11月2日に東京・国立競技場で行われた2024年YBCルヴァンカップ決勝。2021年王者の名古屋グランパスに初のファイ…

 11月2日に東京・国立競技場で行われた2024年YBCルヴァンカップ決勝。2021年王者の名古屋グランパスに初のファイナリスト・アルビレックス新潟が挑むという形だったが、6万2000人超の大観衆の半数以上がオレンジサポーター。季節外れの悪天候に見舞われる中でも新潟から駆け付けた熱狂的な人々の後押しには、選手たちも感極まったようだ。
「新潟のサポーターは日本一だと思っている」とこの日、堀米悠斗に代わってキャプテンマークを巻いた秋山裕紀も力を込めたが、これだけの雰囲気を作ってもらった以上、全力を出し切らないわけにはいかない。そんな思いを松橋力蔵監督も選手たちも胸に秘め、大一番に挑んだに違いない。
「決勝の舞台を経験している選手が数少ないですし、誰でもこのピッチでは少なからず緊張すると思う」と秋山が言うように、序盤の新潟はやや硬い入りを強いられた。日本代表経験のある永井謙佑稲垣祥らが並ぶ名古屋に比べると高度な経験値でやや劣るのは確か。それでも彼らは松橋監督が積み上げてきたGKを使った自陣からのビルドアップを積極果敢に披露。マンツーマンでハイプレスを仕掛けてきた相手にもひるむことなく、自分たちのスタイルを押し通そうとした。

■ブレることなく貫いた自分流

 ただ、それは時に”両刃の剣”にもなる。GK阿部航斗が蹴ったボールを永井に奪われた決められた前半31分の1失点目はまさにそう。今季もそういった新潟対策を講じられ、失点するケースがしばしば散見されていた。
 しかも、前半終了間際にも追加点を奪われ、前半だけで2点のビハインドを背負うことになったわけだが、松橋監督は決して怯まなかった。「『舞台が整った』くらいの気持ちでやろう。これをひっくり返すんだ」と選手たちをハーフタイムに鼓舞。ブレることなく自分流を突き詰めていったのだ。
 指揮官の強気の姿勢が後半26分の谷口海斗の1点目を呼び込み、後半終了間際の小見洋太のPK奪取につながる。これを小見自身が決め、延長戦に突入。そこでも小見にPKを献上した中山克弘に先手を取られ、崖っぷちに追い込まれたが、延長後半6分にカウンターから小見が起死回生の同点弾をゲット。3-3でPK戦という状況まで持ち込んだのだ。
 驚異の粘りが結果に結びつけば最高のシナリオだったのが、新潟は2人目の長倉幹樹がまさかの失敗。これでクラブ初タイトルを逃してしまった。もちろん長倉は号泣。表彰式まで涙を流し続けたが、秋山筆頭に彼を励ます姿は人々の感動を誘った。
「決勝だからって自分たちは別のサッカーをするつもりはなかった」という秋山の発言に象徴される通り、新潟の独自スタイルを貫く勇敢な戦いぶりには、多方面から称賛の声が贈られたのだ。

森保一監督も絶賛

 その筆頭と言えるのが、日本代表の森保一監督である。
「松橋監督はマイボールを大事にする攻撃的なチャレンジをしていますが、今日も素晴らしい表現をしていたと思う。1失点目は痛いものになりましたけど、チャレンジをその後も続けたことで試合をひっくり返せるところまで持っていけた。監督の姿勢が非常に表れた試合だったと思います」と同い年の指揮官に改めて敬意を評したのだ。
 森保監督自身も2022年カタールワールドカップ・コスタリカ戦で吉田麻也(LAギャラクシー)のパスが小さくなって致命的な失点につながった際、「私がいつもボールを大事にするように言っていることを麻也があの場面で意図的にやろうとしてくれた」とコメント。ボールを大事にする姿勢を鮮明にしている。松橋監督とはサッカー観が通じるのだろう。
「マイボールを大切にすることは日本人の技術力を発揮するために重要なところ」とも森保監督は発言。松橋流から再認識させられた部分も少なくなかったようだ。
 新潟のような興味深いスタイルを採るチームが大舞台で初タイトルに近づいたという事実はインパクトが大きかったのではないか。翌日の報道では松橋監督の勇退も報じられているが、仮に指揮官が代わったとしても、新潟がこの方向性を突き詰め、頂点を目指していけるかどうかは気になるところ。まずは今季リーグ3戦で確実にJ1残留を果たすこと。そこから全てが始まると言っていい。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)

いま一番読まれている記事を読む