サッカー女子日本代表が、新たなスタートを切った。佐々木則夫監督代行、内田篤人コーチの下、韓国代表との親善試合で快勝したのだ。だが、「新チームを指揮したのが監督代行だった」こと以外にも、気にかかることが多かったと言うのは、サッカージャーナリ…

 サッカー女子日本代表が、新たなスタートを切った。佐々木則夫監督代行、内田篤人コーチの下、韓国代表との親善試合で快勝したのだ。だが、「新チームを指揮したのが監督代行だった」こと以外にも、気にかかることが多かったと言うのは、サッカージャーナリストの後藤健生。新生なでしこジャパンが今後、W杯王者スペイン、五輪金アメリカを破って、世界の頂点に立つために必要なことは何か? その船出にあたってベテラン記者が飛躍を妨げる「大問題」、落とし穴の存在について指摘する!

■監督代行が試した「2つの新機軸」

 たしかに、佐々木則夫監督代行は、それなりに新しい試みもしていた。

 たとえば、このところ3バックをメインに戦ってきた女子代表としては、久しぶりにフラットな4バックでの戦いを試みた。

「4ー4ー2のほうが、変化できる」と言う理由だったという。状況によっては、「4-4-2から4-1-4-1に変化させることも考えていたというのだ。

 また、スピードとパワーのある清家貴子を田中美南と組んでトップに起用する新機軸も試みたが、こちらは考えていたより早い前半20分過ぎに右サイドで先発した藤野あおばとポジションを交換することになった。

 そうした新機軸も、これから就任する監督にとってどの程度の意味があるかは分からないことだ。

 そうなると、久しぶりに(パリ・オリンピック準々決勝以来)代表選手がともにプレーすることで、これまで培ってきたコンビネーションを再確認させることくらいしか、意味はなかったのではないだろうか。

 むしろ、大敗したとはいえ、世界のトップクラスの日本と対戦した韓国にとってのほうが、将来に向けて意味のある試合だったのかもしれない。

 もっとも、韓国の先発11人のうち8人が30歳台のベテランというのでは、これがどこまで将来につながるのかは定かではないが……。

■問わざるを得ない「委員長の責任」

 試合後の記者会見で、佐々木監督代行は久しぶりに指揮を執った点について「監督を決めていなかったから、こういう立場になった」と自虐的なコメントで笑いをとっていたが、まさにその通りだ。

 本来なら、次の目標に向けて新監督の下でのスタートとなるべき試合だったにもかかわらず、新監督を決められなかったこと。そして、チーム強化に役に立ちそうな“歯ごたえのある”相手とのマッチメークができなかったこと。2つの意味で、女子委員長としての佐々木則夫氏の責任を問わざるを得ない試合だった。

 また、もし後任監督が決まらなかったのだとしても、何も「昔の名前」を引っ張り出すべきだったのかという疑問も感じる。

 たとえば、コーチとしてベンチに入った狩野倫久前U-20女子代表監督を暫定監督として指揮を執らせてもよかったのではないだろうか?

 池田太監督も、その前任の高倉麻子監督も、ともにU-20代表監督を経てフル代表(なでしこジャパン)の監督に就任したのだ。とするなら、次期監督としても狩野監督がそのまま昇格してもおかしくはなかった。

 僕は、U-20ワールドカップでの指揮ぶりを見て、狩野監督にはもう少し、実戦の経験を積んでほしいので代表監督への昇格には反対だが、ただ、狩野監督に経験を積ませるという意味では、今回の韓国戦で指揮を執らせてみることも意味があったはずだ。

 今後、現場に復帰することはないであろう(?)佐々木則夫氏がこの試合で代行を務めたことも、それがどれだけ意味のあることだったのか。

■将来性あふれる「タレント」がそろう

 韓国戦は相手が物足りない面はあったが、やはりトランジションの早さや、パスの選択肢の多彩さなどで、日本は圧倒的に上回っていた。

 また、藤野や浜野まいかといった若手も、もはやチームの中堅となりつつあるし、さらにその下の世代の谷川萌々子や古賀塔子といったタレントも代表に馴染んできている。各選手が若くしてヨーロッパのクラブに渡って経験を積んでいることもあって、日本女子代表には将来性が感じられる。

 さらに、ワールドカップ決勝戦で北朝鮮に敗れて準優勝に終わったものの、U-20代表も素晴らしいチームだったし、こちらはよもやの準々決勝敗退に終わったU-17代表にも、眞城美春のような将来性あふれるタレントがそろっている。

 そういう意味でも、これから決まるであろう新監督の手腕に期待したいところだ。

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