『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(12)日本製鉄堺ブレイザーズ 安井恒介(連載11:「音駒推し」のグリーンウイングス道下ひなのが、ミドルブロッカーで「よっしゃー!」と思う瞬間>>)(c)古舘春一/集英社「チャラチャラして…

『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(12)

日本製鉄堺ブレイザーズ 安井恒介

(連載11:「音駒推し」のグリーンウイングス道下ひなのが、ミドルブロッカーで「よっしゃー!」と思う瞬間>>)



(c)古舘春一/集英社

「チャラチャラしてそう、とは見られますね」

 彼はそう言って、楽しそうに笑う。関西人特有の人懐こさと、ふてぶてしさが同居したようなところがある。

 しかしバレーボールとの向き合い方は真摯で、妥協はない。たとえば、気になったスパイクの動画は何度も何度も巻き戻し、再生し、助走や体の向き、腕の角度などをとことん確認する。

「バレーボールが一番楽しかったのはいつか? 間違いなく、今が一番です」
 
 安井恒介は、そう断言する。

 バレーを始めたのは中学2年の時だった。トッププレーヤーのなかでは遅いほうだろう。もともとサッカーや水泳で有望な選手だったが、どちらも選んでいない。サッカーでは全国まであと一歩のところまでいったが、「自分のせいで負けた」と自責の念に苛まれ、心がついていかなくなったという。

「そんな時に、幼なじみの2人が『一緒にバレーボールやろう』と誘ってきたんです。サッカーのクラブチームと迷ったんですが、ほぼ強引にコートへ連れていかれて。バレーボールはまったくルールを知らなかったですが、ボールを触ると楽しい気がしました。何より、幼なじみが本気でやろうとしていて、"絶対に勝ちたい"というのが伝わってきたので『一緒にやってみるか』と」

 高校は、兵庫県の強豪・市立尼崎高を選択した。同期では一番下手で、ほかの選手たちは何かしらの選抜に選ばれていたが、彼だけは"無印"だった。それでも、全国に行けるチームでバレーボールがしたかったという。案の定、1年時はベンチにも入れず、2年ではリリーフサーバーだったが......。

「レベルが違うのはわかっていたから、"3年間、しっかりやろう"と思っていました」

 安井はそう言うが、ミドルブロッカーとして着実に腕を上げた。

「B戦(練習試合。サブのメンバーで行なう2試合目)はめちゃめちゃ出られて、自分が出場した試合は負けなかったです。サッカーをやっていて、"ボール感覚"みたいなものがあったのかも。ボール拾いをしている時も、ほかのミドルブロッカーがひとり時間差で打っているのを見て、『俺にもできるんじゃないか』って自主練しました。興味のないことはどうでもいいんですが、バレーボールはうまくなりたかったから」

 3年でチームのキャプテンになった時、「日本一」と目標を豪語した。そして2018年のインターハイ決勝で洛南高校を下し、日本一になった。中2からバレーを始めた選手としては快挙だ。

 明治大学を経て昨年に日本製鉄堺ブレイザーズに入団したが、大学でも見せたトップクラスの得点力を買われてアウトサイドヒッターに転向した。

「自分以外のアウトサイドヒッターって、ちっちゃい頃からレフトをやってプレースタイルが完成されているんです。でも、自分はプロに入ってイチからなので、点の取り方や打ち方など、全員が見本。自分で工夫しないとうまくいかなくて、その意味では今が一番楽しい。アウトサイドヒッターのほうが、気持ちの面とか体の疲労とか、明らかしんどいですけどね(笑)」

 SVリーグの目標については、具体的なイメージがある。

「『このチームで優勝したい』とかもありますけど、自分はそういった大雑把な感じはあまり好きじゃなくて。"安井が出るんだったら、勝てねぇよ"って言われる選手になりたいです。常に3枚(ブロックが)来て怖がられるような。バレーボールに関しては気が強いかもしれないです(笑)」

 最後に質問を投げた。

――もし、幼なじみにバレーボールに誘われなかったら?

「やっていないですね。なんとなく、サッカーか水泳をやっていたんじゃないですか」

 彼はそう言って、不敵に笑った。

【安井が語る『ハイキュー!!』の魅力】

――『ハイキュー‼』、作品の魅力とは?

「自分に当てはめて読めるところですね」

――共感、学んだことは?

「王道の盛り上がるシーンは、月島(蛍)が(白鳥沢学園の牛島若利のスパイクを)止めたところでしょうけど、自分は田中(龍之介)が春高の稲荷崎戦でギュンって落ち込んだ後、(『ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるのか』と)気持ちを奮い立たせて自分のプレーを取り戻すところが好きですね。それがバレーボールの理想。試合中もずっと調子がいいわけじゃないですし、悪い状況からどうやって戻すか。自分もコーチから、『悪いなかで試合中に修正するのも大事』と言われているし、そこは共感します」

――印象に残った名言は?

「名言はあまり気にしないんですけど......。(梟谷学園の)セッターの赤葦(京治)がエースを信じ切って『オイシイところはくれてやる だから さっさと復活しろ エース!!!』と言う感じが好きですね。アウトサイドヒッターをやっていると、セッターとの信頼関係の大事さをより感じるので」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「(音駒の)クロ(黒尾)はかっこいいから1位で。2位は赤葦。3位はプレーだけ見たら、賢さがある井闥山学院の佐久早(聖臣)ですが、あれだけ頼られる選手はいないという意味で、ウシワカ(牛島)にします!」

(連載13:日本製鉄堺ブレイザーズ上村琉乃介は劣勢でこそ燃える 日向翔陽のように「戦える選手になりたい」>>)

【プロフィール】

安井恒介(やすい・こうすけ)

所属:日本製鉄堺ブレイザーズ

2000年12月8日生まれ、大阪府出身。189cm・アウトサイドヒッター。幼なじみに誘われて中学2年からバレーボールを始め、兵庫県の強豪・市立尼崎高に進学。3年時にはキャプテンとしてチームを牽引し、インターハイ優勝を果たした。その後、明治大学を経て2023年に日本製鉄堺ブレイザーズに入団した。