ワールドカップ本大会出場に向けて、着実に歩みを進めているサッカー日本代表。現在、アジア3次予選C組で首位に立っており、…
ワールドカップ本大会出場に向けて、着実に歩みを進めているサッカー日本代表。現在、アジア3次予選C組で首位に立っており、次に対戦するのはインドネシア代表だ。ここ数年で急速な進化を遂げ、「決して侮ってはならない相手になった」と警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリストの大住良之。11月15日にアウェイの地で戦う「ライバル」を徹底的に分析する。
■2位から最下位まで「勝ち点差2」の混戦
ワールドカップ2026を目指すアジア3次予選は、10月までに全10節のうち4節を消化。日本が入るC組では、日本が勝ち点10で首位、2位オーストラリアから3位サウジアラビア、4位バーレーンまでが勝ち点5、5位インドネシアと6位中国が勝ち点3となっている。
2位から最下位の6位まで勝ち点差がわずか2というのはC組だけで、他の2組はもっと大きな差がついている。A組ではイランとウズベキスタンの「2強」が明確になり、他チームは「4次予選」進出の3、4位争いの様相。そしてB組では韓国が抜け出し、ヨルダンとイラクが2位争いという形になっている。
C組だけが2位以下が「混戦」になった原因は、FIFAランキング130位(10月24日発表)、「最下位候補」と見られていたインドネシアが思いがけない奮闘を見せているからだ。
インドネシアは、初戦、アウェーでサウジアラビアと1-1で引き分け、2戦目にはホームにオーストラリアを迎えて0-0の引き分け。第3戦はアウェーでバーレーンと2-2で引き分けた。中国とアウェーで戦った第4戦こそ1-2で落としたが、試合内容では中国を圧倒しており(ボール支配率76%、パス数604対193、シュート数14対5など)、「弱小」チームの戦いではなかった。
そのインドネシアと唯一まだ戦っていないのが日本であり、最初の対戦は11月15日(金)にインドネシアのジャカルタで開催される。日本がここで勝ち点を落とす(負けあるいは引き分け)というようなことになれば、C組は首位を含めた大混戦となる。インドネシアは、まさに「C組の台風の目」なのである。
■インドネシアを「急成長させた」スター選手
インドネシアは現在、アジアで最も急成長しているチームである。「コロナ前」の2020年はじめには、FIFAランキングで173位と低迷していたが、わずか4年間で50近くの国を抜き、現在130位。今年はじめのアジアカップ(カタール)ではノックアウトステージに進出し、大きく注目を浴びた。さらに同じカタールで行われたU-23アジアカップ(兼オリンピック予選)では、準々決勝で2-2からPK戦11-10で韓国を倒し、韓国のオリンピック出場を9大会連続で途切れさせた。
2019年12月、「コロナ禍直前」に就任したのが韓国人の申台龍(シン・テヨン)監督。現役時代の大半を当時韓国最強チームだった城南一和天馬で過ごし、攻撃的MFとしてKリーグで優勝6回。その間にリーグのベスト11に9回、MVPにも2回選出されているトップスター選手だった。もちろん、韓国代表としても活躍したが、残念ながらワールドカップ出場記録はない。
2005年に引退して指導者となり、2017年から2018年にかけて韓国代表を率い、2018年ワールドカップ・ロシア大会では、ドイツに2-0で勝ったものの、グループ突破を逃した。そして1年半後、U-23代表監督と兼任する形でインドネシア代表監督に就任した。そして、ここからインドネシアの急成長が始まるのである。
■チームを大幅に強化した「ルーツ選手」探し
ただ、申台龍監督の手腕だけでは、このような急成長は可能にはならなかっただろう。背景には、サッカー好きとして知られてきたジョコ大統領(2期10年の任期を終えて今年10月20日に退任した)をはじめとする政府の大きなバックアップがあった。オランダを中心に欧州で活躍するインドネシア・ルーツの選手を探しだし、国籍を与えることで、ナショナルチームが大幅に強化されたからである。
インドネシア政府は2015年にサッカー協会(PSSI)の資格を停止。これが政府によるサッカー協会への干渉を排除する国際サッカー連盟(FIFA)規定に抵触し、FIFAはインドネシア協会に資格停止処分を下した。「政府の口出しをやめさせなければ、国際大会には出場できないぞ」ということで、協会というよりインドネシア政府に圧力をかける制裁だった。その結果、インドネシアは2018年のワールドカップ・ロシア大会のアジア予選から除外された。