■113球熱投の先発渡辺が9回2死一塁で逆転被弾 東京六大学野球秋季リーグは26日、立大が東大1回戦に3-2で先勝。1点ビハインドの9回2死一塁の場面で、柴田恭佑内野手(4年)が劇的な逆転サヨナラ2ランを放った。東大は2017年秋以来、7年…

■113球熱投の先発渡辺が9回2死一塁で逆転被弾

 東京六大学野球秋季リーグは26日、立大が東大1回戦に3-2で先勝。1点ビハインドの9回2死一塁の場面で、柴田恭佑内野手(4年)が劇的な逆転サヨナラ2ランを放った。東大は2017年秋以来、7年ぶりのシーズン3勝にあと1死と迫りながら、手中にしかけていた白星を掴み切れなかった。それでも27年ぶりの最下位脱出を、まだ諦めない。

 東大先発の渡辺向輝投手(3年)は、かつてプロ野球のロッテで名サブマリンとして鳴らした父・俊介氏(日本製鉄かずさマジック監督)を彷彿させる粘り強い投球で、8回まで4安打1失点。1-2とリードして迎えた9回も、2死走者なしまで立大を追い詰めていた。

 しかし、代打の山形球道外野手(3年)にファウルで粘られた末、四球を許して暗雲が垂れ込める。続く柴田への2球目、この日113球目の低めのシンカーをすくい上げられ、打球はそのまま右翼フェンスを越えた。その瞬間、思わずマウンド上に座り込んだ渡辺は「負けてしまった実感が、まだなくて……」と首をひねった。

マウンド上でうなだれる東大・渡辺【写真:加治屋友輝】

 大久保裕監督も試合後の会見では「野球は3アウトを取るまでわからないと痛感しました」とショックを受けた様子だった。隣に座った渡辺は「自分のピッチングが勝敗に直結するのだなと、改めて感じました」と現実を受け入れた。

 7回まで両チームともスコアボードに「0」を並べた投手戦は、終盤に目まぐるしく動いた。東大は8回1死三塁のピンチで、相手打者が放ったゴロを、前進守備を敷いていた三塁手の内田開智内野手(4年)がファンブルし(三ゴロ)、先制点を許してしまう。

 続く9回の攻撃は、あっさり2死となったが、3番の中山太陽外野手(3年)、4番・内田の連打で一、二塁とすると、続く大原海輝外野手(3年)がセンターオーバーの2点二塁打を放ち、土壇場の3連打で試合をひっくり返した。最終的に再逆転を許したとはいえ、こうした攻守の粘り強さは、近年の東大には見られなかったものだ。
 

9回表の3連打で逆転成功に湧く東大ベンチ【写真:加治屋友輝】

 実際、今季の東大はひと味違う。今月6日の慶大2回戦では、最速146キロ右腕の先発・鈴木太陽投手(4年)が6回1死までパーフェクト、7回1死までノーヒットの快投を演じ、結局3安打1失点完投勝利。13日の法大2回戦では、右アンダースローの渡辺が、9安打7四死球を許しながら9回2失点完投勝利を挙げた。持ち味の違う2人の先発投手が本領を発揮した試合では、相手と対等以上に戦えている。

 目標は、5位になった1997年秋(最下位は立大)以来の最下位脱出。今季も立大2、3回戦に連勝して勝ち点を取った上で、最終週に慶大が早大に0勝2敗で終われば、慶大を上回ることができる。仮に今季の目標達成がかなわなかったとしても、渡辺、逆転打を放った大原、昨秋のリーグ戦でベストナインに選出された酒井捷外野手らが残る来年は、さらに期待が膨らむ。

「改めて、東大さんは侮れない相手だと思いました」と実感を込めて語ったのは、逆転サヨナラ弾を放った立大・柴田だった。東大が強いシーズンの東京六大学野球は、実に面白い。

(宮脇 広久)