『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(15)Astemoリヴァーレ茨城 雑賀恵斗(連載14:Astemoリヴァーレ茨城の長内美和子が語る中心選手としての覚悟 落ち込んだときの支えは田中龍之介の言葉>>)(c)古舘春一/集英社「セッターは…
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(15)
Astemoリヴァーレ茨城 雑賀恵斗
(連載14:Astemoリヴァーレ茨城の長内美和子が語る中心選手としての覚悟 落ち込んだときの支えは田中龍之介の言葉>>)
(c)古舘春一/集英社
「セッターは、アタッカーが打ちやすいトスをあげるのが大事。トスを振って、ブロックを分散させる。そういうトス回しが理想ですね。ミドルを生かせてこそサイド(からの攻撃が有効)、とイメージしながらやっています」
雑賀恵斗はそう語った後、少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。能弁な自分に照れているのか、素直な印象の持ち主だ。
気づいた時には、バレーが身近にあったという。母親がママさんバレーをやっていた影響が強く、外から眺めて楽しそうに映った。
「私は最初からセッターではなく、スパイカーもやっていました。スパイクは楽しくて、日本代表でも活躍したスパイカーの長岡(望悠)さんが同じ左利きで、『格好いいな』と思っていたので。ボールをつないで、みんなで点を取るのが楽しかった。得点のたび、みんなでワーッて喜ぶのも」
雑賀は"共同作業"に幸せを感じた。思いがひとつになる。その瞬間がたまらなかった。
中学ではセッター、スパイカーをかわるがわるやっていたが、高校1年でセッターに指名された。最初は「一番難しいポジション」と聞かされていて、ためらったという。しかし、自分のトスで試合が決まる瞬間はなんとも言えない喜びがあり、居場所をつかんだ気がした。
「セッターは面白いけど難しいです。この世界(SVリーグ)に入って、より強く感じますね。高校の時は考えたこともなかったデータを使いますし。『相手がこう来るから、こう攻めよう』と」
彼女は感覚を研ぎ澄まし、考察する。セッターのハンドリングは、それぞれの選手によって個性がある。それはほとんど生来的に備わっているもので、彼女は彼女のハンドリングを磨く。
「ハンドリングは人によります。他の選手を見て『上手だな』と思っても、それを取り入れるのは難しい。私のハンドリングについてですか? 自分ではなんとも言えないですけど、『柔らかくしよう』とは思っています。でも......強いかも(笑)。いい時のトスは、初速は速いけどピュッと止まる感じで、スパイカーが気持ちよく打てるんです」
理想に近づくためのトレーニングも欠かさない。コーチにボールを出してもらい、オーバーハンドパスでカゴに入れる。個人練習にも励む。彼女のような左利きのセッターは少なく、それは意外性につながり、アドバンテージになる。ツーアタックは得意技のひとつだ。
「(昨シーズンは)メンタルの波があったので、(パスを)安定させてシーズンを過ごしたいです。チームとしても、ファイナルに進むには安定した試合が必要。昨シーズンまで3年連続で7位と、あと一歩でファイナルに進めなかったので、今年こそはと思います」
そう言った彼女は、新たな戦いに挑む。
「子供の頃はあまり考えていなかったはずですけど、小6の時に将来の夢の作文で『Vリーグに入ってバレーボール選手になる』って書いていたんです。一応、それは叶えられたんだなって」
彼女の人生は、今の居場所につながっているのだ。
【雑賀が語る『ハイキュー‼』の魅力】
――『ハイキュー‼』、作品の魅力は?
「中学でハマりました。バレーのことを細かく描いているし、めっちゃリアル。選手もかっこいいです(笑)」
――共感、学んだことは?
「最初、影山(飛雄)が『王様』って言われていて、トスを上げたのにみんながついてこない場面があるじゃないですか。それを読みながら、『自分の意志は大事だけど、セッターはスパイカーの気持ちを汲み取ってこそだな』って。一番上に立ってはいけないポジションですが、『その気持ちもわかるよ』ってなりました」
――印象に残った名言は?
「東峰(旭)さんが弱気だったのに、『託されたボール、打ち切ってこそエース』ってなるシーンはいいですね。あと、ノヤっさん(西谷夕)の『背中は俺が護ってやるぜ』、烏養(繋心)コーチの『バレーは!!! 常に上を向くスポーツだ』とかもいいし、たくさんありますね」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「迷いますけど、1位が稲荷崎の宮侑。双子のセッター、金髪のほうです。2位が青葉城西の及川(徹)さん。どちらも『俺のトスを打て』って感じがいいです。自分はセッターとして、そこまではなれないですけど(笑)。3位は音駒のクロ(黒尾鉄朗)ですかね」
――ベストゲームは?
「烏野vs白鳥沢学園戦です。絶対エースのウシワカ(牛島若利)を倒す展開はやっぱり面白いです。他の選手のキャラも強くて、両チームとも物語がいいんですよね。月島(蛍)がウシワカを一本止めたシーンも、めちゃくちゃかっこよかったです!」
【プロフィール】
雑賀恵斗(さいが・けいと)
Astemoリヴァーレ茨城
2002年1月15日生まれ、千葉県出身。167cm・セッター。小学3年の時にバレーボールを始める。中学まではセッターとスパイカーの両方でプレーしたが、市立船橋高校時代はセッターに専念。春高バレーにも出場した。2020年にAstemoリヴァーレ茨城に入団した。