【GPシリーズで昨季のリベンジ】 19歳の千葉百音(木下アカデミー)はGPシリーズ2シーズン目。初参戦だった昨季は、体調不良もありスケートアメリカ6位、フランス杯9位と苦しんだ。 今季は11月のNHK杯と中国杯に出場。その初戦であるNHK杯…

【GPシリーズで昨季のリベンジ】

 19歳の千葉百音(木下アカデミー)はGPシリーズ2シーズン目。初参戦だった昨季は、体調不良もありスケートアメリカ6位、フランス杯9位と苦しんだ。

 今季は11月のNHK杯と中国杯に出場。その初戦であるNHK杯は、彼女らしいのびのびとした滑りを見せた。



NHK杯で2位になり初の表彰台に乗った千葉百音

 9月のチャレンジャーシリーズ・ネーベルホルン杯はショートプログラム(SP)、フリーともにジャンプのミスが重なり、合計193.37点で4位だった。伸び悩んだ原因は、8月に痛めた右足甲のケガだった。

「ネーベルホルン杯の頃には痛みは収まっていましたが、ジャンプを全開で練習している感じではなかったです。状態が悪いなかで追い込みきれずに臨んで、本番になって強い不安に駆られたりしたことが敗因だと思います」

 そう振り返った千葉は、その後1カ月ほどでケガも完治し、練習もしっかり積んだ。

「昨シーズンのGPシリーズは2大会とも納得のいく演技ができなくて悔しかったので、今年こそはしっかり、自分がやりきったと思えるような演技がしたいです」

【「やるしかない」足にグッと力を込めて】

 11月8日、NHK杯SPは、千葉が「曲に負けないように思いきりはっちゃけて、底抜けに明るい雰囲気を見せたい」と話していた『Last Dance』。

「ネーベルホルン杯の二の舞になるのではないかとヒヤヒヤしてネガティブな感情になることも多かったけど、去年のGPシリーズで悔しい思いをした分、もう二度と同じ過ちはおかさないと誓って。

 ジャンプは以前よりも筋力がつき、滞空時間が本当に少しだけ伸びてタイミングがわかりづらくなって苦戦していて、6分間練習でも完璧に自分が気に入るジャンプではなかったんですけど......。本番で緊張に襲われそうになって演技の出だしはスケーティングも少し硬かったけど、最初の3回転ルッツ+3回転トーループは『やるしかない』と思い、足にグッと力を込めて跳べたのがよかったかなと思います」

 滑り自体は、伸びのあるスケーティングが全開という感じではなく、冒頭の3回転ルッツは「ノット・クリア・エッジ」の判定でGOE(出来ばえ点)加点は伸びなかった。それでもスピンとステップはすべてレベル4にして加点を稼ぎ、優勝した昨季の四大陸選手権でマークした自己最高得点を上回る71.69点を獲得。坂本花織に次ぐ2位スタートとなった。

 好発進ではあったが、千葉は「まだ半分が終わったわけではなく、本当の順位が決まるフリーが本番」と気を引き締めていた。

【GPシリーズ初表彰台にも冷静】

 翌9日のフリーは、最初から彼女の持ち味である伸びのある滑りが存分に発揮されていた。SPとフリーの違いを本人はこう話す。

「演技前は緊張に押しつぶされそうで、ジャンプを跳び続けたりしてなんとか持ちこたえようとしている感じでした。演技中も一歩一歩を丁寧に。スケーティングを大きく滑ったほうが演技構成点も出るし、自分的にもジャンプの構えもそのほうがきれいに決まるので、全体的に滑りを大きくすることを意識しながら滑れたかなと思います」

 ただ、ジャンプ自体は冒頭の連続ジャンプの3回転フリップと、最後の単発の3回転フリップが4分の1の回転不足と判定され、後半の3連続ジャンプの3回転ルッツは回転不足のうえ「ノット・クリア・エッジ」となり、GOE加点を積み重ねられなかった。

 それでもフリーの得点は、昨季の四大陸選手権以来の140点台となる、セカンドベストの140.85点。合計は212.54点とし、坂本に次ぐ2位を確定させた。千葉はこの結果を冷静に受け止める。

「自分ができるベストな演技が今のコンディションのなかで出しきれたかなと思うけど、やっぱりまだ演技が終わった直後もガッツポーズがすぐに出るようなうれしさはない。自分のなかで『あそこはもっとああすればよかった』という反省点のほうが多く、もっとよくできるというところがたくさん見つかったと思います。

 NHK杯でいいイメージのショートとフリーをそろえなくてはいけないと強く感じていたので、今回はネーベルホルン杯の時と同じようにすごく緊張しましたが、そのなかでちゃんと足に力を入れてジャンプを跳べたというのを大きな自信につなげたいです。緊張のなかで力を出しきれたという自信は、昨季の全日本選手権や四大陸選手権でも経験はしていましたが、今シーズンは曲が変わり感覚も少し変わったなか、もう一度成功のイメージをつくり上げることを重要視していきたいので、今大会でいい流れに持っていく経験が積めたのはよかったです」

【4回転トーループも完成間近】

 千葉がここまで冷静なのは、中1週間のスケジュールで中国杯を控えているからだ。そこにはフランス杯1位で212.89点を持つアンバー・グレン(アメリカ)やスケートアメリカ2位の渡辺倫果(三和建装/法大)、フランス杯2位の住吉りをん(オリエンタルバイオ/明治大)というGPファイナル進出を狙う選手も出場し、厳しい戦いが予想される。

 中国杯に向けて千葉は、「GPファイナルや順位は気にせず、とりあえず自分のいける一番高いところまで頑張っていってみて、その結果、GPファイナルに進めたらいいなくらいの気持ちで。とにかく自分のやるべきことに集中してショートとフリーをノーミスでそろえられたらと思います」

 常に「目指すのはもっと上」と口にする千葉。そのために今季は4回転トーループも重点的に練習をしている。

「まだプログラムに入れた練習はしていないですが、単発での練習では昨年よりもさらに惜しいジャンプができているなという状態です」

 次のステージにいくためにも、今はこれまでの構成でどこまで上にいけるかが課題だ。GPファイナル進出の経験も重要だろう。今回の自身2回目の210点台は、ライバルたちに強いインパクトを与え、千葉本人にとっても大きな収穫だった。