試合後の記者会見で、大阪ブルテオンのロラン・ティリ監督に、西田有志のキャラクター、パーソナリティについて尋ねた。「Enthusiasm」 ティリ監督は「熱意、やる気」という言葉で端的に表わし、こう語っている。「西田選手は常に100%で、試…

 試合後の記者会見で、大阪ブルテオンのロラン・ティリ監督に、西田有志のキャラクター、パーソナリティについて尋ねた。

「Enthusiasm」

 ティリ監督は「熱意、やる気」という言葉で端的に表わし、こう語っている。

「西田選手は常に100%で、試合ですべてを出し尽くすことができます。たまにやりすぎるほどですが(笑)。いつもポジティブで、チームにとって重要な選手です。今年の夏からSVリーグが開幕して6試合、すべてにハイレベルなプレーをし続けてくれています。なるべく、そのレベルが落ちないようにするのが大事ですが、ここまでは大活躍してくれていますね」

 西田の存在は、チームに活力を与えていた。それは日本代表で戦ったパリ五輪までのさまざまな大会と何ら変わりがない。彼がコートに立つだけで、チームの力が底から湧き立つような気配が漂う。

 コートでの爛漫さは、天賦の才だ。



大阪ブルテオンの攻撃を牽引している西田有志 photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 10月27日、大阪・枚方市。パナソニックアリーナではSVリーグ、ブルテオンがウルフドッグス名古屋を迎え撃っている。前日はフルセットの末、勝利していた。

 1セット目、ニミル・アブデルアジズを中心に強烈なサーバーを擁する名古屋に対し、ブルテオンは後手に回る。相手がリベロの山本智大を避けたことで、防御システムがややノッキング。22-25で競り負けてしまった。

 2セット目、オポジットの西田が中心になって、チームは目を覚ます。中盤までは15-13と拮抗するも、西田が豪快なスパイクを叩き込んでブレイクに成功すると、さらにサービスエース。これで18-14と一気に突き放し、相手ベンチがたまらずタイムアウトをとるほどだった。名古屋も地力を見せ、ニミル、ティネ・ウルナウトが次々にブレイクに成功し、19?20と逆転された......。

 ここで西田が悪い流れを止める。豪快な跳躍から一撃を突き刺し、同点に追いつく。お互いがポイントを取り、ジリジリとした展開になるが、名古屋が先に取ったマッチポイントに対し、再び西田が巧みにブロックアウトをとって決めて追いつく。直後には2本連続でサービスエースを決め、勝ち誇った獣のような咆哮を上げた。

【試合の流れを引き寄せる活躍】

「あそこ(サーブ)は勝負しても大丈夫な場面でしたし、もしビハインドだったら、メンタル面も違いますけど。そのなかでエースを取った、というところで、一気にこっちに流れが来たのかなって思います」

 西田は静かなトーンだが、確信を込めて言う。

「そういう(流れをものにしなければならない)シチュエーションって、どの選手も決め急いでしまうんで......その前のS5(バックレフト)のローテでも、自分にトスを上げてくれてブロックアウトを狙って、あそこに打っているんですが、そこは大きかったと思います。何回も何回も、ああいう場面を経験してきて、やっぱり焦っても点数を取れない。一歩引いてやるっていうことをしています」

 彼は淡々と言うが、コートでは気力に満ちていた。ここぞ、という場面で輝く。それは英雄的な仕事だ。

 おそらく、このセットを26-24で取った局面が、この試合のターニングポイントだった。

「(序盤は)我々の試合だったが......。惜しむらくは2セット目の終盤、西田選手のサーブに対して、もう少し精度が高いプレーができていたら......」(名古屋、バルドヴィン・ヴァレリオ監督)

 敵将も、そう言って唸るほどだ。

 3セット目も、西田が中盤に連続得点で突き放した。彼は続けて要所で流れを引き寄せ、バックアタックは止められない迫力があった。仕上げはレフトから強烈に左腕を振って、25-23で再び接戦をものにした。

 4セット目は、すでに流れに乗っていただけに、25-16と粉砕。逆転する格好でセットカウント、3-1で勝利を収めた。

「タフな試合が続いていて、昨日の疲れもありながら、勝ちきれることができました。でも、これに満足せず、さらによいパフォーマンスができるように......」

 西田は試合後に語ったが、接戦を制するめざましい活躍だった。ホームゲームは瞠目すべき熱気で、彼はSVリーグのトップスターとしての"使命"を果たしている。チームは連勝で5勝1敗とし、ジェイテクトSTINGS愛知と勝率で並んで首位だ。

「使命というより、選手としてはプレーするしかないです。チームが勝てる状況を作る。それが自分のなかでは一番。それをできるかできないか、で注目度は変わってくる。自分たちが勝って、そのあとにどう人がついてきてくれるか」

 そう西田は言う。彼は勝ち筋を見出し、それを実行する。チームを栄光に導くキャラクターだ。

 ティリ監督は、こうも西田を表現していた。

「Good Energy」

 それは「いいエネルギー」で、力を生み出す源泉のようなものか。

「ジェスキー(・トーマス)、ロペス(・ミゲル)、そして西田とそれぞれクオリティが高い選手がいますが、タフなリーグを戦うなか、西田はスパイクでエネルギーをチームに与えられるのです」

 西田の眩い一挙手一投足が、チームを輝かせる。