GI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)で大きな注目と期待を集めるリバティアイランド(牝4歳)にとって、ここはある意味、ひとつの試金石となる一戦だ。 昨年の牝馬三冠レースすべてを強い競馬で制したリバティアイランドに対して、「今さ…

 GI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)で大きな注目と期待を集めるリバティアイランド(牝4歳)にとって、ここはある意味、ひとつの試金石となる一戦だ。

 昨年の牝馬三冠レースすべてを強い競馬で制したリバティアイランドに対して、「今さら試金石もないだろう」というのが大方の見方に違いない。だが一方で、「強いと言っても、同じ年の牝馬相手に勝っているだけ」という声があるのも確かだ。

 現に、2歳暮れのGI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)から牝馬三冠達成までのGI4連勝は、すべて同年齢の牝馬が相手。その後は、年長の牡馬も相手となるGIジャパンC(東京・芝2400m)、海外GIのドバイシーマクラシック(3月30日/メイダン・芝2410m)に出走したが、2着、3着と勝てていない。

 つまり、「同じ年の牝馬相手にだけ......」という評価が正しいかはともかく、客観的な事実として、それは間違いではないのだ。

 もちろん並の名牝レベルとしてなら、リバティアイランドはたとえこのまま勝てなくても、三冠牝馬として堂々と歴史に名を残すことになる。しかしもうひとつ上の次元、レジェンド級の名牝としてその名を刻むため、そして「同じ年の牝馬相手にだけ」といった評価をするアンチの声を黙らせるためにも、やはりここは負けられない。

 それゆえ、"試金石"の一戦となる。


リバティアイランドは天皇賞・秋で、その強さをあらためて示すことができるか

 photo by Eiichi Yamane/AFLO

 レジェンド級の名牝と言えば、アーモンドアイ。同馬は、三冠牝馬になったあと、ジャパンCも、海外GIのドバイターフ(メイダン・芝1800m)も快勝した。片や、リバティアイランドはここまで、それとほぼ同じローテをたどりながら、アーモンドアイの成績には及んでいない。

 だが、レース内容では決してヒケを取ってない――筆者は、それくらい強い馬であると認識している。同様の認識を持つファンや関係者も少なくないだろう。関西の競馬専門紙記者が語る。

「確かに昨年のジャパンCは、例年であれば勝っていたレースでしたね。ただ運が悪いことに、そこには1頭、イクイノックスという怪物級の存在がいました」

 ジャパンCにおけるイクイノックスとリバティアイランドとの着差は4馬身。最後は追っても、追っても、その差はつまらなかった。まさに完敗である。

 とはいえ、リバティアイランドは"怪物"以外の歴戦の古馬にはすべて先着。しかも、3~5着馬は皆、GI馬だった。前年の牝馬二冠馬スターズオンアース、前年のダービー馬ドウデュース、GI3勝のタイトルホルダーである。

 これだけの面々を相手に、当時3歳牝馬のリバティアイランドはきっちり1馬身以上の差をつけて先着している。先の専門紙記者が言うとおり、本当に「運が悪かった」のだ。

 ドバイで負けたのも、右前脚球節部の軽度の炎症によるもの、と敗因ははっきりしている。それでも、その時に出せる力を振り絞って、懸命に追い込んで3着に入った。先の専門紙記者が言う。

「ドバイでのレースは、万全なら勝っていた一戦。あの敗戦で評価を落とすことはありません。それも含めて、ここ2戦は少し運がなかった。そもそもの能力は、歴代の名牝たちと比べてもそん色ないレベルにあるのは間違いないと思います」

 ドバイ遠征のあと、今春の国内のレースに出走するプランもあったという。しかし、軽度とはいえ、故障を発症したことで白紙になった。

 代わって浮上したのが、春は全休して天皇賞・秋を復帰戦にする、というプランだった。そうして、この中間の調整過程は順調そのもの。春に負った傷はもうすっかり癒えたそうだ。

 放牧先から帰厩した当時の馬体重がおおよそ500kg。これまでのレースに出走したリバティアイランドの馬体重は460kg台~470kg台。成長を加味しても、稽古と輸送でそれに近い数字まで絞っていくことになるだろうが、それも予定どおりに進んでいるという。

 その復帰戦への順調な過程を裏づけるように、1週前の追い切りでは6ハロン80秒2、ラスト1ハロン10秒8という好時計をマーク。迫力十分の動きを披露した。

「この馬の場合、状態面で特によくなる必要はなく、『普通であればいい』と言われています。現状、その"普通"な状態に十分にあると思います」(専門紙記者)

 もともと休み明けを苦にする馬ではないし、今や直行ローテや休み明けで結果を出すのが、力のある馬のトレンド。ゆえに、ドバイのレースから間隔が空いたことを気にする必要はない。

 相手関係も、昨年末のGI有馬記念(中山・芝2500m)を勝ってGI3勝目を挙げたドウデュース(牡5歳)、GI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)の覇者ベラジオオペラ(牡4歳)、重賞連勝中で名手クリストフ・ルメール騎手が手綱をとるレーベンスティール(牡4歳)など強力だが、今年はイクイノックスほどの"怪物級"の存在はいない。

 先述の専門紙記者が、「競走馬が最も充実する、と言われる時期」という4歳秋を迎えたリバティアイランド。本来の絶対能力に加え、その成長まで見込めれば、ここはあっさり勝ってもおかしくない。

 振り返れば、アーモンドアイは4歳秋のこのレースを後続に3馬身差をつける圧勝劇を演じている。リバティアイランドも、そんなアーモンドアイに続くレジェンド級の名牝と言えるのか。天皇賞・秋は、それを示す舞台となる。