かつては井上の“ライバル”と見られたカシメロ。しかし、当時の輝きは日に日に失われている。(C)Getty Images身から出た錆な現況 かつての“悪童”の状況はかくも厳しい。ボクシングの元世…

 

かつては井上の“ライバル”と見られたカシメロ。しかし、当時の輝きは日に日に失われている。(C)Getty Images

 

身から出た錆な現況

 かつての“悪童”の状況はかくも厳しい。ボクシングの元世界3階級制覇王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)は、国内メディアからも見放されつつある。

 もっとも、現況はまさに身から出た錆。自身の蛮行の数々が招いた必然的な状況ではある。

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 一時は現スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)の対戦も期待されたカシメロ。だが、2020年から2度の規律違反を犯し、当時に保持していたWBOバンタム級のタイトルを剥奪されると、22年にスーパーバンタム級に転級。

 以降は4戦無敗(1ドロー)と実力を示してはいたが、今年10月に横浜武道館で開催されたWBO世界バンタム級8位サウル・サンチェス(米国)とのスーパーバンタム級10回戦に向けた前日計量の1度目の計測で1キロの体重超過が判明。2時間後に実施された2回目も600gオーバーとなり、日本ボクシングコミッション(JBC)から「1年間招聘禁止」処分を科された。

 当日計量クリアで開催という異例のルールの下で行われたサンチェス戦を1回TKOで制した当人は「自分には、計量なんて関係ない」とスキャンダルにも悪びれずに豪語。さらにリング上で「イノウエ、カモン!」と絶叫した。だが、本人のやる気とは裏腹に周囲のしらけムードは拭いきれない。

 母国内でも逆風は強まる一方だ。フィリピンの日刊紙『Daily Tribune』のニック・ジョンコ記者は「最近のカシメロのふざけた態度は、ナオヤ・イノウエの代理人を務める『Top Rank』のようなトッププロモーターにとって、フィリピン人選手の扱い方を考え直させるキッカケとなっている」と指摘。35歳になっても蛮行を繰り返すカシメロの行く末に懸念を記した。

 さらにジョンコ記者は井上との将来的な対戦の可能性を「ノーだ。それはない」とする『Top Rank』のカール・モレッティ副社長のコメントを紹介。その上で「公式計量で2度も体重を守れなかったことで、そのプロ意識に関する疑問が浮上した」と、試合成立もままならないカシメロへの疑問を投げかけた。

「カシメロはボクシングというスポーツよりも偉大ではない」

 また、フィリピンの放送局『ABS-CBN』のボクシング・アナリストを務めるエド・トレンティーノ氏は、JBCによるカシメロへの処分を「正義は果たされた」と断言。今回の処分がキャリアにいかなる影響を及ぼすかを読み解いている。

「JBCの処分によってカシメロは注目される人となったが、それは良い意味ではない。日本での出場禁止処分は、カシメロが体重管理に関する深刻な問題を抱えており、どのプロモーションにとってもリスクがあることを諸外国に通告したようなものだ」

 さらに「カシメロはボクシングというスポーツよりも偉大ではない。JBCの処分は、ルールの上に立つボクサーはいないことを示した厳格かつ正しいものだ」と評したトレンティーノ氏は、こう続けている。

「カシメロはすでに35歳で、ボクシング界的には衰えが出てきてもおかしくない年だ。そんな彼には間違いなく体重を監視できるコンディショニングコーチが必要だ。そしてプロボクサーとして当たり前の行動をし、体重制限を守ることに全力を尽くすべきだ」

 当たり前のことを、当たり前にこなす。それはプロフェッショナルの大前提。そこをこなせない以上、どれだけ井上の名を叫ぼうと、カシメロが一線級に返り咲く日は訪れないだろう。それほど今のカシメロが置かれた立場は厳しいものとなっている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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