今年のJ1リーグも残すところ、あと2試合となった。だが、例年通りの混戦で、優勝の行方はまだまだ分からない。なぜ毎年のように混戦となるのか。また、頂点に立つチームはどこか。サッカージャーナリスト後藤健生が第36節の結果を踏まえ、今シーズンの…

 今年のJ1リーグも残すところ、あと2試合となった。だが、例年通りの混戦で、優勝の行方はまだまだ分からない。なぜ毎年のように混戦となるのか。また、頂点に立つチームはどこか。サッカージャーナリスト後藤健生が第36節の結果を踏まえ、今シーズンの「行方」を読み解く!

■第36節は「意外な展開」の連続

 これまで、何度も見てきた光景が繰り返されそうだ。J1リーグの優勝争いの話である。

 第35節終了時点で、首位のヴィッセル神戸が勝点67。勝点2の差でサンフレッチェ広島が追っており、今シーズン、ずっと首位を走っていたFC町田ゼルビアは、9月14日の第30節でアビスパ福岡に勝利して以来、リーグ戦で未勝利(2分3敗)。前節には、すでにJ2降格が決まっていたサガン鳥栖にも敗れて、首位の神戸とは勝点7の差をつけられて優勝争いから脱落したかと思われていた。

 ところが、第36節は意外な展開の連続となった。

 11月9日の土曜日に町田がFC東京に3対0と快勝。翌日は14時キックオフの東京ヴェルディ対神戸の試合で、神戸が前半の7分にセットプレーのこぼれ球をDFの山川哲史が蹴り込んで早々にリード。神戸が勝利すれば、町田の逆転優勝の可能性は数字的にも断たれることになる。

 1時間遅れの15時に始まった浦和レッズ対広島の試合は、開始直後から広島が浦和陣内に押し込んでチャンスの山を築いていた。広島は、前半だけで14本ものシュートを放ち、浦和を自陣ゴール前にくぎづけにしていた。

 第35節までで66ゴールと、今シーズンの最多得点を決めている広島の攻撃力が炸裂した……ようにみえた。

■順当だった「重量級同士」の争い

 浦和のGK西川周作が再三ビッグセーブを見せて広島の得点を阻み続けたが、「この勢いなら、いつかは得点できる」と誰もが思っていた。

 神戸が逃げ切って勝利し、広島が得点を決めて勝利すれば、2024年シーズンのJ1リーグの優勝争いは完全に神戸と広島に絞られる。

 昨シーズンのチャンピオンである神戸と、2年連続3位の広島……。現在のJ1リーグの2強といってもいい両チームだ。その重量級同士の優勝争いは順当なものだし、最後の2節も大いに楽しめると思っていた。

 ところが、味の素スタジアムでは守りに入った神戸に対して、今シーズン大躍進の東京Vが真っ向から反撃を仕掛け、後半アディショナルタイム(90+1分)には山見大登が入れたシュート性のクロスがマテウス・トゥーレルに当たってオウンゴールとなって、神戸は勝点2を失った。

 そうなると、広島が浦和相手に勝利すれば、勝点で並んで、得失点差で上回る広島が首位に返り咲き、「同勝点での優勝争い」という願ってもない形になるはずだった。

 ところが、猛攻を仕掛ける広島はどうしてもゴールを決められず、前半終了間際の45分に浦和の関根貴大が入れたロングボールを追った松尾佑介が広島の中野就斗と入れ替わるようにフリーになり、最後は落ち着いて決めて浦和が1点リードした状態でハーフタイムを迎えることになった。

■前半は「一方的な試合」だった

 しかし、この時点でも広島有利は変わらないかと思えた。それほど、前半は広島の一方的な試合だったからだ(まるで、アジア予選で戦う日本代表のようだった!)。

 浦和はパスの展開が遅く、ボールを止めてから、次のパスを出す間に時間がかかった。そこに、広島がハイプレスをかけてボールを奪って、アップテンポな攻撃を仕掛けた。ボールを奪って前の選手に預けると、後方の選手がどんどん追い抜いていく。そうした、集団的な攻撃がこのチームの持ち味だが、テンポの遅い浦和のプレーが広島の良さを引き出していた。

 後半も、このままのペースでいけば広島が逆転するのは、それほど難しいことではない……。スタンドで見ている僕はそう感じていた。

 ところが、ピッチ上で戦っている広島の選手たちの気持ちは違っていたようだった。

 まだ焦る必要はないのに、広島の選手は平常心を失っていた。そして、恐がっていた。

 前半、あれほど効果的だったハイプレスは影を潜め、逆に浦和の選手たちが広島ゴールに襲い掛かった。広島のGKの大迫敬介も浦和の西川に対抗して好セーブを連発して関根や渡辺凌磨、ブライアン・リンセンのシュートを防いでいたが、54分、松尾のクロスにリンセンが頭で合わせて、浦和は2点目を挙げた。

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