浦和レッズが東京ヴェルディに敗れた週末、京都サンガF.C.、湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田、北海道コンサドーレ札幌など、下位のチームが勝利。気が付けば、浦和にもJ2降格の危機が迫っていた。 そして、次に控えるのは悪天候で延期となっていた、柏…
浦和レッズが東京ヴェルディに敗れた週末、京都サンガF.C.、湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田、北海道コンサドーレ札幌など、下位のチームが勝利。気が付けば、浦和にもJ2降格の危機が迫っていた。
そして、次に控えるのは悪天候で延期となっていた、柏レイソルとのホームゲーム。クラブの内外で、これまであまり話題になっていなかった”残留争い”というワードも飛び交う中で、同じ勝ち点39だった柏戦は”6ポイントゲーム”の様相を呈した。
ヴェルディ戦から柏戦まで中3日しかなかったが、チアゴ・サンタナの提案で、試合から2日後の練習前に1時間の選手ミーティングを行った。そこで戦術的なすり合わせをするというより、それぞれの選手がどういうところに問題を感じているかを忌憚なく言い合うというものだ。そこで渡邊凌磨が指摘したのはチームの戦術以前に、選手一人ひとりが自分の特長を発揮できなくなってしまっているというものだった。
「個人個人の力が引き出されない感じで、不完全燃焼で90分を終えることって、めちゃめちゃ今シーズンあったと思うので。それをなくしながら、最後にチームとしてこうしていくべきだよねっていう会話ができれば、いい位置にいられるんじゃないかなって思うので。まずは個人のところに、個人個人がフォーカスしてかなと思います」
そう主張する渡邊は、ヘグモ前監督からスコルジャ監督になり、守備のタスクが増えたことに関しても「あそこまで攻撃的にやっていた分、守備の細かいところまでやらなきゃいけなくなったところにギャップを感じている選手はもしかしたらいるかもしれないけど、それがベースというか。この現代、僕は守備が大事だと思っているから。そこは怠らずに、どれだけそのあと攻撃に出ていけるか」と語り、当たり前のように守備をこなしながら、攻撃面も向上させていく必要性を訴えた。
■グスタフソンと佐藤が見せたもの
柏戦は最後の最後に相手のハンドでPKを獲得し、FWチアゴ・サンタナが決める形で1−0の勝利。残留に大きく前進したが、内容面はまだまだながら、選手たちがそれぞれ直向きに、勝利を求めて戦うという兆しは感じられるゲームだった。
そこから1週間が経っての横浜F・マリノス戦ということで、サミュエル・グスタフソンの展開力を主な攻撃の起点にサイドからチャンスを作り、後ろからは出場停止のマリウス・ホイブラーテンに代わり、左のセンターバックでスタメン起用された佐藤瑶大が、井上黎生人とのコンビで相手エースのアンデルソン・ロペスを抑えながら、攻撃では対角のロングパスや縦に差し込むボールで、アクセントを生み出した。
アタッキングサードにボールを運んでから、フィニッシュまで時間をかけてしまうシーンが多かったが、佐藤の縦パスから松尾が飛び出して、推しくもオフサイドになった場面や井上を起点に、松尾のポストから渡邊のスルーパスにFWブライアン・リンセンが抜け出したシーンは、フィニッシュがうまく行けばゴールという形だった。正直、長過密日程のマリノスが体力的に足が止まったり、間延びしたところを利用できた側面もあるが、スコルジャ監督が就任してからの試合では一番ビルドアップからチャンスメイクが形になった試合だった。
■苦しみを必要なプロセスに
本質的にマインドの異なる監督に交代したことで、チームが一度巻き戻ってしまったことは確かだ。もしヘグモ体制のまま我慢して、成長を続けていったらどうなるかという世界線は途切れてしまった。
来年の夏に行われるクラブワールドカップを含めて、ここから浦和がチーム力を上げていく上で、現在の苦しみは必要なプロセスだったと考えて、今は1試合1試合で勝利を目指しながら、来シーズンにつながるものを築いていくしかない。
(取材・文/河治良幸)