ジョコビッチが勝負どころで違いを見せる王者に対して、若き才能はこれ以上ないプレーを見せた。しかし、勝負どころでのわずかな差からストレートで敗れた。7月9日、ウィンブルドン男子シングルス準決勝、第1シ…

ジョコビッチが勝負どころで違いを見せる

王者に対して、若き才能はこれ以上ないプレーを見せた。
しかし、勝負どころでのわずかな差からストレートで敗れた。

7月9日、ウィンブルドン男子シングルス準決勝、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア/世界ランク1位)は第10シード、デニス・シャポバロフ(カナダ/同12位)と対戦。7-6(3)、7-5、7-5で勝利し、ウィンブルドンとしては3大会連続7度目での決勝進出を決めた。


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ジョコビッチは、1回戦でジャック・ドレーパー(イギリス/同253)に1セットを奪われた以外は、2回戦ケビン・アンダーソン(南アフリカ/同102位)、3回戦デニス・クドラ(アメリカ/同114位)、4回戦の第17シード、クリスチャン・ガリン(チリ/同20位)、準々決勝のマートン・フチョビッチ(ハンガリー/同48位)はストレート勝ち。本人も「調子がいい」と言っているが、ほぼ完璧な内容で勝ち上がってきている。

一方、シャポバロフは、1回戦フィリップ・コールシュレイバー(ドイツ/同115位)にフルセット勝利。2回戦パブロ・アンドゥハル(スペイン/同70位)は不戦敗、3回戦アンディ・マレー(イギリス/同118位)、4回戦第8シードのロベルト・バウティスタ・アグ(スペイン/同10位)にストレート勝利。第10シードのカレン・カチャノフ(ロシア)とは3時間26分の激闘を制して、フルセット勝利しキャリア初のグランドスラム準決勝進出を果たしている。

第1セット、シャポバロフは最初から飛ばしていた。第2ゲームでキープをすると、続く第3ゲーム、ジョコビッチの予想の上を行くショットを披露して先にブレークに成功。すると、第4ゲーム、第6ゲーム、第8ゲームと3ゲーム連続でラブゲームキープ。流れを掴んだかに見えた。ところが、第10ゲーム、ジョコビッチが集中力を高める。シャポバロフのわずかな隙を見逃さず、ブレークバックに成功するとタイブレークに突入。開始8ポイントで7本がミニブレークという稀に見る展開となったが、ジョコビッチが7-3でセットを先取する。

第2セット、第3セットでもシャポバロフは集中力を落とすことなくプレー。しかし、いずれも第11ゲーム、第1セットと同じシーンを見ているかのように、ジョコビッチがブレークに成功。ストレートでシャポバロフを退けた。彼は11回のブレークチャンスのうち10回を逃しました。ウィナーの数は、ジョコビッチ(33)を上回る40本。しかし、アンフォーストエラーはジョコビッチが15本でシャポバロフは36本。シャポバロフは11本のブレークポイントを握ったが、ブレークに成功したのは第1セットの1ゲームのみだった。

ジョコビッチは記者会見で「今日は、3セットとも非常に拮抗した試合になった。特に、最初の2セットで彼は私の予想以上に素晴らしいプレーを見せた。第1セットで素晴らしいサーブを見せ、第2セットはほとんど彼のペースだった。多くのチャンスがあったが、彼がそこで締めることができなかった。彼は、昨年よりミスが減ってより成熟した選手になったと思う。常に非常にアグレッシブな選手でウィナーを量産し、ネットに出て、コートの後ろからでも決定打を打てる。彼はどうポイントを奪うかを理解していると思う。ただ、重要なポイントでそれが欠けていた。そこで私は彼からエラーを引き出すことができた」とシャポバロフの才能を認めつつ、要所で差を作れたと説明している。

シャポバロフの才能を認めるからこそ、異例の行動に出る。
シャポバロフは記者会見で「ロッカールームで彼が近づいてきて『君がどれだけ困難な状況にあるかが私にはわかる。いずれ、君にすべての報いが来るはずだ』と言葉をかけてくれたんだ。彼からそんな言葉を聞けたことは大きいよ。わざわざ、そんなことを言う必要はないわけだからね。彼がどんな人なのかを表している行動だと思う。彼のことを非常に尊敬しているし、まちがいなく史上最高の選手の一人である彼から、そういった言葉を聞けたことが素晴らしいことだった」とジョコビッチから言葉をかけられたことをと明かしている。

グランドスラム20度目の優勝を目指して臨むウィンブルドン決勝は、第7シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア/同9位)と戦うことになるジョコビッチ。その決勝は“両者にとって厳しい戦いになるだろう”と語っている。

「決勝に進んで戦うこと、それは私にとってすべてを意味する。そのためにここに来たわけだし、そのためにプレーをしている。決勝では何でもできると思う。明らかに経験では私が上だ。しかし、ベレッティーニは今年、グラスコートで多くの試合に勝ち、クイーンズで優勝している。それに彼にはビッグサーブがあり、大胆にプレーする。両者にとって厳しい戦いになると思う。それでも、素晴らしい戦いを楽しみにしているよ」

男子シングルス決勝は、ウィンブルドン最終日の7月11日、センターコートで行われる。

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