今週末は、第62回アルゼンチン共和国杯(GII、東京芝2500m)が行われる。
惜敗続きにピリオドを打ちたいハーツクライ産駒のセレシオン、キズナ産駒の4歳馬サヴォーナ、目黒記念3着から臨むロードカナロア産駒クロミナンスをはじめ、多彩な血統構成の馬が集結。
ここでは、馬券検討のヒントとなる「血統」で本競走を攻略する。
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■力のあるトニービン内包馬は積極的に狙いたい
過去10年で父サンデーサイレンス系が7勝。芝の重賞ということで出走数自体が多い同系の好走数が増えるのは自明の利ではあるのだが、もう少し細かく見てみると若干の偏りがあることが分かる。
・父ハーツクライ系【3.2.1.16】勝率13.6%、連対率22.7%、複勝率27.3%。うちハーツクライ産駒【3.2.1.15】勝率14.3%、連対率23.8%、複勝率28.6%。
・父ディープインパクト系【1.1.1.25】勝率3.6%、連対率7.1%、複勝率10.7%。うちディープインパクト産駒【1.1.0.24】勝率3.8%、連対率7.7%、複勝率7.7%。
・父ステイゴールド系【3.0.1.21】勝率12.0%、連対率12.0%、複勝率16.0%。うちステイゴールド産駒【1.0.1.13】勝率6.7%、連対率6.7%、複勝率13.3%。
ご覧のとおり、サンデー系の主要3系統で比較すると父ハーツクライ系が優勢。
ハーツクライと言えば母父に入るトニービンの血が特徴。ウイニングチケット、エアグルーヴ、ジャングルポケットなどなど、かつて府中の芝GIを庭とした名血は、代を経てもその東京競馬場適性を脈々と伝えるということだろう。
ちなみに東京競馬場がリニューアルされた2003年以降のアルゼンチン共和国杯において、トニービン内包かつ当日5番人気以内に支持された馬は【6.8.2.19】で、勝率17.1%、複勝率45.7%をマーク。当日人気に支持されるのは、それまでに相応のパフォーマンスを見せていたことの裏返し。力のあるトニービン内包馬は積極的に狙っていける。
■セレシオンの距離延長はむしろ好感
今回注目したいのは、ハーツクライ産駒。ここでは該当馬のセレシオンをピックアップする。
父はハーツクライ、母クルソラからはダートの重賞で活躍したピオネロや桜花賞2着、オークス3着のクルミナルなどが出る。
前述したようにこのレースでのハーツクライ産駒は狙いが立つ。出走馬の顔ぶれを見ても当日上位人気に支持されそうで、「当日人気に支持されたトニービン内包馬」に該当するのはシンプルに加点要素だ。
距離延長がポイントに挙げられるが個人的にはむしろ好感。かえって良さが出ると見る。
リファールクロスを抱えるため、恐らく前受けしての粘り強さこそが本懐。500mの延長で出脚の遅さをカバーできれば本質的な血統の良さが出る。
母父キャンディストライプスは天皇賞・秋を3番手抜け出しで制したバブルガムフェローの半兄で、それを念頭にセレシオンの血統を眺めると、「リファールマシのバブルガムフェローにブラッシンググルームとトニービンを足して南米血統でまとめました」という配合。スパッと切れる末脚で面倒を見るより、先行してハイペリオン的なスタミナでジワジワっと踏ん張った方が良さが出るはずだ。
そのうえ管理するのは友道厩舎。
ダートでデビューしたフレンチデピュティ産駒にアルゼンチン共和国杯、阪神大賞典、そして天皇賞・春を勝たせる厩舎なわけだから、ハーツクライ産駒ならよっぽど好走させやすいはず。
ちなみに友道厩舎がアルゼンチン共和国杯に管理馬を出走させた場合の通算成績は【2.1.4.8】で複勝率46.7%。当日5番人気以内だと【2.1.4.2】で複勝率77.8%まで数字が跳ね上がる。中長距離に強い厩舎カラー。人気の友道にはアルゼンチン共和国杯ではちょっと逆らいにくい。
あとは枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論に至りたい。
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著者プロフィール
ドクトル井上 【重賞深掘りプロジェクト】血統サイエンティスト。在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。