サングラスの奥にある目には闘志がたぎっているように見えた。(C)Lemino/SECOND CAREER「ちょっといいですか」 10月24日に行われた記者会見の終盤に差し掛かり、終わりを迎えようとしていた。突然、井上尚弥(大橋)は「ではここ…

 

サングラスの奥にある目には闘志がたぎっているように見えた。(C)Lemino/SECOND CAREER

 

「ちょっといいですか」

 10月24日に行われた記者会見の終盤に差し掛かり、終わりを迎えようとしていた。突然、井上尚弥(大橋)は「ではここで……」と会を締めようとした司会を遮った。

 ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者として、約2か月後にWBO&IBF世界同級1位のサム・グッドマン(豪州)を迎え撃つ井上は、オンラインで出席した挑戦者に鋭い言葉を向けた。

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「グッドマンと繋がっているので一言、言いたい。ドヘニー戦が『冴えない』という言葉。ドヘニーが塩試合をしたから冴えなくなった。だから、その意気込みで日本に来てもらいたい」

 これまで試合前の井上は、相手を煽ることもなく、比較的冷静に振舞ってきた。だからこそ、先に相手を“けん制”するのは異例。小さくない驚きでもあった。

 もっとも、キッカケは挑戦者にある。去る9月3日に行われた元IBF世界同級王者のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)戦で井上は7回TKO勝ちを収めたのだが、試合内容にグッドマンは異論を展開。自身が所属する豪プロモーション会社『No Limit』のYouTubeチャンネルで「イノウエが一方的だが、冴えない。物足りない。ちょっと変な終わり方だったな」と語ったのだ。

 挑発とも取れる言葉を幾度となく口にしたグッドマン。この日の会見でも「自信がないと、この試合は受けない。だからYouTubeでのコメントは本心だ」と語った。ただ、そんな挑戦者のKO率は42%。いざ、モンスターと対峙するとなれば、守備に徹する可能性がある。

 だから“けん制”した。ドヘニー戦後にも「自分としては理想の終わり方じゃない」と消化不良を口にしていた井上。彼の言動からは守戦ではなく打ち合う相手とのヒリヒリとした戦い、あるいはド派手なKO劇を切望しているように見えた。それはある意味で“絶対王者”となった男の矜持のようにも見える。

 画面越しにグッドマンと対峙した会見後の取材でも井上は「塩試合は嫌じゃないですけどね。どうせやるなら熱い試合をしたいので。せっかくオンラインで繋がっているので言いました」と強調。そして語気を強めて自身の想いを語った。

「こっちは長引かせたくない思いで試合をしている。それに対して『冴えない』という感想を持って、グッドマンが同じ試合を選択するなら『冴えなくなるよ』ということですね。自分の性格的に塩試合で勝てればいいとは思っていない。倒しに行くし、山場をつくる。それに応戦しなければ、一方的な試合になる」

 もちろん相手を侮っているわけではない。いつも以上にピリついた雰囲気を醸し出したモンスターは、こう続けている。

「2団体でランキング1位という実力のある選手が倒されないボクシングに徹したら倒すのは難しい。その中で自分は勝利を手にするスタイルは変わらない。相手がグッドマンだからパワーじゃなく、スピード重視でいく。その選択肢が適している」

 相手から「物足りない」と指摘され、モチベーションは徐々に高まっている。

 早々と試合に向けたスイッチが入った感がある井上は、果たしてクリスマスイブの夜をいかに彩るか。対峙するグッドマンがいかなる戦略を取るかも含めて、今回の防衛戦への興味は尽きない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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