11月2日のYBCルヴァンカップ決勝で、惜しくも敗者となったアルビレックス新潟だが、2004年にJ1初参戦を果たしてか…

 11月2日のYBCルヴァンカップ決勝で、惜しくも敗者となったアルビレックス新潟だが、2004年にJ1初参戦を果たしてから20年でタイトルにあと一歩と迫った事実は非常に大きなこと。長年、クラブを支えてきた関係者やファンにとっても新たな一歩になったのは間違いないだろう。

 過去20年間を振り返ってみると、2004~2017年までは最高峰リーグで戦い続けていたが、2017年に17位となってJ2に降格。そこから2022年まで長い苦境を味わい、選手補強でも苦労を強いられてきた。
 かつては酒井高徳(神戸)、矢野貴章(栃木)ら日の丸を背負う日本人選手、マルシオ・リシャルデス、エジミウソン、レオ・シルバのようなJリーグ屈指の助っ人外国人を擁した時期もあったが、J2在籍が長期化し、ビッグネームをそうそう獲得できなくなった。
 そんな中、クラブは横浜F・マリノスで長くユース監督を務めた松橋力蔵監督を2022年に招聘。1年でJ1返り咲きを果たし、着実ベースアップを図ってきた。伊藤涼太郎シントトロイデン)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)のように急成長する人材も増え、選手層も厚くなってきた。それが今回のルヴァン準優勝につながったと言っていい。

■「選手が伸びるクラブ」

 今回のメンバーを見ても、J3のいわてグルージャ盛岡、ロアッソ熊本から這い上がってきた谷口海斗、J3のアスルクラロ沼津や鹿児島ユナイテッドで武者修行した秋山裕紀、2年前は関東リーグ1部の東京ユナイテッドでプレーしていた長倉幹樹など、目覚ましい成長を遂げた選手が少なくない。
「(国立の)会場を何回も見渡して、感情の高ぶりを感じながらやりましたけど、本当にこういう舞台でプレーできるのはなかなかないこと。自分がプロになった時には想像できなかった。本当に目の前のことを一生懸命やってきた結果だと思います」と谷口もしみじみとコメントしていたが、彼らは”雑草軍団”であるがゆえに、サポーターや支えてくれる人々に感謝しながら戦っている。そういうメンタリティが今回の驚異的な粘りにつながっているのは事実だ。
 実際、今の新潟は「選手が伸びるクラブ」という評価を得つつある。名古屋相手に左サイドを駆け上がり、再三、攻撃の起点を作った橋本健人を見ても、プロのスタートだったレノファ山口ではある程度、基盤を固めたものの、昨季赴いた横浜FCでは出番を得られず、今夏に新潟に加入してから一気に才能が開花した印象もある。
 昌平高校から2021年に新潟の入り後、松橋体制になってからジャンプアップ。この決勝ではPK奪取を含む2ゴールに絡む大活躍を見せている。
「今年のパリ五輪には行けず、夏場に1回ケガもしてしまって、そこからなかなかコンディションが上がらない期間があって、『本当に一皮剥けるのは今日しかない』っていう気持ちで挑んだゲームだった。そこで1つ結果を残せたことはよかったと思ってます。
 新潟のサッカースタイルはしっかりと成果も出てきているし、すごく誇らしい気持ちもあります」と小見は目を輝かせたが、彼らをイキイキと躍動感あるプレーへと導けるのが、育成畑の長かった松橋監督の手腕なのだろう。

■「タイトルに欲が生まれた」

 そういう面々がピッチで持てる力を全て出し切った新潟。その姿は多くの人々に勇気と希望を与えたのではないか。
 東洋大学在学中ながら最終ラインで奮闘した稲村隼翔、途中出場でゲームの流れを変えた奥村仁を含め、若い力がここからどう飛躍していくかも興味深いところだ。
「タイトルに欲が生まれた。自分たちも圧倒的な実力をつけて、またこの舞台に戻ってきたい」という小見の言葉のように、初のファイナルを糧に新潟がさらなる進化を遂げていくのを楽しみに待ちたい。
(取材・文/元川悦子)

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