今季の川崎フロンターレは、リードしながら同点や逆転とされる試合数が「12」あった。緩さが覗いた場面もあれば、不運に見え…
今季の川崎フロンターレは、リードしながら同点や逆転とされる試合数が「12」あった。緩さが覗いた場面もあれば、不運に見えたものもある。
京都サンガF.C.戦は、ホームチームがしっかりと作ったチャンスもあったものの、PKの場面に限れば川崎の選手やスタッフ、サポーターとしては悔しい要素も大きかったのではないか。GKチョン・ソンリョンのPKセーブでファールをしてしまったことも含め、“運がなかった”とつい言いたくなってしまう試合である。
試合後の三浦颯太に「外から見ていれば不運だったと言いたくなる試合にも感じられた」と率直に言葉をかけると、「そういう見え方もしなくはないというか……」とは言ったものの、「でも」と、以下の言葉を続ける。
「しっかり試合を見返せば、決め切れる部分がありましたし、最後の最後でゴールライン(際)でクリアされる場面とかがあったんで、あと少しクオリティっていうのを本当に突き詰めれば、もっと楽に試合を進めたのかなと思います」
選手としても、運・不運という要素を排除するために必要なだと考えるのは「質」だという。そして、それによってもたらされる追加点で試合を決めきれる力だ。鬼木達監督が試合後に「あと数試合しかないですが、やり続けるべきところ」と話すものと同じだった。
■「もう少し横の揺さぶりが出てくればよかった」
この試合で川崎フロンターレは前後半で違う戦い方を志向した。前半は裏を狙う回数が多く、それが理由で「行ったり来たりという非常に難しい展開になっていた」(鬼木達監督)。
そこでハーフタイムに3枚の交代カードを切る。遠野大弥、山本悠樹、エリソンを下げて、大島僚太、家長昭博、山田新を入れるというものだ。
「もう少し横の揺さぶりが出てくればよかった」
指揮官がこう話すような、相手を見ながらのサッカーへと重心をより置こうとした。そして、その大島と山田のコンビで先制点を奪いとる。
とはいえ、これは大島が一発で背後を狙ったパスから生まれたもの。実際、京都の米本拓司も、「後半はもうちょっと繋いでくるのかなって思いましたね。交代選手を見た感じだと、大島選手だったり家長選手を入れてきたってことはちょっと落ち着かせたいのかなとは思った」と振り返っており、川崎の狙った展開に持ち込むことはできなかった。
■ACLEの過密日程のスケジュール
川崎は残りのリーグ戦は2.5試合しかない。浦和レッズ戦は後半開始時点からの再開となるため、90分を戦うのは2試合だけだ。その試合でしっかりと先制して勝ち切れるかは、ACLEもあって過密日程の中で行われるトレーニングの中でしか求められない。
しかし、指揮官が「疲労が出ないぐらいの質を求めて」と話すように、シーズン最終盤の疲労もある状況での限られたトレーニング期間では急激な上積みは難しい。
それでも、このチームにはJリーグをけん引してきた元々の「質」がある。選手の入れ替わりは大きいが、移籍してきた選手も加入してきた選手も、それを目指してフロンターレにやってきた。そうした選手がどのような「質」を最後に見せるのか。11月22日、45分間という限られた時間の中で、しかも、1点を追いかける試合の中で、まずはそれを闘志とともに表現するしかない。
(取材・文/中地拓也)