若手主体でアジアラグビーチャンピオンシップに臨んでいる日本代表にあって、最年長となるのは29歳の谷田部洸太郎だ。 日本最高峰トップリーグ(TL)で3連覇中のパナソニックに所属する身長190センチ、体重107キロのLO。5月4日に東京・東芝…

 若手主体でアジアラグビーチャンピオンシップに臨んでいる日本代表にあって、最年長となるのは29歳の谷田部洸太郎だ。

 日本最高峰トップリーグ(TL)で3連覇中のパナソニックに所属する身長190センチ、体重107キロのLO。5月4日に東京・東芝グラウンドでの練習を終えた頃、4月24日に集合したばかりのチームを「だんだんまとまってきた」と見る。

「皆とコミュニケーションを取っているので、楽しくやっています。氷水をかけられたりもしています。そういうことで、いいんだと思います!」

 4月30日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でおこなわれた大会初戦で初キャップ(国際間の真剣勝負への出場の証)を獲得する。「目標としていたところ」。韓国代表に85-0で勝利し、5月7日の香港代表戦(香港フットボールクラブ)で2試合連続出場と連勝を目指す。

 6月には、海外でプレーする選手などを含めて新たな日本代表が結成される。しかし谷田部は、「まずは目の前のことに…」と強調する。

「そこ(6月)を目指すよりは、まず目の前の香港代表戦を見据えるってところです」

 中竹竜二ヘッドコーチ(HC)代行が選手の自主的な対話を重んじるなか、遠藤哲FWコーチと常に連携を図る。遠藤FWコーチのち密かつ効率的な指導に、「いつも自分のことも観てくれていて、細かいことを話してくれる」と感銘を受ける。

 空中戦のラインアウト、大男が組み合うスクラムといったセットプレーでは、谷田部らLOの献身が求められる。「ラインアウトも、スクラムも、このチームの武器にしていきたい」。ひたすらクオリティーを求める。

 2010年には7人制日本代表に選ばれるなど、かねてサイズとスピードが評価されていた。しかし堅守を標榜するパナソニックにあって、タックルを課題としていた。国士舘大を経て入部後、5年間、公式戦出場はなかった。

 もっとも2014年度、ロビー・ディーンズ監督らの指導のもと大ブレイク。シーズン終了後には、リーグ戦でのベストタックラー賞(タックル成功率の最も高い選手に与えられる)に輝いた。翌2015年度も「もっと自分からタックルへ行けるように」と、鋭いタックルを決めた後の起き上がりや、守備ライン上でのポジショニングにこだわってきた。

「苦手だったディフェンスが持ち味になってきた。見てもらいたいのは、泥臭い、小さいプレーです。あとは…気持ちのあるタックルをしたいです」

 エディー・ジョーンズ前HCがトップに立ったここ4年間、日本代表のLOにはベテランが名を連ねてきた。
 神戸製鋼の伊藤鐘史が31歳で初キャップを取得して34歳でワールドカップ(W杯)イングランド大会に出場した。
 同大会で獅子奮迅の活躍を示したトンプソン ルークも、今年で35歳となった。そのトンプソンとともにW杯に3大会連続で参加した大野均は、38歳の誕生日を前にサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに初参戦する日本のチーム)の一員として身体を張っている。

 谷田部も、大学生選手も多い現代表の一員としてこう発す。

「ラグビー人生、できるところまでやりたい。結果的に気付いたら、あぁ、38歳だった、となるように。このチームの若い子が今後の日本ラグビーを支えているなかで、自分自身もチャレンジし続けていたい」

 29歳で初代表。決して老け込むつもりはない。(文:向 風見也)