10月初旬のランコ・ポポヴィッチ監督解任、中後雅喜新監督就任から1か月。鹿島アントラーズは何としても優勝戦線に踏みとど…

 10月初旬のランコ・ポポヴィッチ監督解任、中後雅喜新監督就任から1か月。鹿島アントラーズは何としても優勝戦線に踏みとどまるべく、10月19日の前節・アビスパ福岡戦から2週間を経て、11月1日にアウェー・川崎フロンターレ戦に挑んだ。

 福岡戦では鈴木優磨の左サイド起用という奇策に打って出た新指揮官だったが、今回は羽田憲司コーチらとも相談の上、鈴木優磨を中央に戻し、師岡柊生との2トップで挑む決断をした。その方が前線で2つの起点ができ、サイドアタックを繰り出しやすいという狙いがあったからだろう。
「この2週間は守備にもかなりの時間を使いましたけど、攻撃で自分たちの強みを出していくこと、相手の嫌なところ、特にポケットに走り込んで起点を作っていくという部分を意識的にやりました。優磨君と師岡の2人が2トップで起点を作ってくれる作業がないと、今のチームは前進しながら苦しむ場面が多い。そこは大きいと思う」と柴崎岳とボランチを組んだ知念慶も前向きに受け止めつつ、試合に入ったという。

■明確に出た“狙い”

 その狙いが開始早々から明確に出た。この日の鹿島は球際や局面のバトルで相手に勝ってボールを奪い、タテに早くボールを出していくという狙いが顕著だった。そのうえで迫力を持ってサイドアタックを仕掛けた。
 それがまず奏功したのが、開始10分の先制点。左からの崩して右のスローインを取った鹿島は師岡が投げたボールを柴崎が受け、すぐさま中央にクロスを送った。ここに打点の高いヘッドで合わせたのが知念。奇しくも来季監督就任が濃厚と言われる鬼木達監督の目の前で豪快弾を決めると同時に、古巣への恩返しを果たしたのである。
「監督が代わってチームとして狙っていた部分がハマったゴールだったかなと思います。川崎はお世話になったクラブなんで、成長した姿を見せたいと思っていた。ゴールという形でしたけど、取れてよかったです」と背番号13は爽やかな笑み浮かべていた。

三竿健斗の右サイドで封じるもの

 この一撃から鹿島はさらに勢いに乗り、18分にはまたも左の崩しから2点目を挙げる。相手からボールを奪った安西幸輝がえぐってマイナスクロスを上げたところに詰めたのが樋口雄太。ポポヴィッチ体制では出番が減っていた14番は躍動感を前面に押し出し、2点目を叩き出した。
「サイドハーフがゴール前に入っていくってのは口酸っぱく言われてますし、そこでやっぱり得点できるのがチームのスタイル。そこがみんなに伝わるでしょうし、そこはうまくいったシーンかなと思います」と樋口もしてやったりの表情を見せていた。
 彼が前へ前へという姿勢を色濃く押し出せる背景には、三竿健斗の右サイドバック(SB)起用もあるだろう。「右SBは中学生以来」という背番号6は福岡戦後半からこのポジションに入り、今回はスタートから。それはもちろん「マルシーニョ封じ」という大役があったからだ。
「だいぶヒヤヒヤしながら守備してましたけど、周りの選手も内側のカットインのところは対応するようにコミュニケーションをとってくれたんでよかったです」と本人も最大のタスクを確実に遂行。樋口の献身的なサポートも光った。
 その三竿が前半28分、値千金の3点目を挙げたのだから、鹿島としては最高だろう。左に開いた師岡のクロスを樋口がキープし、右に展開。これを三竿がペナルティエリア外側から巧みに左足で蹴り込み、ゴール左隅に決めたのだ。
「雄太か誰かが持った時にパスを受けるイメージで入ったんですけど、そこにこぼれて来た。結構、左足の方がコントロールシュートがうまいんで、打っちゃおうという感じですかね」と彼は少なからず左足に自信があった様子だった。

■厳しい中でも残した可能性

 これで前半から3点をリードした鹿島。今季は3-0から3-3に追いつかれた5月12日の東京ヴェルディ戦のようなゲームもあっただけに油断はできなかったが、中後体制で整備された強固な守備組織は崩れなかった。指揮官はラスト15分は長期間、構想外扱いになっていた津久井佳祐を投入。5バックにして守り切るという手堅い采配も見せた。後半ロスタイムに山本悠樹に直接FK弾を決められたのは反省すべき点もあるが、3-1で勝ち切った事実は何よりも大きかったと言っていい。
 これで川崎に2010年以来のシーズンダブルを達成。等々力では2015年以来の勝利となった。首位・ヴィッセル神戸とのポイント差は鹿島が1試合少ない状態で10と非常に厳しいが、可能性を残したのは事実。彼らは残り全勝を目指して突き進んでいくしかない。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)

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