浦和レッズはアウェーの日産スタジアムで横浜F・マリノスとスコアレスドロー。勝ち点1を分け合う形でともに勝ち点を43として、J1残留に一歩前進した。この勝ち点1をどう捉えるかは視点によってかなり変わってくる。 浦和にとって日産スタジアムは5…

 浦和レッズはアウェーの日産スタジアムで横浜F・マリノスとスコアレスドロー。勝ち点1を分け合う形でともに勝ち点を43として、J1残留に一歩前進した。この勝ち点1をどう捉えるかは視点によってかなり変わってくる。

 浦和にとって日産スタジアムは5連敗中の”鬼門”であり、マリノスが超過密日程、しかも天皇杯の準決勝で延長戦の末に、ガンバ大阪に敗れた3日後の試合ということを差し引いても、難しいゲームになるのは分かっていたことだ。それでもセンターバックのマリウス・ホイブラーテンを出場停止で欠く中、マチェイ・スコルジャ監督が構築する守備の強みを出しながら、惜しくもオフサイドに嫌われた2つのシーンを含む、決定的なチャンスを何度か作れたことはこの数試合のなかで、確かな前進だろう。
 4ー3ー3をベースとした攻撃的なサッカーを掲げた、ペア=マティアス・ヘグモ前監督がシーズン中に契約解除となり、昨シーズンの浦和を率いたスコルジャ監督に交代したことが、ここ数試合のチームの混乱を招き、結果して終盤戦で”残留争い”に巻き込まれる要因になったことは間違いないだろう。ヘグモ前監督は左右のウイングを生かしたスタイルで、前半戦から攻撃面は一定の成果を得たが、相対的に守備の強度や安定感が弱まり、34試合で27失点だった昨シーズンより、1試合あたりの失点数が大幅に増えてしまっていた。

■安定しないビルドアップ

 後半戦は4ー2ー3ー1をオプションに組み込み、ヘグモ監督なりにバランスを取って改善するということに取り組んでいたが、欧州に移籍した伊藤敦樹をはじめ酒井宏樹アレクサンダー・ショルツ岩尾憲、オラ・ソルバッケンといった主力の移籍も続いた中で、なかなか勝利という結果につながらない状況の監督交代だった。
 スコルジャ監督の復帰初戦となった、第30節のガンバ大阪戦は短期間で4ー4ー2のコンパクトな守備ブロックを整理して、相手のポゼッションを生かした攻撃に耐えながら、後半4分に関根貴大があげた虎の子の1点を守り切って勝利した。
 これが7試合ぶりの勝利でもあっただけに、その時点ではポジティブな評価も見られたが、守備の約束事を大きく整理すると、スタートポジションを含む攻撃面に少なからず影響することは火を見るより明らかだった。その後、浦和はまさかの4連敗を喫してしまうが、この間に1得点しかできなかった。スコルジャ監督が再任して5試合目となる第34節の東京ヴェルディ戦。前半27分に、相手のイージーミスを生かして、松尾佑介のボール奪取から渡邊凌磨が決めた。
 ほぼ前目の二人で完結するショートカウンターによるものだったが、後半にセットプレーから2点を入れられて逆転負けを喫して、浦和は4連敗となった。その結果もさることながら、内容に大きな問題が見られた。相手の組織的な守備に対してビルドアップが安定せず、アタッキングサードで効果的にボールを持つことすらできない時間帯が続き、一方でヴェルディには簡単にボールを運ばれた。ほとんどゴール前での守備を強いられるという悪循環に陥ってしまったのだ。まさしく”戦術が迷子になる”という言葉がそのまま当てはまるような機能不全ぶりだった。
(取材・文/河治良幸)
(後編へつづく)

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