2024年シーズン全日本ラリー選手権第8戦「第51回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2024 supported by KYB」が、10月18日(金)~20日(日)にかけて、岐阜県高山市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN…

2024年シーズン全日本ラリー選手権第8戦「第51回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2024 supported by KYB」が、10月18日(金)~20日(日)にかけて、岐阜県高山市を拠点に開催された。トップカテゴリーのJN-1クラスはトヨタGRヤリス・ラリー2をドライブするヘイキ・コバライネン/北川紗衣がシーズン初勝利。2位にシュコダ・ファビアR5をドライブする新井大輝/松尾俊亮、3位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子が入った。

北海道を舞台とするグラベル2戦を経て、全日本ラリー選手権はシーズンのフィナーレ、第5戦モントレー以来となる舗装イベントのハイランドを迎えた。今年も岐阜県高山市の「位山交流広場」に置かれた「モンデウス飛騨位山サービスパーク」を起点に、バラエティに富んだターマックステージを走行する。10月半ばの高山は天候が不安定であり、ラリーウイークも雨の予報が出ていた。

今回、TOYOTA GAZOO Racing-WRJは、ラリー北海道の前に行われたテストや本戦でオイル漏れなど車両トラブルが発生したことや、ラリー本番でもJN-1クラスの眞貝知志、大竹直生がともにリタイアに終わったことを受けてハイランドの欠場を発表。また、トヨタGRヤリス・ラリー2でJN-1クラスに参戦するLUCK with ROOKIE Racingの勝田範彦もエントリーを行わなかった。

■レグ1

ラリー初日は「あたがす(9.54km)」、「牛牧上り(6.16km)」、「アルコピア-無数河(6.08km)」の3SSをサービスを挟んでリピートする6SS、43.56km。開催エリア周辺は朝から雨が降り始め、日中は時折強まることも。ステージには落ち葉も点在しており、注意が必要だ。

ラリー中の拠点となる「モンデウス飛騨位山」のサービスパークをスタートした後、高山市役所でセレモニアルスタートが実施された。8時すぎという朝早い時間から、多くの観客が集まった。高山市の田中明市長が「みんなが楽しみにしていました」とコメントを寄せた後、スタートフラッグを振ってクルーを送り出す。高山市の町並みの中を走るリエゾンルートでは、朝市が行われている時間帯ということもあり、多くの人々から歓声が注がれることになった。

小雨が落ちるなか行われたSS1、ベストを刻んだのは「ラリージャパンに向けて、ウエットのテストとして走行する」と語った新井大輝は、今回がGRヤリス・ラリー2でのターマック初ドライブとなったコバライネンに7.7秒、奴田原文雄/東駿吾(GRヤリス・ラリー2)に12.7秒、福永に13.7秒差をつけてみせた。

SS2も新井大輝が、ブレーキのフィーリングに不満を訴えるコバライネンに4.9秒差をつける連続ベスト。ウエットコンディションでの経験を活かした新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)が6.7秒差の3番手タイムを記録し、5番手から3番手にポジションを上げた。

雨脚が強まったSS3は、コバライネンが新井大輝を1.6秒上まわる一番時計。午前中のセクションを終えて、首位新井大輝と2番手コバライネンの差は11.0秒、25.4秒差の3番手に新井敏弘、31.6秒差の4番手に福永、34.6秒差の5番手に奴田原のオーダーとなった。

サービスを挟んだ午後のセクション、依然として雨は降り続いている。SS4は新井大輝、SS5はコバライネンが、いずれも僅差でベストを獲り合った。しかし迎えたSS6、新井大輝がフィニッシュまで1km地点で痛恨のスピン。リバースギヤに入れるなどコース復帰に手間取り、このステージだけでベストのコバライネンから15.5秒も遅れてしまう。

これでコバライネンがトップに浮上し、スタートから積み上げてきたリードを失った新井大輝は3.9秒差の2番手に順位を落とした。SS4で新井敏弘をかわした福永が33.2秒差の3番手。49.4秒差の4番手に新井敏弘、54.3秒差の5番手に奴田原文雄、1分16秒3差の6番手に鎌田卓麻/松本優一(スバル)がつけている。





予想外の首位で初日を終えたコバライネンは「まだ完璧に自信が持てていないけど、クルマは確実に良くなっている。ブレーキのセッティングを少し変えたら、効きも良くなった。ヒロキがスピンしたから自分がトップに立ったけど、明日、彼を打ち負かすのは簡単ではないと思う」と、慎重にコメント。対する新井大輝は「午後もステージごとにセットアップを変えながら走りました。低速コーナーに合わせると、中速・高速に合わなくなってしまって、SS6ではスピンした形です。それでもウエットタイヤに慣れていないなか、悪くない走りができた気がします」と、冷静に振り返った。

まだタイトルが確定していないJN-2クラスは、石川昌平/大倉瞳(トヨタGRヤリス)がフルポイントを獲得し、三枝聖弥(スバルWRX STI)が有効得点を加算できなかった場合は同点となり、最大得点のイベントで勝利をマークしている石川が逆転でチャンピオンを獲得する。ただ、三枝は8位以内、またはレグポイントを1点でも獲得すれば、石川が今戦でフルポイントを獲得した場合でも三枝のチャンピオンが決まるという状況だ。三枝は今大会、木村裕介とのコンビでラリーに臨む。

SS1、MORIZO Challenge Cup(MCC)に参戦する最上佳樹/前川富哉(GRヤリス)がスタートから200m地点でコースオフを喫して、レグ離脱。最初のセクションを終えて、SS1でベストタイムをマークした石川が、MCCの山田啓介/藤井俊樹に6.6秒差をつけてリードした。三枝は36.0秒差のクラス5番手と大きく出遅れてしまう。しかし、午後に入ると、SS4で山田が2本のタイヤをパンクし、大きくポジションダウン。これで小泉敏志/村山朋香(GRヤリス)が2番手に浮上。さらにクラス4番手につけていたMCCの貝原聖也/藤沢繁利(GRヤリス)もこのステージでスローパンクを喫してタイムをロス。これにより、三枝も3番手まで順位を上げた。石川は4回のベストタイムを刻み、2番手の小泉に25.6秒差をつけて初日首位。SS6で三枝をかわした泉陽介/石田一輝(三菱ランサーエボリューションⅩ)が3番手につけている。





前戦のラリー北海道に続きターマックでも好走を披露した石川は「今シーズンのターマックラリーではトップ争いができていなかったので、まずは首位争いができるタイムを出すことが目標でした。チャンピオン争いには残っていますが、フルポイントを獲るしかないので、周りを気にせずトップを目指そうと思います」と納得の表情。2番手につける小泉は「優勝を狙って、そのための準備をしてきました。クルマの調子がイマイチでしたが、トラブルが出なくて良かったです」と、振り返った。

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、この最終戦の特別規則書が発行され係数が確定した時点で、山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)のシリーズ2連覇が決まった。ラリーは曽根崇仁/竹原静香、長﨑雅志/大矢啓太のGR86勢とBRZの上原淳/漆戸あゆみ、ウエット路面で旧型スバルBRZの軽さを活かした鈴木尚/島津雅彦がベストタイムを獲り合う大混戦。SS2とSS5でベストを記録した鈴木が、上原に4.0秒差をつけての首位で初日を折り返した。11.6秒差の3番手に長﨑、SS5でスピンを喫した曽根も13.7秒差の4番手につけている。





トップの鈴木は「ウエットコンディションはパワーがないクルマに有利なので、今日の間にタイム差を稼ぎたいと考えていました。午後は思ったほどタイムが上げられませんでしたが、落ち葉を避けながら走ったら、なんとか首位をキープできましたね」と、満面の笑みで喜びを見せた。2番手の上原は「今日は泥がたくさん出ていて、すごく難しいコンディションでした。周りがあまり走れていない状況だったので、上位につけることができたのかもしれません」と、振り返っている。一方、タイトルを決めて今戦を迎えた山本は7番手に沈んでおり、「そこそこいいフィーリングで走れているのに理由が分かりません」と首を傾げた。

JN-4クラスも、タイトル決定がこの最終戦に持ち越された。ランキング3番手の内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)がフルポイントを獲得し、ランキングトップの高橋悟志/箕作裕子(スイフトスポーツ)が有効得点を加算できなかった場合は同点となり、前戦ラリー北海道を制して最大得点33点を持つ内藤が逆転チャンピオンとなる。高橋が有効得点を加算するためには優勝+レグ得点1点以上が必要となるが、有効得点を加算できなくても内藤がフルポイントを獲得できない場合は高橋がタイトルを手にする。

逆転王座のためには優勝に加えてレグ2単独リザルトでもトップが絶対条件となる内藤は、SS1でトップに立つと、SS3、SS4、SS6と4本のSSでベストタイムをマークし、タイトルを争う2番手の高橋に15.7秒のアドバンテージを築いた。3番手には鮫島大湖/船木佐知子(スイフトスポーツ)、4番手には筒井克彦/本橋貴司(スイフトスポーツ)が続く。





初日を首位で折り返した内藤は「ターマック用の車両はモントレーでクラッシュしたので、実は修理から戻ってきたばかりなんです。今日は調整しながら走っています。アドバンテージを得ましたが、明日はまたゼロからのスタートになるので、今夜対策をしっかり考えます」と、冷静にコメント。対する高橋は「必死に頑張っています。午前中からタイム差は詰めても追いつくことができませんでしたが、トライしたことが正しかったことは分かりました。方向性は合っていると思います」と、こちらも最終日の逆転を狙い対策を練る構えを崩さない。

JN-5クラスは、ラリー北海道が終了した時点で松倉拓郎/山田真記子(マツダ・デミオ)のタイトルが確定。「大倉(聡)選手や若手を含めて、クラス全体で切磋琢磨しながらも上位フィニッシュできたことが、タイトルにつながったと考えています」と、松倉はラリー前に喜びを語った。その松倉は、今季もターマックはトヨタ・ヤリスと車両を使い分けている。この日は、荒れたコンディションで4本のベストタイムを並べ、大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)に18.7秒の首位。3番手に吉原將大/槻島もも(トヨタ・ヤリス)、4番手に冨本諒/里中謙太(トヨタ・ヤリス)が続く。





タイトルを決めて最終戦に挑んだ松倉は「午後は雨との戦いになって、状況を見ながら走りました。ステージによって大倉選手に負けてしまうこともありましたが、SS6は序盤の砂利のセクションを気持ちよく走れて、いいタイムをマークできましたね」と好調をアピール。対する大倉は「タイヤの違いがタイム差に出ました。僕らは雨量が多くなると、タイヤが細いのでキツい。頑張って走ったんですけど、かなり松倉選手にやられてしまいました」と、悔しさをのぞかせた。

JN-6クラスは、第6戦カムイの段階でタイトルを決めている天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、この日も6SSすべてでベストタイムを並べる強さを披露。30.5秒差の2番手に清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)、3番手には、若手の松原周勢/HARU(トヨタ・アクア)が大健闘を見せている。序盤3番手を走行していた海老原孝敬/原田晃一(ホンダ・フィット)はブレーキトラブルに見舞われて、6番手まで順位を下げている。





今回も2番手以下を寄せ付けないスピードを見せつけた天野は「今日は雨も降っているし、泥も出ていて落ち葉もあって本当によく滑りました。それもあって、あまり無理はせず、安全に走りました」と、落ち着いたコメント。清水は「ラリー北海道のような高速グラベル、今日のような泥が混じった厳しいターマック、こういった路面を克服しないと、日本のトップにはなれないと痛感しました」と、自身の課題を語っている。


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■レグ2

ラリー2日目は「大山線(5.35km)」、「駄吉上り(5.36km)」、「無数河 – アルコピア(6.08km)」の3ステージをサービスを挟んでリピートする6SS、33.58km。前日まで降り続いた雨は上がり、天候は曇り。ただ、ステージによってドライの路面とウエットが残る路面が入り混じり、非常にトリッキーなコンディションとなった。

首位のヘイキ・コバライネン/北川紗衣(トヨタGRヤリス・ラリー2)と、新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)の差はわずか3.9秒。コバライネンは「まだ、完全に自信を持ってドライブできていないし、ヒロキに勝つことは簡単じゃない」と気を引き締めた。

オープニングのSS7、コバライネンが新井大輝に1.0秒差をつけるベストタイム。4.4秒差の3番手タイムに福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)、5.6秒差の4番手タイムに奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス・ラリー2)、8.7秒差の6番手タイムに新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)のオーダーで続く。3番手の福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)を捉えたい新井敏弘だが、5番手の奴田原が1.8秒差に迫ってきた。

SS8は新井大輝がコバライネンに3.7秒差のベストを刻み、その差を1.2秒に縮める。ここでは4番手タイムの奴田原が、ほぼウエットの路面にドライタイヤがまったく合わなかった新井敏弘をパスし4番手にポジションを上げている。続くSS9も新井大輝がコバライネンに4.3秒差をつける連続ベストタイムをたたき出し、3.1秒差をつけて首位のポジションを獲り返した。

サービスを挟んだ午後のセクション。SS10はコバライネンが、新井大輝に1.8秒差のベスト。その差は1.3秒差に縮まった。続くSS11もコバライネンが、スローパンクチャーした新井大輝を7.6秒も上まわる連続ベストをたたき出し、6.3秒差をつけて再びラリーリーダーの座に立った。





最終のSS12、新井大輝はスタートから1km地点でターボパイプのトラブルにより、大幅にペースダウン。このステージもベストタイムでまとめたコバライネンが、上行大動脈瘤の開胸手術から復帰後、そしてトヨタGRヤリス・ラリー2での初勝利をチームに持ち帰った。終盤で大きく遅れた新井大輝だったが、コバライネンから33.2秒差の2位でフィニッシュを果たした。

コンスタントに3番手タイムを並べた福永が、1分06秒7差の3位表彰台。今回がGRヤリス・ラリー2で走る初の本格的なウエットターマックコンディションとなった奴田原は、1分26秒9差の4位。1分56秒8差の5位は、最終日は路面とタイヤのマッチングに苦しんだ新井敏弘。自身のペースを守った鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)は、2分25秒4差の6位で走り切った。





手術からの復帰3戦目での勝利にコバライネンは「今年起こったすべての出来事の後、予定どおりにラリーに復帰して、そしてここで優勝できた。本当にうれしいよ。最後にヒロキがトラブルに見舞われたのは残念だったけど、僕らは最後までプッシュし続けた。チームにとっても最高の結果になったね」と、喜びを噛み締めた。

今回のハイランドマスターを、11月のWRCラリージャパンへの準備と位置づけていた新井大輝は「SS11でのスローパンクチャーに、SS12はターボパイプ。最後は散々でしたね(苦笑)。それでも今回のハイランドでセットアップを変更すると、クルマがどう動くかが分かりました」と、収穫を語っている。

JN-2クラスは、25.6秒差を追う2番手の小泉敏志/村山朋香(トヨタGRヤリス)が、この日行われたSS8以外の全ステージでベストタイムを刻み、首位の石川昌平/大倉瞳(GRヤリス)との差を一気に縮めてみせる。それでも、石川が3.5秒差で逃げ切り、ラリー北海道に続くシーズン2勝目を手にした。三枝聖弥/木村裕介(スバルWRX STI)は、SS7で泉陽介/石田一輝(三菱ランサーエボリューションⅩ)をパスし、3位。この結果、三枝は自身初となる全日本ラリー選手権タイトルを手にしている。5位の貝原聖也/藤沢繁利(トヨタGRヤリス)は、最終戦にして待望のMORIZO Challenge Cup(MCC)初勝利を飾った。





シーズン終盤、尻上がりに調子を上げた石川はシーズン2勝目に「今日は小泉選手が速かったのと、僕自身がセッティングを外したりドライコンディションになってタイムが伸ばせなかったりと、苦しい展開になりました。それでもなんとか勝てて良かったです」と、安堵の表情をみせた。初優勝まであと一歩届かず僅差の2位に終わった小泉は「苦手とするウエットが足を引っ張った感じがしています。クルマの調子も良く、アップデートできた点は良かったのですが、ウエットや湿った路面を攻め切れないという課題が見えました。この点を底上げしていく必要があると痛感しています」と、悔しさを見せた。

JN-3クラスは、初日首位の鈴木尚/島津雅彦(スバルBRZ)を、ベテランの上原淳/漆戸あゆみ(スバルBRZ)と曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)が追う展開。初日3番手につけていた長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)は、SS8でスタートから2kmの左コーナーでアウト側のガードレールにフロントをヒット。サスペンションを破損し、7分遅れでステージは走り切ったがラリー続行を断念した。SS11で鈴木を捉えた上原が首位に浮上、曽根も6.3秒差の2番手に順位を上げた。山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)がベストタイムをマークした最終のSS12は、上原と曽根が同タイムの3番手。上原が逃げ切り、2023年の嬬恋以来の勝利を決めた。2位に曽根、3位に鈴木、4位にが入った。





久々の全日本勝利をターマックで決めた上原は「今回は手強いライバルたちがどんどん脱落するなか、無傷で帰ってこられました。自分でもびっくりです。こうやってライバルと戦って走り勝ったのは、本当に久しぶりです」と、笑顔を見せた。今シーズンで全日本のフル参戦にひと区切りをつけることを表明していた曽根は「色々ありましたが、展開的にもタイヤ選択も含めて楽しいラリーでした。何よりもフィニッシュまでちゃんと帰ってこれて良かったです」と、納得の表情を見せた。

JN-4クラスは、初日トップの内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS8とSS11でベストタイムをマークし、高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)との差を拡大。最終SS12では、高橋が内藤に3.6秒差をつけるベストタイムをたたき出したが及ばず。最終的に27.5秒差にリードを広げた内藤がシーズン4勝目を決め、レグポイントも含めてフルポイントを獲得した。この結果、内藤と高橋が同ポイントで並んだが、選手権規定により、最大得点33点を持つ内藤が逆転でシリーズ2連覇を達成した。





フルポイント獲得という厳しい条件をクリアし、2連覇を達成した内藤は「奇跡の逆転チャンピオンです。最終ステージはとにかくミスをしないで、同じペースを守って走れば、まくられることはないだろうと考えていました。振り返ると本当に面白い1年でした。あまり意識していないつもりでしたが、タイトル防衛の焦りがあった気がします。2年連続でチャンピオンなったことは、自分としても大きな自信になります」と、喜びを語った。内藤と同点で並びながらタイトルにわずかに届かなかった高橋は「最後まで頑張りましたし、やれることはやりました。でも、最後は何かが噛み合わなかったんですね」と、清々しい表情を見せている。

JN-5クラスは、前日までのウエットコンディションから一転、ウエットとドライが混在するコンディションでタイヤ選択が決まった大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)が、SS7からSS11まで連続ベストをたたき出し、首位松倉拓郎/山田真記子(マツダ・デミオ)との差を0.2秒差にまで縮めて最終SS12を迎える。すると、大倉はここでも松倉を4.9秒引き離すベストを刻む。終わってみれば、この日行われたすべてのステージでベストを並べ、鮮やかな逆転優勝。久万高原、丹後に続くシーズン3勝目を飾った。2位に松倉、3位には吉原將大/槻島もも(トヨタ・ヤリス)が入った。





大逆転勝利を決めた大倉は「レグ2は全部獲れましたね。ダンロップタイヤが本当に良かったです。今日はタイヤに助けられました。マシンに関しても、チームが毎戦ブラッシュアップしてくれて、ここまで仕上げてくれました。最終戦にそれがハマり、総合力で勝ち切ることができました」と、勝因を語った。前日までのアドバンテージを守り切れなかった松倉は「今日はタイヤで決まってしまいましたね。大倉選手に『あっぱれ』と言いたくなるようなタイムを出されてしまいました」と、コメント。3位に入った吉原は「どこかで勝てるかな、と思ったシーズンだったのですが、甘くないですね。最後は追いつきたかったです。今回は、前戦でマシンをクラッシュし、急遽貸していただいたマシンで参戦できたので、とにかく感謝の気持ちで走りました」と、新チームを立ち上げて臨んだ今シーズンを振り返った。

JN-6クラスは、初日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、この日も全SSでベストタイムを並べる、圧巻の展開。初日のSS1からすべてのステージで一番時計を並べ、前回のラリー北海道に続き、完全勝利を決めた。2位に清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)、3位に松原周勢/HARU(トヨタ・アクア)と、前日と変わらない順位でのフィニッシュとなった。





JN-6クラスとしては最後のラリーとなるイベントを、完全勝利で締め括った天野は「全部のSSでベストが獲れたのでそれが一番良かったです。清水さんがかなり速くなってきて僅差のタイムが多かったのですが、全部のSSで勝てたので、それなりの差を築けました」と、余裕のコメント。シーズンを通して天野をターゲットにしてきた清水は「天野選手は、まだまだ余裕がある感じでしたね。今回はウエットや泥など、色々な路面コンディションを経験できました。路面とタイヤの使い方など、確実に自分のモノにできたと思います」と、成果を語っている。うれしい全日本初表彰台となった松原は、開幕戦の三河湾に続き、2度目の全日本挑戦。「無事にフィニッシュまで帰ってこられて、本当に良かったです。最後のループは終始安定していて、怖いものはないぞ、と言う走りができたかなと思います。三河湾の後、中部・近畿戦で戦ってきて、すごく成長を感じられたラリーになりました」と、喜びを語っている。

全日本ラリー選手権第8戦M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ最終結果
1 JN-1 ヘイキ・コバライネン/北川 紗衣(AICELLO速心DLヤリスRally2) 57:24.6
2 JN-1 新井大輝/松尾俊亮(Ahead Skoda Fabia R5) +33.2
3 JN-1 福永修/齊田美早子(OSAMU焼肉ふじ☆CTE555ファビア) +1:06.7
4 JN-1 奴田原文雄/東駿吾(ADVAN KTMS GRヤリスラリー2) +1:26.9
5 JN-1 新井敏弘/井上草汰(SUBARU WRX S4) +1:56.8
6 JN-1 鎌田卓麻/松本優一(WinmaX DL シムス WRXSTI) +2:25.4
7 JN-1 柳澤宏至/竹下紀子(MATEX-AQTEC DL GRヤリス) +3:14.4
8 JN-2 石川昌平/大倉瞳(ARTAオートバックスGRヤリス) +4:07.2
9 JN-2 小泉敏志/村山朋香(若甦DLドリームドライブGRヤリス) +4:10.7
10 JN-4 内藤学武/大高徹也(YH TEIN アーリット スイフト) +5:04.9
11 JN-3 上原淳/漆戸あゆみ(埼玉スバル・DL・KYB・シャフトBRZ) +5:19.3
29 JN-5 大倉聡/豊田耕司(AISIN GR Yaris CVT) +7:30.0
41 JN-6 天野智之/井上裕紀子(TRT・DLアクアGR SPORT) +10:58.2