今季の学生3大駅伝第2戦、全日本大学駅伝は11月3日、名古屋市熱田神宮西門前スタート、三重・伊勢市伊勢神宮内宮宇治橋前ゴールの8区間106・8キロで行われる。1~8区と補欠5人の区間登録が31日正午に締め切られ、6年ぶり3度目の優勝を狙う…
今季の学生3大駅伝第2戦、全日本大学駅伝は11月3日、名古屋市熱田神宮西門前スタート、三重・伊勢市伊勢神宮内宮宇治橋前ゴールの8区間106・8キロで行われる。1~8区と補欠5人の区間登録が31日正午に締め切られ、6年ぶり3度目の優勝を狙う青学大は、序盤のポイント区間の2区(11・1キロ)に今季絶好調の鶴川正也(4年)を登録した。3区(11・9キロ)には5000メートル日本高校歴代2位(13分28秒78)の自己ベストを持つ期待のルーキー折田壮太、4区(11・8キロ)にはエース黒田朝日(3年)の弟・然(ぜん、1年)が抜てきされた。原晋監督(57)が「駅伝男」と呼び、絶対の信頼を寄せる太田蒼生(4年)と黒田朝日は補欠登録。当日変更で「勝負区間」に投入されることが見込まれる。
青学大は今年1月の第100回箱根駅伝では総合新記録で2年ぶり7度目の優勝を飾った。年度またぎの大学3大駅伝連勝を狙った今季開幕戦の出雲駅伝(10月14日、島根・出雲市=6区間45・1キロ)では5区まで国学院大、駒大と激しい優勝争いを演じたが、アンカー平林清澄(4年)の力走で5年ぶり2度目の優勝を飾った国学院大とは1分差、2位の駒大とは20秒差の3位に終わった。出雲駅伝で「かっとばせ!大作戦」を発令した原監督は「大ホームランを打ちたかったけど、ポテンヒットだった。辛うじて次にはつながった。全日本大学駅伝で巻き返したい」と意気込む。
出雲路の借りを伊勢路で返すため、強力なオーダーが組まれた。
1区(9・5キロ)には今年の箱根駅伝で優勝のゴールテープを切ったスピードランナーの宇田川瞬矢(3年)を登録。各校のエース級が集う2区は「絶好調男」の鶴川が担う。
鶴川は熊本・九州学院3年時に全国高校駅伝「花の1区」(10キロ)で区間賞を獲得するなど世代トップ選手として鳴り物入りで入学したが、3年時まで学生3大駅伝の出場は昨年の出雲駅伝6区8位だけ。今年の第100回箱根駅伝では16人の登録メンバーから外れた。同3区で日本人歴代最高タイムで区間賞を獲得し、優勝に貢献した太田ら同期に比べ「昨年まで期待外れに終わっている」と自ら話す。「箱根駅伝ではチームが勝ったことはうれしかったけど、自分自身は悔しい気持ちもありました」と正直に明かす。
3年間の悔しさをぶつけ、4年目に本来の輝きを取り戻した。日本選手権(6月)5000メートルで屋外レースとしては日本人学生歴代最高(当時)の13分18秒51で学生トップの4位。開幕戦の出雲駅伝では1区で3大駅伝初の区間賞を獲得した。「全国高校駅伝の区間賞より何倍もうれしかった」と話した。ただ、鶴川の未知数の能力に期待する原監督は「後続をもっと引き離してほしかった。それが駅伝だ」と、あえて合格点を出さなかった。ムードメーカーでもある鶴川が伊勢路の2区でどんな走りをするか。レース全体の流れを左右することになる。
3区に折田、4区に黒田然と連続して1年生を抜てき。「ルーキーたちは元気いっぱいです。1年生らしい思い切りのいい走りをしてほしい」と原監督は期待を込めて話した。
5区(12・4キロ)、6区(12・8キロ)、7区(17・6キロ)は最上級生が登録された。
5区は主将の田中悠登(4年)が担う。福井・敦賀気比高出身の田中は2年時の第99回箱根駅伝では8区を走り、区間5位。3年時の昨季は、全日本大学駅伝では最長の最終8区で区間3位と好走し、国学院大と中大との激しい2位争いに競り勝った。箱根駅伝でも8区に登録されたが、左足付け根部分を故障したため、当日変更で塩出翔太(3年)と交代し、出番なしに終わった。4年時の今季は主将としてチームを率いると同時に、2年時から志望していたアナウンサーになるため、ひとりの学生として就職活動にも尽力し、地元テレビ局の福井放送への就職が内定。競技人生ラストシーズンにかける思いは強い。「安定感では負けない自信があります。選手として走って優勝に貢献したい」ときっぱり話す。
6区の白石光星(4年)は2年ぶりの3大駅伝出走となる。2年時の全日本大学駅伝では2区に抜てきされたが、区間16位と苦戦し、11人に抜かれた。その後、3大駅伝出場の出番はなかったが、腐ることなく地道な努力を続けた。原監督も「白石光星はチームで一番、走り込んでいる」と評価する。2年ぶりの伊勢路でリベンジする準備を万全に整えている。
エース区間の7区(17・6キロ)は主力選手のひとりの若林宏樹(4年)が登録された。今年の箱根駅伝5区で区間新記録の区間2位と好走し、優勝に貢献。今季の初戦の出雲駅伝では5区5位とやや不調に終わったが、本来の実力を発揮すれば他校のエース級と対等に戦える力を持つ。
最長の最終8区(19・7キロ)は今年の箱根駅伝8区で歴代3位の好タイムで区間賞を獲得した塩出翔太(3年)。単独走の安定感は抜群だ。
さらに当日変更によって、どの区間にも投入することができる補欠にも強力なメンバーがそろう。今年の箱根駅伝3区で日本人歴代最高タイムで区間賞を獲得し太田、同2区で日本人歴代2位の好記録で区間賞を獲得した黒田朝日のダブルエースが温存された。同6区2位の野村昭夢(4年)、急成長中の平松享祐(2年)、安島莉玖(1年)も当日変更で投入される可能性は十分にある。
「出雲駅伝と同じく全日本大学駅伝でも、国学院大、駒大とアンカーまで勝負がもつれるような展開になるでしょう。全員で勝ちに行きます」と原監督は意気込む。
国学院大、駒大、青学大の「3強」を中心に、出雲駅伝4位の創価大、同6位の早大、同7位の城西大、さらには今年の箱根駅伝13位で出雲駅伝には出場できなかった中大なども序盤に流れに乗れば優勝争いに加わる力を持つ。
全日本大学駅伝は2018年から区間割が大きく変更され、7区が2番目に長い17・6キロ、最終8区が最長の19・7キロとなった。駅伝は「先手必勝」が鉄則だが、主力選手を序盤の区間に投入するか、終盤の長い区間に残すか、各校の戦略も大会の見所となる。伊勢路でも、出雲路に続く熱いレースが期待される。その熱は、箱根路まで続く。
全日本大学駅伝の大会ルールでは、出場各校が10月9日に選手16人を登録。その中から10月31日正午までに1~8区の選手と補欠5人を登録。レース当日の午前6時30分まで区間登録選手と補欠登録選手を3人以内、交代できる。
青学大の区間登録選手と補欠は以下の通り。
▽1区( 9・5キロ)宇田川瞬矢(3年)
▽2区(11・1キロ)鶴川 正也(4年)
▽3区(11・9キロ)折田 壮太(1年)
▽4区(11・8キロ)黒田 然 (1年)
▽5区(12・4キロ)田中 悠登(4年)
▽6区(12・8キロ)白石 光星(4年)
▽7区(17・6キロ)若林 宏樹(4年)
▽8区(19・7キロ)塩出 翔太(3年)
▽補欠 太田 蒼生(4年)
野村 昭夢(4年)
黒田 朝日(3年)
平松 享祐(2年)
安島 莉玖(1年)