【自分たちはやれるんだ】 7年ぶりの日本シリーズで、連敗スタートとなってしまった横浜DeNAベイスターズ。 パ・リーグ覇者である福岡ソフトバンクホークスに対し、"打力"という自分たちの持ち味を活かせていない苦しい状況。今季、千葉ロッテマリー…

【自分たちはやれるんだ】

 7年ぶりの日本シリーズで、連敗スタートとなってしまった横浜DeNAベイスターズ。

 パ・リーグ覇者である福岡ソフトバンクホークスに対し、"打力"という自分たちの持ち味を活かせていない苦しい状況。今季、千葉ロッテマリーンズから移籍し、ソフトバンクをよく知るリリーバーの佐々木千隼は、この現状を次のように語った。

「ホークスは打つべくして打つ人間が打っている。僕たち投手陣は、とにかく連打にならないことを念頭にピッチングしています」



日本シリーズ第2戦、2番手の佐々木千隼にボールを渡すDeNA三浦大輔監督 photo by Sankei Visual

 すでに佐々木は2戦ともマウンドに立っているのだが、とくに第2戦は、3回1アウト二、三塁の場面で先発の大貫晋一に代わって火消しを務めている。

 シーズン後半からポストシーズンにかけ、フル回転となっているリリーフ陣。救援防御率は夏前までは3点台だったが、8月以降は2点台をキープし、チームの勝利に貢献してきた。

 ブルペン陣の踏ん張りがなければ、日本シリーズまでたどり着くことはなかったと言っても過言ではないだろう。佐々木は言う。

「ブルペンの雰囲気はいいですし、山﨑康晃さんを中心に、(みんなが)声を掛けてくれたり、鼓舞する姿勢を見せてくれるんで、自分たちはやれるんだって思えるようになっていますね」

【継承されるワンチームの精神】

 現ブルペン陣は、山﨑や佐々木をはじめ、森原康平、伊勢大夢、坂本裕哉、中川颯、堀岡隼人、J.B.ウェンデルケン、そして負傷により離脱してしまったが、徳山壮磨、中川虎大、ローワン・ウィックの活躍も忘れてはならない。

 風通しのいいDeNAブルペンと言われて、もう10年ほど時間が経つ。思えば7年前の日本シリーズのブルペン陣は、山﨑、三上朋也、田中健二朗、砂田毅樹、須田幸太、平田真吾、スペンサー・パットン、そしてエドウィン・エスコバーだった。

 その後は石田健大や三嶋一輝もブルペンの一員として戦ってきた。こう見ると隔世の感があり、若いブルペンになったと思わずにはいられない。

 クライマックスシリーズ(CS)からブルペン入りし、第2戦で2イニングを投げた濵口遥大は、リリーフ陣の変遷に思うことがあるという。普段、濵口は先発だが、過去にも戦況によってはブルペンに入ったこともあり、その様子を長年見てきている。

「まず強く感じるのは、もともと三上さんやヤス(山﨑)さんが築き上げてきた"ワンチーム"の精神は間違いなく継承されているということです。また若いブルペンなので、見方によっては経験がないととらえられがちだけど、逆に僕から見れば、思いっきりいける大胆さや怖いもの知らずで向かっていける強さを感じるんですよ。

 この戦う姿勢と、これまで継承してきたものが融合したら、もっといいブルペン陣になると思います。僕自身、一緒になって戦えて、めっちゃ楽しいなって」

【どんな場面でも「俺が、俺が」】

 ブルペンのまとまりについて、移籍して3年目、クローザーを務める森原は次のように語る。

「よくヤスとかが話すんですけど、ベイスターズって一般的なイメージだと"打力"のチームじゃないですか。だから『ブルペンやるじゃん』って言わせたいよねって。この言葉は、すごく印象に残っていますね」

 そして、リリーバー同士の絆となる"共感"する部分を次のように教えてくれた。

「ピッチャーって基本、守ることしかできないんです。勝つために攻撃することはできません。とくにリリーバーは、抑えるのが当たり前、打たれれば批判を浴びてしまう。勝っている試合を勝ったまま終わらせる。

 または負けている試合でも、破綻させないように我慢をして投げる。だからヒーローになるってことはめったになくて、それでも一生懸命頑張っているからこそ、みんな共感できるんですよ」

 決して重い口調ではなく、あくまでもライトな雰囲気で森原は語った。チームが稼働するために、地道に水を運ぶ役割。今でこそクローザーに収まっているが、森原もこれまでリリーバーとして多くの仕事を担ってきた。

「あと、うちのブルペンがいいなって思うのは、シーズン終盤、ギアを上げていくタイミングでミーティングをしたんですけど、大事な時期でしたからブルペン陣としては、どんな場面でマウンドに行こうと、気持ち的に差し込まれないようにしようって。

 だから、ブルペンの電話が鳴ったら『俺かも』って思うようにする。常に『俺が』って準備をしようって話したんです。もちろん役割が決まっていて、『この展開だから俺は関係ないな』って思う人間もいるかもしれないけど、それが表に出てしまうと場の空気感が緩んでしまうので、常に『俺が、俺が』で行こうって」

 振り返ればシーズン後半は、クローザーの森原以外は起用法での序列が常に変化していた。

 その日のコンディションを重視し、たとえばモップアップがメインだった佐々木や堀岡が勝ちパターンで投げるなど、臨機応変にマウンドを任されたが、そこで臆することなく対応することができたのは、「俺が」の気持ちが醸成されていたからだろう。

「とにかく想定内って状況をつくっておかなければ、パッと出されて、なかなか結果を残すことはできませんからね」

 森原は笑みを浮かべて続ける。

「それに、うちのブルペン陣は投げたがりが多いんですよ。僕もそうですけど、怖じ気づくようなしびれる場面であっても、投げたい、マウンドに立ちたいって思うピッチャーばかりなんですよね。楽しむしかないって」

【日本一へ横浜に戻ってきたい】

 もちろん先発の出来や打線のつながりが勝利への大きなファクターになるのだが、結果的にそれを成立させる存在がリリーフ陣であることは間違いない。

 決して目立たないが、誇り高き選手たち。彼らの尽力なくして、日本一を目指すことはできない。

 今季移籍し、雌伏の時を越えブルペンの一角として復活を遂げた前出の佐々木は、第3戦の福岡ラウンドに向けて次のように語る。

「日本一になるため、横浜に戻ってきたいと思っています。全然諦めていないし、ブルペン陣はもちろん、チーム一丸となって頑張っていきたいです」

 すでに2敗。だが、勝負はまだ終わりではない。DeNAが日本一を成就させるのならば横浜の地でしかなく、激闘の末、彼らが凱旋することを期待して待ちたい。