後藤「あの場面は、相手のロングボールがバウンドして方向が変わったのかな。芝の状態はどうだったんですか(大住氏は、現地インドネシアで試合を観戦)」

大住「かなり短く刈ってあって、きれいに見えるんだけど、すぐにボコボコになっていましたよ」

後藤「軟らかそうな土に、芝が根づかず、乗っているだけのような感じでしたね」

大住「雨の影響は大きかったような気がする。キックオフの20分前、ウォームアップが終わると降り出して、一気に大雨になった。試合が始まってから、名波浩コーチが盛んに指示を出して、ピッチ上でのやり方を統一したようだけど。雨が降っている間は攻められないけど、ボールだけはキープしている感じだった。雨がやんだのは前半の32分で、その2分後に先制点が入ったんだよね。あの雨があと30分続いたら、もっとグラウンド状態が悪くなって、大変だったと思う」

■超有名人ゆえの「苦労」も

後藤「一番の敵は雨と芝生だったよね。ただ、相手のインドネシア代表も、オランダで生まれ育った選手が多いから、インドネシアのああいう気候や芝生に慣れているわけじゃないだろうけど」

大住「そうだね。だけど日本は、インドネシアのサッカー自体にも、序盤は苦労していたよ。スペースに長いボールを蹴って選手を走らせるんだけど、特に右サイドのヤコブ・サユリという選手がすごく速くて、三笘薫町田浩樹は苦労していた」

後藤「これまでのチームのように、三笘に2人マークをつけて抑え込もうというのではなく、三笘に守備をさせようとして、日本の左サイドから攻めようとしていた。そういう積極的な仕掛けをしてきたのだから、インドネシアは良いチームだったよね。実際に一度、そちらのサイドを完全に崩されたしね」

大住「三笘はインドネシアでも超有名人なんだよ。世界中のどこでもプレミアリーグは見られているから、三笘に何ができるか、彼らの中でイメージができあがっているんだろうね。相手は対策を考えて、その狙いがある程度うまくいきかけていた。だから、開始15分くらいまでは、少し危なかった」

後藤「堂安律が上げたクロスを小川航基がヘディングで合わせたのが18分のこと。あそこから流れが変わったかな。だから、その場面までに彩艶がちゃんと仕事をしてくれたのは大きかった」

■W杯優勝に「必要な存在」

大住「以前の彩艶だったら、焦って飛び込んだりしていたかもしれないけど、しっかり地に足をつけて構えていた。たいしたもんだよね」

後藤「この3次予選はこれまで、ほとんど仕事をする場面がなかったけどね」

大住「ようやく力を見せる場面が来た、ってところかな」

後藤「一度、空中戦で競り合って、キャッチしきれなかった場面があったけど、まあ良い仕事をしたと言えるよね」

大住「CKの守備が連続する場面もあったけど、やはり高い球には強いよね」

後藤「アジアカップでは、どうして彩艶を使い続けるんだという声があったけど、今になってみれば、あの起用が良かったよね」

大住「次のワールドカップで優勝しようというなら、あのくらいのGKがいないとね」

後藤「森保一監督は保守的で、同じメンバーばかり使うと批判する人がいるけど、あそこで勇気を持って彩艶でいくんだと起用を続けたことは評価すべきだよね」

大住「僕らも意図は分かっていたんだけど、それをやり続ける肝の据わり方というのは大したものだよね」

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