出雲駅伝で優勝を争った3強が全日本でも優勝争いの中心となる(写真は出雲3区) phtoto by SportsPressJP/AFLO11月3日に行なわれる全日本大学駅伝(名古屋・熱田神宮→三重県・伊勢神宮内宮宇治橋前 /8区間106.8k…
出雲駅伝で優勝を争った3強が全日本でも優勝争いの中心となる(写真は出雲3区)
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11月3日に行なわれる全日本大学駅伝(名古屋・熱田神宮→三重県・伊勢神宮内宮宇治橋前 /8区間106.8km)。全国8地区の代表25校と日本学連選抜、東海学連選抜の計27チームによる日本一をかけた熱き戦いは、どのような展開となるのか?
【2冠目&初優勝を目指す國學院大】
学生三大駅伝の初戦となる出雲駅伝は國學院大、駒澤大、青山学院大が終盤まで激しく競り合った。11月3日に開催される全日本大学駅伝も前回トップスリーを占めた上記の〝3強対決〟が有力だ。
なかでもV候補の筆頭は、初優勝を狙う國學院大になるだろう。出雲駅伝は最終6区の平林清澄(4年)にトップでタスキをつなぐと、主将は、駒大・篠原倖太朗(4年)との「エース対決」に完勝した。全日本は登録選手の10000m上位8人平均タイムでトップ(28分16秒60)。前回3位のメンバーが7人残っているだけでなく、今年のチームは伊勢路の戦いにフィットする。
出雲Vメンバー6人に加えて、前回1区6位の後村光星(2年)、同4区4位の高山豪起(3年)、同6区5位の嘉数純平(3年)。それから10000m28分49秒49を持つ飯國新太(1年)ら新戦力もいる。
前半のスピード区間は2年連続で2区を任された山本歩夢(4年)、前回3区3位の上原琉翔(3年)、出雲1区3位の青木瑠郁(2年)らが候補か。青木は2年連続で5区を担当(1年時は区間賞)しており、中盤のポイント区間に起用してもいい。
ほかにも10000m28分17秒98の野中恒亨(2年)は出雲4区で区間賞。同28分27秒93の辻原輝(2年)は出雲3区(4位)で他校のエースと競り合った。後半区間は前回経験者の高山、嘉数がいる。特に高山は5月の関東インカレ2部ハーフマラソンで太田蒼生(青学大4)と10秒差の3位に入っており、アンカー起用も考えられる。
そして何よりエース平林の存在が大きい。伊勢路では3年連続で7区を担い、前回は区間賞。マラソン日本学生記録保持者は出雲6区(10.2km)で駒大・篠原と青学大・太田に36秒差をつけており、全日本7区(17.6㎞)ではさらにアドバンテージを奪うことができるだろう。7区平林の終了時で40~50秒以上のリードを確保できれば、初優勝は濃厚だ。
【駒大と青学大の勝ちパターンは?】
駒大は前回、一度も首位を譲らずに4連覇を達成した。2区・佐藤圭汰(3年)が区間賞・区間新記録の快走で〝独走V〟の流れを作ったが、佐藤の参戦は微妙な状況だ。果たしてどのようなオーダーを組んでくるのか。
駒大はエースを7区に配置するのが伝統になりつつあり、順当なら篠原倖太朗(4年)が7区に入るだろう。前回は山川拓馬(3年)が最終8区で区間賞を獲得しており、最後にふたりを並べる配置になれば、終盤のロング区間は超強力だ。
1~6区は出雲を好走した桑田駿介(1年)、帰山侑大(3年)、伊藤蒼唯(3年)、島子公佑(2年)。それから"もうひとつの出雲駅伝"と呼ばれる出雲市陸協記録会の5000mで13分49秒71の自己新でトップを飾った谷中晴(1年)らで國學院大と青学大に食らいついていきたい。
もしくは篠原を2区や3区に起用して、前半勝負を仕掛けてくるのか。いずれにしても主将・篠原の区間で〝5連覇の道筋〟を立てたいところだ。
青学大は前回の準優勝メンバーが5人残っている。そこに5000m13分18秒51の鶴川正也(4年)、同5000m13分28秒78の折田壮太(1年)、10000m28分23秒99の白石光星(4年)、出雲2区6位の野村昭夢(4年)らが入る布陣になる。
今季は鶴川が充実しており、出雲は1区で区間賞。全日本でも序盤のスピード区間に配置されそうだ。さらに前回2区2位(区間新)の黒田朝日(3年)は今季10000mで27分52秒02をマーク。何区に起用されても区間賞争いができるだろう。
前回の箱根駅伝3区で異次元の走りを見せた太田蒼生(4年)は前回と同じ7区(5位)か。前回アンカー(8区3位)を務めた田中悠登(4年)も登録された。國學院大、駒大との戦いを考えると、エース黒田の区間で勝利への流れを作り、そのまま逃げ切りたい。
【攻撃力のある創価大は要注意】
そして〝3強〟を脅かす存在になりそうなのが創価大だ。出雲駅伝は留学生を欠きながら過去最高の4位。順位以上に前半のインパクトが大きかった。
2区・吉田響(4年)がトップと26秒差の10位でスタートすると、一気に首位へ。区間2位に32秒差をつける圧倒的な区間賞で14秒のリードを奪ったのだ。さらに3区に抜擢された山口翔輝(1年)も区間7位と健闘。3回目の出場となる全日本に向けて、収穫が多かった。
榎木和貴監督は、「全日本は優勝を狙いつつ、最低限『3位以上』という目標をクリアしたい」と話しており、出雲同様に前半から仕掛けていきたい考えだ。
前回は2区で11位まで順位を落としているだけに、前回5区区間賞の吉田響を2区(もしくは3区)に配置して、さらに日本インカレ5000王者のスティーブン・ムチーニ(2年)を中盤区間に起用するプランを検討中。ムチーニが終わった時点で大量リードを確保ができれば、2021年の正月に見せたような〝独走劇〟も夢ではない。
それから箱根駅伝予選会校では中大が面白い。失敗が許されないレースに吉居駿恭(3年)、溜池一太(3年)、柴田大地(2年)というエース格3人が登録外となり、1年生5人を起用。それでも大崩れすることなく、6位で通過した。
溜池と柴田は故障の影響で外れたが、吉居と日本インカレ3000m障害2位の浦田優斗(4年)は全日本に合わせるための温存だった。また今季5000mと10000mで自己ベスト(13分44秒96、28分33秒76)を更新している本間颯(2年)は予選会にエントリーされたが、あえて起用を見送っている。
「全日本は予選会のダメージもありますが、浦田、本間、駿恭を軸に面白いレースができるんじゃないかなと思っています」と藤原正和駅伝監督。「5位以内」という目標を掲げて、伊勢路に挑む。
ほかにも前回過去最高の5位に食い込んだ城西大、出雲6位の早稲田大、登録選手10000m上位8人の平均タイム3位の大東文化大などが上位を狙っている。
【関東勢以外の注目チームは?】
3年ぶりの出場となる京産大は中村(写真)、小嶋らで関東勢に食らいつく
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関東勢以外では、最多49回目の出場となる京都産業大に注目したい。4年ぶりに参戦した出雲駅伝は5000mで13分51秒50を持つ1区・中村光稀(4年)が8位と好発進。日本インカレ10000mで日本人トップに輝いた小嶋郁依斗(4年)が3区で区間5位と健闘して、12位に食い込んだ。全日本は3年ぶりの出場となるが、エース小嶋は「長距離区間で区間3位以内が目標です」と打倒・関東に燃えている。
ほかにも関西学連選考会をトップで通過した関西大、地元を走る皇學館大、中国四国地区を勝ち抜き、初出場する岡山大が伊勢路を彩る。
また日本学連選抜には箱根駅伝6区で区間賞を獲得している武田和馬(法政大4年)、10000m28分11秒20の片川祐大(亜細亜大4年)、同28分29秒16の金子佑太朗(筑波大4年)という有力ランナーが選出されている。オーダー次第では前半区間で上位争いに加わりそうだ。
レース当日、三重県伊勢市は気温が20度を超える予報になっている。10月19日の箱根駅伝予選会は"酷暑"に苦しんだチームが続出したように、天候次第では終盤のロング区間(7、8区)で順位が大きく変動する。優勝争いだけでなく、シード権(8位以内)をめぐる戦いも最後まで目が離せない。