『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(10)群馬グリーンウイングス 髙相みな実(連載9:ウルフドッグス小山貴稀から見た『ハイキュー‼』は「教科書」 「雑草」がSVリーガーになるまでを振り返る>>)(c)古舘春一/集英社 髙相みな実は、な…

『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(10)

群馬グリーンウイングス 髙相みな実

(連載9:ウルフドッグス小山貴稀から見た『ハイキュー‼』は「教科書」 「雑草」がSVリーガーになるまでを振り返る>>)




(c)古舘春一/集英社

 髙相みな実は、なぜバレーボールにのめり込んだのか?

「ふたつ上の兄に負けたくなかったんです」

 彼女は言う。子どもの頃、兄は強いチームでプレーしていた。長野県大会、北信越大会で優勝。眩しいライトを浴びていた。

 一方、髙相のチームは地区大会で負けた。足の速さも、水泳でも兄には負けたくなかったが、バレーボールに対する自負心はそれ以上だった。

「小1で始めたんですけど、めちゃくちゃ好きで。バレーボール選手になりたくて、小1の文集にも『バレーボールの選手になる』と書いていたらしいです」

 バレーの虜になっていたが、順風満帆ではなかった。むしろ悔しい思いをするほうが多かった。身長も、バレー選手としては低かったこともあるだろう。最初はスパイクがうまく打てなかった。

「ネットを越したい」

 その一心で挑み続けたという。工夫を凝らすうちに、その日々が"小さな巨人"を生み出すことになった。

 髙相の現在の身長は164㎝だが、最高到達点は300cm以上。空中で高く浮いて、体を弓のようにしならせ、右腕にすべてを込めてスパイクを打つ。アウトサイドヒッターとして、勝利のトスを託される選手だ。

 小さな体で限界を超えるため、試合ではエネルギーを使い果たして"空っぽ"になる。

「普段の生活ではあまり感情を表に出せないんですけど、コートのなかでは爆発的に出せます!」

 髙相は、はにかみながらも楽しそうに言う。普段はおとなしいが、コートに入ると闘志をまとって豹変。それは無意識の変身で、まるで漫画のキャラクターだ。

 2022年に、強豪を相手に9点差をひっくり返した試合があった。前日はセットカウント0-3で負け、その日も1、2セットを取られ、3セット目も9点差で追い込まれた。絶体絶命だった。

 しかし髙相は途中交代で入り、決然と自らに誓った。

「絶対に負けたくない。スタメンも外れたし、結果を残すならこの試合しかない」

 無我夢中だった。終わったら、試合に勝っていた。限界を超えるたび、彼女はバレーが好きになった。

――過去最高のコートの風景は?

 最後の問いに、彼女は真っ直ぐな目でこう答えた。

「2022年の黒鷲旗(全日本選抜大会)は連戦を戦い抜いて準優勝したんですが、楽しかったです! 疲労を感じないくらいで、勝つことよりも『"毎日、うまくなっている』"って感じられました。自分より大きかったり、能力が高かったりする選手を倒すのは最高でしたね」

 SVリーグでも、小さな巨人が新たな風景を見せる。
 
【髙相が語る『ハイキュー!!』の魅力】

――『ハイキュー!!』の魅力とは?

「主人公は日向(翔陽)ですが、影山(飛雄)とか、周り全員が成長していくのが魅力だなって思います。烏野だけが強くなるんじゃなくて、音駒や梟谷もそうで、登場人物がいろんな出会いを通じて成長していくのがいいですね」

――共感や学んだことは?

「技術面では、自分を囮にするとか、誰かを生かすというところが勉強になりました。あと、アルゼンチンのホセ・ブランコ監督が、及川(徹)に『嘆くのは 全ての正しい努力を尽くしてからで遅くない(略)"自分は天才とは違うから"と嘆き諦める事より 辛く苦しい道であるかもしれないけど』というシーンがあるんですが、読んだ時は心にグサッときましたね」

――印象に残った名言は?

「名言だらけで、ひとつに絞るのは難しすぎます(笑)。それでも選ぶなら、木兎(光太郎)の『"楽"じゃなく"楽しい"ことを考える』って言葉でしょうか。でも、稲荷崎の北(信介)さんも名言が多くて。『喝采は要らん ちゃんとやんねん』とか、『俺が毎日1から10やっとるところを侑みたいな連中は1から20やっとんねん。(中略)ほんでたまに、1から10やなくAからZやってみたらどんなやろ?(中略)って考えたりする奴らやねん』とかもいいですね」

――ベストゲームは?

「烏野vs稲荷崎です!」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位が日向、2位が木兎、3位が星海(光来)ですね。日向、星海は身長が低いところが自分と重なるところがあって。(日向が)疲れすぎて熱が出ちゃうところとか、『わかる!』って思います。悔しいし、きついし......。

(身長差で)ダイレクトでポンと打たれるシーンとか、自分も何回もありました。外国人選手や日本代表級のミドル相手だと、届いているはずなのに(気づいたら)ボールが落ちている。上から打たれて、チームのディフェンスが整わなくなると戦術的に交代もあるので、仲間に申し訳ないなと。私も工夫しながら、もっと強くなりたいです!」

(連載11:「音駒推し」のグリーンウイングス道下ひなのが、ミドルブロッカーで「よっしゃー!」と思う瞬間>>)

【プロフィール】

髙相みな実(たかそう・みなみ)

所属:群馬グリーンウイングス

1996年8月8日生まれ、長野県出身。164cm・アウトサイドヒッター。小学1年でバレーボールを始め、東京都市大学塩尻高校、中京大学を経て2019年にPFUブルーキャッツ石川かほくに入団。同年にはユニバーシアード競技大会の日本代表メンバーに選ばれ、銅メダルを獲得。2024年に群馬グリーンウイングスに移籍した。