◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(10日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)◇曇り(観衆8549人)「Stay hungry, Stay foolish(貪欲で、愚か者であれ)」。19歳でアマ…

来年1月から新たなステージに進むアマチュアの本大志

◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日(10日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)◇曇り(観衆8549人)

「Stay hungry, Stay foolish(貪欲で、愚か者であれ)」。19歳でアマチュアの本大志が、故スティーブ・ジョブズ氏の名言であるフレーズを暗唱したのは第2ラウンドのプレー中だった。18位で迎えた2日目に「76」とスコアを崩すなか、英語の勉強として書き留めた一文は心を支えた言葉でもある。2022年以来2度目の大会挑戦は、4日間を戦って52位。「悔しいけど、まだチャンスはある」。年明けから踏み出す新ステージに向けて、いまはとにかくがむしゃらにならなければ。

ことしの春に目黒日本大学高を卒業し、来年1月の米アリゾナ大への入学を控えてゴルフと英語の猛特訓中。高校在学中の22年に「IMGA世界ジュニア」15-18歳の部で優勝したことをきっかけに、大学コーチから声がかかった。ジム・フューリックアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)を輩出した名門校は、ゴルフだけでなく学力も高いレベルが求められる。

「みんなから聞いていたけど、勉強がめっちゃ大変」。入学して、ゴルフ部の一員としてプレーするには英検準1級相当のスキルが必要になる。いまのレベルは「入国審査で、何しに来たかくらいは言えます(笑)」。今週も試合を終えて、練習をして、宿に帰れば英語の勉強。「どんだけ勉強してるんだ…」とパンクしそうな頭を抱える日々だが、日本の大学ではなく海外留学を選んだことに後悔はない。

めっちゃ大変だけど、頑張ります!

「行けるチャンスがあるなら、行ったほうが良い。世界は全部アメリカに向いているから、あそこで差を感じてくることが大事」。そう背中を押してくれたのは、ツアー通算19勝の谷原秀人だった。谷原との初対面は2020年「日本オープン」の練習ラウンド。当時中学3年だった本は米澤蓮中島啓太らと同じブロックから最終予選を通って出場を決め、もともと練習場が同じだった谷原に「練習ラウンド、一緒に良いいですか?」と思い切って声をかけた。

本大会の前週も「アプローチを教えてください!」とプライベートでラウンド。「中3の頃からしたら、球も飛ぶようになってキャリー300ydは平気で行く」という成長中の19歳を、谷原も応援している。

日本の大学と進路を迷ったとき、周囲からは「勉強が大変だから無理だよ」と心配する声もあった。先のジョブズ氏の言葉には、「現状に満足して歩みを止めず、多数派に反してでも自分の心に従うこと」。そんな意味が込められていると言う。「谷原さんや、海外に行った人は背中を押してくれた。どこまでできるか分からないけど、挑戦するべきかなって」。意志を持った“愚か者”ほど、この世界で強くなれる。(静岡県御殿場市/谷口愛純)