2019シーズンに「黄金世代」(1998年度生まれ)が躍進して以降、女子ツアーでは「プラチナ世代」(2000年度生まれ)、「新世紀世代」(2001年度生まれ)、「ダイヤモンド世代」(2003年度生まれ)など、毎年のように各世代の選手たちが躍…
2019シーズンに「黄金世代」(1998年度生まれ)が躍進して以降、女子ツアーでは「プラチナ世代」(2000年度生まれ)、「新世紀世代」(2001年度生まれ)、「ダイヤモンド世代」(2003年度生まれ)など、毎年のように各世代の選手たちが躍動してきた。そして今季は、ダイヤモンド世代の竹田麗央が大躍進を遂げたが、そのひとつ上の世代、すでに際立った活躍を見せている岩井明愛・千怜姉妹と同世代の面々も飛躍を果たした。
代表的なのは、今季ツアー初優勝を飾った桑木志帆(21歳/メルセデスランキング6位。※11月7日現在)と、佐久間朱莉(21歳/メルセデスランキング9位)だ。それぞれのよさについて、JLPGAの永久シード保持者である森口祐子プロに分析してもらった――。
今季ツアーで2勝を挙げている桑木志帆
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――今回は今季ツアーで躍進した選手、桑木志帆選手と佐久間朱莉選手のいいところや強みなどをお伺いできればと思います。まずは、6月の資生堂レディスで初のツアー優勝、8月のニトリレディスで2勝目を挙げた桑木選手について聞かせてください。
森口祐子(以下、森口)私は20数年前から岡山で毎年ジュニアレッスンをやっているのですが、桑木さんは小学校2年生くらいからそのレッスン会に毎年参加してくれていて、よく知っている選手です。当時からボールを操ることがとても上手で、特にドライバーがうまいなと思っていました。子どもなのに体があまり暴れず、シャフトのしなりを利用して飛ばせる能力を最初から持っていました。
そういった才能を見ていて、プロにはなれるだろうと思っていました。実際、プロテストには一発合格しましたけど、初優勝までには少し時間がかかった印象があります。ともあれ、2022シーズンからツアー本格参戦。昨シーズンは優勝こそできなかったものの、メルセデスランキング10位という好成績を残しました。
迎えた今季は、少し体が大きくなってパワーがついてきた分、クラブのマッチングを考えないといけなくなって、春先は得意のドライバーで悩んでいましたね。また、本人が「緊張してダメなんです」と言うように、優勝争いなどプレッシャーがかかった状態になるとうまくいかないタイプみたいで......。3月のヤマハレディース葛城でも優勝争いに加わりながら、最終的には首位と2打差の4位タイに終わりました。
しかしその後、資生堂レディスでツアー初優勝。このときは、堀琴音さん、小祝さくらさんらと優勝争いを演じて、彼女は最終組でずっと攻めていました。1打差リードで迎えた最終18番ホールでも、緊迫した状況にあって(ラフからの第3打で)上げて止めるアプローチを決めて見せました。「取り組んできたことができてよかった」と彼女は言っていました。
――メンタル面に課題がありそうですが、外から見ている分にはまったくそういうタイプには見えません。
森口 一見、ふてぶてしく見えるかもしれませんね(笑)。でも、内面は"おこちゃま"的なところもあって......。うまくいかないときに、少し気持ちのアップダウンがあるタイプなんです。それでも(プロになって)いろいろと経験して、ラウンドの仕方が少しずつ変わってきたんじゃないかなと思います。
あと、初優勝を飾ったあと、8月のNEC軽井沢72で予選落ちしているんですけど、初日に見かけて「疲れた顔しているね」と声をかけたら、「ゴルフがうまくいかない」と言ってだら~っとしていたんですよ。さらに2日目、4つボギーを叩いてハーフターンで戻ってきたタイミングでも「もう疲れちゃった......」と言っていて。
それでその際、彼女を叱咤というか、鼓舞したんですよ。「人間には義務と権利があって。あなたはプロゴルファーで、1勝した人間だよね。ジュニア時代、何を思ってゴルフをやっていたの?」と聞いたら、「プロになりたいと思ってやっていました」と。「そうだよね。じゃあ、この夏休みにあなたのゴルフを見に来たジュニアゴルファーに、あなたのゴルフを見せて(そういう気持ちを)つなげていくのが、私たちプロの役割でもあるんじゃないの?」と言ったんです。
そうしたら、後半はハーフ2アンダーで回ってきて。予選落ちはしたんですけど、「この子は脈があるな」と。あらためて純粋でいい子だなと思いました。今後のさらなる飛躍に期待したいですね。
――一方、佐久間選手はいかがでしょうか。
森口 彼女も明るい性格。あるトーナメントのプロアマの日に(スタート前の)テントに来て、私が「女優さんが来た!」って言ったら、瞬時にポーズを取ったりしてノリのいいタイプ。
私が好きなのは、彼女のスイング軌道。テイクバックを低く長く上げていって、(フォローに向けては)低い姿勢から粘り強く体全体を使って振っていく感じ。スッとコックを入れてピュッとバックスイングを上げる人もいますけど、私もバックスイングではゆっくり低く長くとっていたので、佐久間さんのような上げ方のほうが好みなのかもしれません。
現在メルセデスランキング9位と躍進著しい佐久間朱莉
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2022シーズンからツアー本格参戦を果たして、同年のメルセデスランキングが33位、翌2023シーズンが25位でシード権を獲得。今年も上位争いに何度も加わっていますが、なかなか勝てず、いまだツアー未勝利。4月の富士フイルム・スタジオアリス女子では、阿部未悠さんに1打差で敗れました。
その際、勝った阿部さんも、負けた佐久間さんも涙に暮れていましたけど、佐久間さん自身は「また2位か......」という受け止め方だったと思うんですよ。もちろん、結果がすべての世界だから、優勝することが最大目標であり、それを実現できれば、自身の、さらには周囲の喜びにもつながるのですが、2位を続けることって、それはそれですごいこと。「どのゴルフ場でも通用するオールラウンダーとも言えるんじゃない」と彼女にも言ったことがあります。
私も41勝したとき、父に「おまえは2位が42回、3位も43回以上はある」って教えられました。そういう積み重ねが41勝につながったのかなと、そのときに思いました。優勝するにはめぐり合わせもありますから、佐久間さんも近いうちに勝てると思っています。実際、彼女はパットもうまいし、下手なものがないですから。
今年も竹田麗央さんのようなスケールの大きな子が出てきて、女子ツアーの世代交代の速度はどんどん速くなっていますけど、佐久間さんも優勝したい気持ちは強くなっているはず。そのためにも、自分のゴルフを積み重ねていくことが大切だと思います。