SC軽井沢クラブ上野結生インタビュー(前編)2023-2024シーズンのカーリング日本選手権(1月27日~2月4日/北海道・札幌)で初優勝を飾ったSC軽井沢クラブ。その後、女子日本代表として世界選手権(3月16日~24日/カナダ・シドニー)…

SC軽井沢クラブ
上野結生インタビュー(前編)

2023-2024シーズンのカーリング日本選手権(1月27日~2月4日/北海道・札幌)で初優勝を飾ったSC軽井沢クラブ。その後、女子日本代表として世界選手権(3月16日~24日/カナダ・シドニー)に臨んだ。そして現在は、2024-2025シーズンの世界選手権への日本の出場権獲得を目指して、カナダ・ラクームで開催されているパンコンチネンタル選手権(10月27日~11月2日)に挑んでいる。日本の2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への出場にも関わる重要な一戦を前にして、同チームで奮闘する上野結生に話を聞いた――。



photo by Fujimaki Goh

――上野結生選手がカーリングを始めたのは、姉の美優選手と一緒に参加した体験会がきっかけと聞いています。

「はい。8歳の時ですね。それが楽しくて(カーリングに)ハマッてしまったのがきっかけです」

――まだ小学校低学年。アイスの上で転んでしまうこともあったでしょうでし、ストーンも狙ったところには置けなかったのではないですか。

「そうですね。でも、その時はカーリングというスポーツよりも、アイスの上で遊ぶのがとにかく楽しくて。石は重かったけれど、だんだん扱えるような年齢になってくると、ドローとかできるようになって、そこからカーリングの面白さを発見した感じです」

――その過程で「できない」とか「勝てない」とか、悔しい思いや挫折もあったりして、カーリングをやめてしまうケースもあるなかで、ずっと楽しく競技を続けてこられたのでしょうか。

「これまで大負けした、絶対にこの人には勝てないっていう経験があまりなかったかもしれません。自分の性格的にも、やめるとしてもやりきったあとで『ダメだ、絶対に勝てない!』ってならないと、たぶんやめないと思うんです。そういった点では、そんなに大きな挫折も、壁も、今のところはまだありません」

――事実、結生選手はジュニア世代から国内外ですばらしい結果を残してきました。世界ジュニア選手権ファイナルのアイスに3度も乗って、金(2022年)、銀(2023年)、銀(2024年)と3つのメダルを持っている選手はなかなかいません。金メダルは姉の美優選手と同じチームで獲得していますが、美優選手のストロングポイントをどのように分析していますか。

「姉は、イメージとしてはわりとドローが得意と言われているのですが、速いウェイトのショットも強みだと思います。メンタルの部分では、マイナスな感情を試合中に出さず、どんな場面でもチームメイトに対して『ナイス』と声をかけてニコニコしているのは、ほかのスキップにはない姉のよさかもしれません」

――確かに、いつも楽しそうにカーリングをしている印象があります。そこは、ある程度意識してそうしているのか、本当に「カーリング大好き!」という人なのか、妹の目から見ていかがですか。

「そもそもの土台がカーリング好きで、いつも『カーリングが楽しいからやる』って言っているので、ああいうふうにニコニコしてやっているんだと思います」

――やはり基本的に明るい方なのですね。姉妹で喧嘩をしたりすることはあるのでしょうか。

「ときどき、あります。もう本当にささいなことで。お弁当箱をどっちが洗うか、とか(笑)」

――カーリングの話を家ですることはありますか。

「することもあります。『こんな練習したいよね』とか、『カナダのあの街がきれいだったね』とか」

――そのカナダなど、海外遠征におけるチーム内の役割はどういった感じなのでしょうか。

「(移動する車の)運転は(西室)淳子さんがしてくれて、姉はだいたい移動中のDJですね。自分が好きな音楽というより、みんなの好きな曲を集めて流してくれます」

――結生選手のプライベートな話も少し聞かせてください。現在、長野大学の環境ツーリズム学部の4年生ですが、卒業に向けて単位などはしっかり取れていますか。

「単位はほぼほぼ取っているので、大丈夫だと思います。あとは、ゼミの卒論ですね」

――差し支えなければ、卒論のテーマを教えていただけますか。

「軽井沢町の交通渋滞による環境への影響、みたいな感じです。地域新聞の過去記事などを参考にしながら書いています」

――卒業後の進路、就職など、今後についてはどう考えていますか。

「基本的にはお仕事をさせていただきながらカーリングを続けたいので、クラブと相談しながら、今いろいろと進めているところです」

――ところで、この夏にはパリ五輪が開催されました。ご覧になりましたか。

「家族では柔道を見ていましたが、個人的には東京五輪の時から興味を持ったスポーツクライミングが面白かったです。リードという種目では、競技開始前に他国の選手であっても、選手同士がルートなどを相談(オブザベーション)しているのが、新鮮な驚きでした」

――パリ五輪をご覧になって、いろいろと刺激を受けた部分もあると思いますが、ご自身たちが目指す2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けて、改めて感じることなどはありましたか。

「やはりオリンピックっていう舞台は、世界選手権とはまたひと味違った、特別なものに見えてきています。もちろん自分も出場したいですし、ロコ・ソラーレさん(の成績)を超える金メダルも獲得したいです。ただ、カーリング人生において、オリンピックがすべてではなくて、オリンピックはどちらかというと目的に近いものです」

――というのは、どういうことでしょうか。

「カーリングを通して、人に勇気や希望を与えられる選手になりたい、というのが私の目標です。そのためには、多くの人の目に触れるオリンピックに出るのが目的。そこは見失わずに、カーリングを続けていきたいなって思っています」

(つづく)



photo by Fujimaki Goh

上野結生(うえの・ゆい)
2002年12月17日生まれ。長野県軽井沢町出身。SC軽井沢クラブ所属。8歳でカーリングを始め、器用で安定したショットを武器にジュニア時代からフロントエンドの選手として頭角を現わす。2022年から3年連続で世界ジュニア選手権ファイナルの舞台に立つなど、輝かしい実績も残している。2024年に日本選手権で初優勝を果たし、世界選手権のアイスでも好ショットを重ねた。長野大学環境ツーリズム学部4年生。趣味は編み物。