サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、名古屋グランパスとアルビレックス新潟の手に汗握る決勝が話題となったルヴァンカップの「意外…

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、名古屋グランパスとアルビレックス新潟の手に汗握る決勝が話題となったルヴァンカップの「意外と知らない」本当の話。

■最も多く「決勝戦で負けた」チームは…

 Jリーグの公式データサイトを見ると、ナビスコカップ=ルヴァンカップのいくつかの通算個人記録が掲載されている。それによると、最多出場選手は山田暢久(浦和レッズ)の109試合。100試合を超えているのは1人だけだ。最多得点選手は佐藤寿人(ジェフ市原、ベガルタ仙台サンフレッチェ広島名古屋グランパス)の29点。近年は「ターンオーバー」でルヴァンカップを戦うチームが多いせいか、この2人の記録は当分、破られそうもない。

 最多優勝は鹿島アントラーズの6回。それに続くのは、1992年から3連覇したヴェルディ川崎と、2000年代に3人の違った監督(原博実、城福浩長谷川健太)の下で3回の優勝を飾ったFC東京である。最多準優勝(すなわち最も多く決勝戦で負けたチーム)は浦和レッズで5回。清水エスパルス川崎フロンターレが4回で続いている。

 今年の優勝で話題になったが、最多優勝監督は長谷川健太。2014年にガンバ大阪、2020年にFC東京、そして今年名古屋グランパスを栄冠に導いた。しかし同時に、長谷川は「最多決勝戦敗戦監督」でもある。2008年に清水エスパルス、2015年と2016年には連続してガンバ大阪で優勝を逃している。

「3回決勝負け」の監督はあと2人いる。「国立競技場の呪い」に屈したエメルソン・レオンと、サンフレッチェ広島(2010年)、浦和レッズ(2013年)、そしてコンサドーレ札幌(2019年)の3クラブで負けた「ミシャ」ことミハイロ・ペトロヴィッチである。

 我が敬愛するミシャは、浦和レッズ時代の2016年に長谷川健太率いるガンバ大阪と決勝を戦い、1-1からPK戦5-4(最後のPKは遠藤航だった)で優勝を飾っている。2006年から19シーズン、Jリーグの3クラブで指揮を執り、日本のサッカーの発展に巨大な功績を残してきたミシャだが、メジャータイトルはこのひとつである。

■32年の歴史の中で「最も奇妙な決勝戦」

 決勝戦会場は、32大会33試合のうち国立競技場が23回。その国立建て替え時期の2014年から2019年、そしてオリンピック直後の2021年に計7回会場となったのが、埼玉スタジアムである。他には、1994年に神戸ユニバースタジアムが会場になっており、1996年はクラブのホーム、磐田と鹿島が会場になった。

 決勝戦の多くは、11月3日の「文化の日」を中心にした休日あるいは土曜日に開催されている。1990年代には3回この時期が外されたが、他では「10月下旬~11月上旬」の原則で開催できなかったのは、2020年大会だけだった。

 この年の大会は新型コロナウイルスによる4か月間ものシーズン中断を受けて完全ノックアウト方式で行われ、決勝戦は2021年1月4日、新しくできた国立競技場で開催された。観客数は「キャパシティの半分」に制限され、2万4219人。長谷川健太率いるFC東京とネルシーニョ率いる柏レイソルの対戦だったが、1-1で迎えた後半29分にアダイウトンのヘディングシュートでFC東京が決勝点を挙げた。だが、観客は全員マスク着用を義務づけられ、声を出しての応援も禁止されていた。32大会の歴史のなかで最も奇妙な決勝戦だったかもしれない。

■決勝戦の最多得点者は「5ゴール」の…

 決勝戦の最多得点者は5ゴールのビスマルク。1993年から2000年にかけてヴェルディ川崎と鹿島アントラーズで記録した。決勝戦での1試合2得点は今年の永井謙佑(名古屋グランパス)と小見洋太アルビレックス新潟)まで10人が記録しているが、まだ決勝戦でハットトリックを達成した選手はいない。

 私の集計によれば、1992年から2024年までルヴァンカップ32大会の総試合数は1809。記録された得点は5150。33試合の決勝戦だけ見ると、総得点は92(1試合平均2.79)。また決勝戦33試合の通算入場者数は、138万6877人(1試合平均4万2027人)である。今年11月2日、国立競技場に集まった6万2517人という入場者数は、決勝戦だけではなく、ナビスコカップ=ルヴァンカップ全32大会1809試合中の最多記録だった。

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