最速145キロのはずが…“選手顔負け”の151キロに場内どよめき 5年間抱えた思いと、決着をつける――。ロッテを2019年に戦力外となり、引退していた島孝明氏が14日、ZOZOマリンスタジアムで行われた12球団合同トライアウトに参加した。引…

最速145キロのはずが…“選手顔負け”の151キロに場内どよめき

 5年間抱えた思いと、決着をつける――。ロッテを2019年に戦力外となり、引退していた島孝明氏が14日、ZOZOマリンスタジアムで行われた12球団合同トライアウトに参加した。引退から5年後という異例の参加。決してプロ復帰が目標ではない。秘めた思いを晴らしたマウンドだった。

 古巣の本拠地に、久々に帰ってきた。登板順は“最後の最後”。朝から球場入りし、気持ちと体を整えた。今季までロッテでプレーした選手も多く参加するなか、1人だけ肩に赤いラインが入った2019年当時のロッテのウエアを着用。「タンスに眠っていたので、懐かしいなと思いながら」。引退時より体重は5キロ落ちたが、ユニホームパンツを履いた下半身は分厚いままだった。

 高校時代にはU-18にも選ばれ、今井達也投手(西武)、早川隆久(楽天)らとアジア選手権優勝に貢献。153キロ右腕としてドラフト3位でプロ入りしたが、1年目にイップスに陥り、3年で戦力外に。「現役時代、最後マウンドで投げられずに引退したこともあって……」。野球を辞めた後も、心にはモヤモヤが残っていた。

打者は抑えられずも…納得の14球「悔いはない」

 現在は慶大大学院の学生で、友人の研究を手伝う中で、今年に入ってから慶大野球部の選手相手に頻繁に投球。10月にトライアウトが今回で最後になることを聞き、「悔いのない人生を送りたい」と参加を決断した。

「投げられるようになった姿を皆さんに見せれたら、ひとつ恩返しになるんじゃないかなと。応援してくれるファンもたくさんいたし、そういう人たちに向けてアクションを取りたいと思っていた」。2019年のオープン戦以来となるZOZOマリンスタジアムのマウンドにあがった。

 ワインドアップから投じるボールは力強かった。登板前には「145キロがマックスです」と話していたが、打者と対峙するとアドレナリン全開で、球速がどんどん上昇。高校3年時の自己最速153キロに迫る151キロをマークした。「ビックリですね……現役時代も140後半がベストくらいだったので」。

 島氏の名前がコールされると、場内のファンからは大きな拍手が送られた。スタンドには現役時代のサイン入りユニホームやタオルを掲げるファンの姿も。現役時代に見せられなかった姿を、5年越しに見せることができた。打者2人に対しては四球と右前打という結果だったが「自分なりのベストは尽くせたので、一通り自分の目標は達成できた。悔いはないですね」と白い歯を見せた。打者を抑えられなくてもいい。自分の人生には、とても大事な14球だった。(上野明洸 / Akihiro Ueno)