今週は京都競馬場で、第49回エリザベス女王杯(GI、芝2200m)が行われる。昨年の覇者・ブレイディヴェーグ不在の今年は混戦ムードが漂っており、波乱含みの一戦となりそうだ。ここでは馬券検討のヒントとして、出走馬17頭の全頭診断を行う。◆【エ…

今週は京都競馬場で、第49回エリザベス女王杯(GI、芝2200m)が行われる。昨年の覇者・ブレイディヴェーグ不在の今年は混戦ムードが漂っており、波乱含みの一戦となりそうだ。

ここでは馬券検討のヒントとして、出走馬17頭の全頭診断を行う。

◆【エリザベス女王杯2024予想/高配当メソッド】想定1人気レガレイラに「凡走条件」該当 京都開催、波乱の使者は“前にあり”

■エリザベス女王杯2024 出走予定馬全頭診断

・エリカヴィータ

2年半以上にわたって馬券内から遠ざかる現状。厳しい。

・キミノナハマリア

牝馬限定戦で私が重視しているのは対牡馬相手の実績。昔ほどではないが、やはり牡馬混合戦はレベルが高くオールカマー組が複数勝利しているのもうなずける。本馬を例にとると、今年戦ってきた牡馬はエアサージュ(鳴尾記念3着)、ニホンピロキーフ(マイラーズC3着)、リフレーミング(小倉記念1着)と重賞好走馬がズラリと並んでいるのだ。関西圏は【2.2.1.1】と大崩れがなく、唯一の馬券外は前述の3頭が出走した飛鳥S4着。軽視は禁物だ。

・コスタボニータ

小回りコースでの先行粘り込みが好走パターンの馬。ズンズンと伸びる末脚を繰り出せる馬に有利な当舞台への適性には疑問が残る。

・コンクシェル

クイーンS、府中牝馬Sと高評価を下した馬。結果は凡走も、自分のスタイルを貫く潔さから今回も単騎逃げが濃厚な1頭だ。2009年のクィーンスプマンテ・テイエムプリキュア、3年連続2着のクロコスミアなど人気薄の逃げ先行馬が何度も穴をあけてきたエリザベス女王杯。京都芝2200mにおける父キズナ×母父ノーザンダンサー系の成績【4.2.0.3】も含め、私はまだこの馬をあきらめたくない。

・ゴールドエクリプス

斤量53キロ以上のオープンクラスでは【0.0.0.4】。現状は力不足と言わざるを得ない。

・サリエラ

一体何があったのか……そんな言葉が紡がれてしまうような近走パフォーマンス。好走は少頭数の揉まれない競馬に集中しており、フルゲートのメンバーでの一変は厳しいか。

・シンティレーション

年明け時点では2勝クラスにすぎなかったが、夏を経て急成長。前走府中牝馬Sはブレイディヴェーグ、マスクトディーヴァの間に割って入ったのだから立派だ。近2走は上がりの速い高速馬場への適応力を見せたが、本来は時計のかかる馬場が合うタイプ。開催が進んでタフな馬場傾向にある今の京都なら再度の好走があっても驚けない。

・シンリョクカ

今年に入ってから復調を示しており、前走新潟記念は前半1000m58秒9-後半1000m59秒1のイーブンペースを番手から押し切り。フロックとは思えない勝ち方だった。振り返れば桜花賞、オークスで当時の世代上位馬・ハーパーと際立った差のない競馬をしていた馬。何らかの印は必要か。

・スタニングローズ

秋華賞後は馬券外が続く馬。ピークアウトを疑うところだが、私はまだこの馬をあきらめていない。1年近い休み明けで臨んだ大阪杯は勝ち馬と0秒5差、ヴィクトリアマイルは600m通過33秒8、1000m通過56秒8の激流→差し決着を3番手から残り200mまで3着争いに加わった。前走クイーンSは斤量57キロで終いの粘りを欠いた印象で、スターズオンアース、ナミュールといった牡馬混合GI連対馬と接戦を演じてきた馬。見限れない。

・ハーパー

フタ桁着順が続く現状。リピーターの活躍が目立つレースとはいえ、これでは積極的に狙えない。

・ピースオブザライフ

芝を使われるのは1勝クラス以来。当時は2戦続けてフタ桁着順とふるわず、久々の芝レースがGIではさすがに厳しい。

・ホールネス

GI出走には勝利が至上命題だった前走新潟牝馬S。前と後ろが分断された難しいレースで仕掛けどころを間違えなかった鞍上の好騎乗が光った。個人的にはそのまま西塚洸二の手綱で臨んでほしかったが……馬主の立場で考えると致し方ないか。ともあれ、馬自身は前走プラス14キロ増とフィジカル面の強化が著しく、芝2200mは【3.1.0.0】連対率100%。上がりの速い決着では分が悪いが、荒れ馬場傾向にある今の京都でひと雨降れば面白い存在だ。

・モリアーナ

以前は前に行く競馬ができていたが、古馬になってからは完全に展開待ちの馬に。距離不安を抱えるここも後方待機策が濃厚で、同タイプに強豪がひしめくここでアドバンテージを得るのは難しいだろう。

・ライラック

年明け以降の3戦はいずれも勝ち馬と1秒以上離される惨敗。相性の良いレース替わりとはいえ、直近のパフォーマンスから一変を望むのは酷に映る。

・ラヴェル

アルテミスSを最後に馬券内から遠ざかっているものの、京都芝2200mはプラダリア、べラジオオペラ、シュヴァリエローズといった重賞の上位常連馬に0秒5差。牡馬相手に一定のパフォーマンスを示している点から、押さえには加えておきたい。

・ルージュリナージュ

上がり3F上位の脚で5着の前走府中牝馬S。内容としては悪くないが、差し決着で大勢が決したあとに突っ込んできたレースぶりに強さは感じられない。未知の距離替わりでの上位進出は至難の業か。

・レガレイラ

秋華賞トライアルのローズSを経て、古馬混合のエリザベス女王杯へ参戦。摩訶不思議なローテーションにも映るが、C.ルメール騎乗馬を使い分けるという名目での臨戦過程ゆえ、昨年のブレイディヴェーグとほぼ同じと捉えてよさそうだ。自身の上がり3F34秒台以上のレースは【2.0.0.0】。スワーヴリチャード産駒のアーバンシックやスウィープフィートも上がりのかかる展開でパフォーマンスを上げており、荒れ馬場想定の週末京都芝は歓迎と言えるだろう。

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UMAJIN.netより一部編集・転載(2024年11月7日 18:00公開の記事

著者プロフィール

田原基成(たはらもとなり)●競馬評論家 競馬予想の魅力を世に発信し続ける「競馬ストーリーテラー」。予想に対して謎ときに近い魅力を感じており、ローテーション・血統の分野にて競馬本を執筆。現在はUMAJIN内「競馬サロン」にてコラム【競馬評論家・田原基成のいま身につけるべき予想の視点】 執筆中。『SPREAD』ではデータ分析から読み取れる背景を紐解き、「データの裏側にある競馬の本質」を伝えていく。