メンフィス・グリズリーズで2way契約を勝ち取った河村勇輝は、チームに受け入れられているどころか、チームのムードメーカーとし…
メンフィス・グリズリーズで2way契約を勝ち取った河村勇輝は、チームに受け入れられているどころか、チームのムードメーカーとして欠かせない存在となっているようだ。
度々スポットライトが当てられるのは、グリズリーズの絶対的エース、ジャ・モラントとの親密な関係性である。トレーニングキャンプで福岡第一高校仕込みのアグレッシブなディフェンスでモラントと対峙した河村は、その姿勢とキャラクターが受け入れられ、日に日に絆が深まっている。プレシーズンマッチに開催された新人恒例のダンスコンテストでは即興のダンスコラボを披露して見事優勝。また、モラントのストーリーに登場したかと思えば、パーティーでは仲睦まじく2人でピースをして写真を撮影されるなど、年齢もわずか2歳差の両者は兄弟のような存在となっている。
モラント・河村ペアの様子をチームメイトたちも笑顔で見つめている。最近、スタンダード契約を手にした昨年のGリーグ最優秀守備選手賞受賞者であるジェイ・ハフは「彼らのやりとりを見ているのは本当に面白いよ」と語っており、ブランドン・クラークもそれに同調し「2人はまるで小さな相棒のようだよ。見ていて飽きないね。両者のそれぞれの側面がぶつかり合っている感じがする」と発言。さらに、同じポイントガードを主戦場とするスコッティ・ピッペンJr.にいたっては、日本から来た背番号17を“チームのエネルギー”と、その存在を高く評価している。
河村自身も実感しているように、コミュニケーションスキルについてはまだ伸び代がある。しかし、172センチの小兵はそんな言語の壁さえも味方につけている。
河村の“英語の先生”も務めるモラントによると、河村との言語の壁を多少なりとも実感しながらも、毎日のように新しいジェスチャーやスラングを習得しているという。最初に会得したのは、手のひらを空に向けて腕を上に伸ばす“Raise the roof”と呼ばれる動きで、これは通常、派手なダンクなど試合の流れを手繰り寄せるビッグプレーが飛び出た瞬間に行われるものだが、河村はフリースローのタイミングでそれを披露した。
それでも、モラントは微笑ましく河村の成長を見守っている。
「あいつは多くのことを学んでいて、ただ口に出すだけで、まだ適切なタイミングはつかんでいる途中だね。でも、それがユウキだ。彼の世界があって、俺たちはただその中で生きているだけだよ。正しい言葉遣いを心がけて、あまり乱暴なことを言わないように気をつけるだけかな」
「Type shit.(そんな感じ)」に次いで習得したスラングは「No cap.(間違いない、嘘ではない)」。また、アメリカのプロレスWWEのスーパースターとして世界的な人気を誇るジョン・シナを模倣して、3ポイントシュートを決めた際には内側に向けて顔の前で振る「You can’t see me」の決めポーズにもハマっているようだ。
明治の代表的なグミ「ポイフル」もチームメイトに大好評と、球団の内外で人気者となった河村。最後は、日本の司令塔を預かるモラントの我々を安心させてくれる言葉を記しておきたい。
「ユウキはチームに明るさと喜びをもたらしてくれるんだ。彼ができるだけ快適に過ごせるように、自分らしく過ごせるようにするだけだね」
文=Meiji